2019年度アメリカ雇用法の動向について

前回は「2019年年アメリカ主要州での最低賃金の動向について」でしたが、今回は2019年度アメリカ雇用法の動向について、Pacific Dreams, Inc.の酒井氏にお話を伺いしました。アメリカでは新しい法令の制定、改定等が頻繁に行われますので、経営や人事に携わっている方は、常にアメリカの連邦と州の両方の法律の最新情報を入手されることをおすすめいたします。  

 

 

 

アメリカの法律、特に雇用法(Employment Law)は年が変わりますと、いくつかの州では新しい州の法律が施行となります。また、既存の法律が修正されたり、新しい条項が追加になったりすることもあります。その意味では前回の記事で取り上げました州の最低賃金(Minimum Wage)とほぼ同じことが州の雇用法についてもいえるかと存じます。  

 

アメリカには皆様ご存知のように50州プラスワシントンD.C. があり、州の法律は極端に言えば50州すべてで異なっています。ですので、今回の記事で50州すべての法律の施行や変更をカバーすることは現実的にはできません。そこで今回はいくつかの州で共通して観察することのできる雇用法の特徴的な動向について取り上げてみることにしたいと思います。それによって、アメリカ全般における雇用法の今後のトレンドなどがある程度見えてくるのではないかと察します。  

 

州別の雇用法の中で、主に3つの顕著な傾向が観察されますので、それらに基づいた視点を皆様にシェアさせていただきます。その3つの顕著な傾向とは、1)均等賃金支払い(Equal Pay)に関する法律 2)セクハラ防止トレーニングの義務化 3)有給家族医療休暇法(Paid Family and Medical Act)の制度化にあるのではないかと考えます。ではそれぞれのポイントについて、以下、簡潔にご説明をしてみます。  

 

まず1)の均等賃金支払いですが、ここでいう均等とは、主に男女間の性別に基づく賃金の格差是正のことを意味しています。アメリカの給与調査会社におけるデータ上でも白人男性の賃金を100%とすると、白人女性のもらっている賃金は78%、さらに黒人女性は68%、ヒスパニック系女性は55%という格差があることが統計上わかっています。日本でも同一労働同一賃金が国の働き方改革法の中で取り入れられることが決まっていますが、日本の同一賃金は正規社員と非正規社員との間での賃金格差の是正にあるのに対して、アメリカの均等賃金支払い法は、もっぱら性別における男女の賃金格差の是正になります。本法は昨年カリフォルニア州とニュージャージー州、そして今年オレゴン州で施行になっています。  

 

次に2)のセクハラ防止トレーニングの義務化ですが、昨年10月にニューヨーク州で本法が施行になりました。ニューヨークの法律では、ニューヨーク州内にあるすべての企業は全従業員に対して年に1回、毎年セクハラ防止トレーニングを実施しなければならないというもので、企業側に対して非常に厳しい要求を突きつけています。そして本年からカリフォルニア州で新たな法律が追加され、昨年までは従業員数50名の企業にスーパーバイザー以上の管理者にしか課せられていなかったセクハラ防止トレーニングを従業員数5名以上の企業で働く全従業員(非正規従業員やパートも含む)に提供するという新しい法律が施行になりました。カリフォルニア州では2年に1回トレーニングを提供する義務があります。もうひとつ、デラウェア州がやはり今年から従業員数50名以上の企業にセクハラトレーニングを2年に1回提供することが法制化されました。  

 

最後に3)有給家族医療休暇法ですが、カリフォルニア州、コネチカット州、ロードアイランド州に続いて昨年ニューヨーク州で施行になりましたが、今年からワシントン州とワシントンD.C.、さらにマサチューセッツ州で本法の部分的な施行がスタートすることにななりました。他の先進諸国では国の法律で必ず完備されている有給家族医療休暇制度がアメリカにはいまだなく、家族あるいは妊娠や病気・怪我の治療のために従業員が取得する休暇に関しては、基本的に無給休暇となっています。それを州単位によって一部有給休暇としての取り扱いにする法制度で、そのために従業員のペイロールからの源泉徴収によって一種の保険料としての原資を州当局が徴収して積み立てていく制度を州が正式に運営する法律となります。  

 

以上がそれぞれトレンドとして見られる州としての法制度の動きをご紹介して見た次第ですが、現在はまだ一握りの先進的な一部の州の動きに限定されてはおりますが、この動きは早かれ遅かれ、全米にある州に拡散し、浸透していくことが予想されます。そしてある時点になったら、連邦としての法制度が打ち出されることにもつながることでしょう。その意味でとりわけ多くの大都市と多様な人口構成を抱え、巨大企業の本社があるニューヨークやカリフォルニアの州が打ち出す雇用法は間違いなく、今後のアメリカの雇用の動向やトレンドを占っていく上で、欠かすことの出来ない指標を示唆してくれるものだと申し上げられます。  

 

【執筆】

Ken Sakai

President & CEO

Pacific Dreams, Inc.

kenfsakai@pacificdreams.org

www.pacificdreams.org  

 


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