【アメリカの人事部】リモート、ハイブリッドでの新人教育
リモート、ハイブリッドでの新人教育
先月号では、社員の離職、入れ替わりが速くなっている今年の環境で、どのように社員を引き留めるか、について書いてみました。
今月はどのようにリモート、あるいはハイブリッドワークの環境で新人を育てていくか、という話題について書いてみたいと思います。
この記事を書くにあたって、3つの会社にヒアリングしてみました。法律事務所、IT会社、そして会計会社です。製造業の会社でも、リモートが定着しそうなコーポレート部門に対して適応できる部分があると思います。リモートで新人研修のすべてを実施するのは無理、ということが業界の認識になっている中、それを補うトレーニング方法として検討してみてください。
１．画面共有で新人教育が対面よりも改善した
この例は、ヒアリングした3つの会社全てで能率向上が伝えられた例でした。この方法は、会社のシステムの利用方法を教えることから、実際に問題になっている文書(契約書、提案書など)の画面を共有して、上司、あるいはトレーナーと新人が問題を議論し、その企業の核心となる業務を速い速度で教育していくことが可能です。あるいはスキル獲得であれば、上司が画面上で例を見せ、新人にその場でやらせる、ということがリアルタイムでできます。以前は一つのPCを使って、見づらい、操作しにくい、を乗り越えて教育していましたが、画面共有をうまく切り替えたりすることで、実際に新人が操作、業務をしているところも見えるので、新人の理解の速度が上がり、教育する方も指示、評価もしやすくなったということです。もちろん、上司、新人とも画面上での操作について熟知していることが必須ですが、この教育方法については、もう元には戻れないところまで定着しているということです。
２．Eラーニングの多用
社外のEラーニングコースを使ってコンプライアンス関連の教育をすることは、意識の高い会社にとっては必須事項になってきています。セクシャルハラスメントコースのように州で義務付けられているコースのほか、個人情報保護法、独禁法、腐敗法、人事法律、デジタルデバイスの取り扱い、各種アウエアネスコースなど、その企業の社員として外してほしくない内容について、積極的に外部リソースを使っています。特に、法律の変化など業務に影響する知識、ノウハウを、業界団体がまとめて配信している業界が多いことから、そのような業界リソースと契約しておくと、コンプライアンス関連も一緒に受講できることが多いようです。
同時に、各企業が社内で蓄積したノウハウ、スキルなど、以前からパワーポイントなどにまとめられていた教材を、音声で説明を入れて編集しなおした企業がありました。去年、コロナで業務が変化しつつあったときに、人事部などが将来を考えて内部リソースの刷新に動いたのです。それをシェアポイントなどの共有ファイルに掲載し、誰もが閲覧できるように教育制度を整えた例です。新人が所属する部によって受講する研修コースが分かれています。出社して、そのスキルを持っている人に会って話をしなければナレッジトランスファーができない状態を改善しています。また、社内がフラットになり、新人もメール一本で社内の専門家に質問できるようになったのもリモートの恩恵です。
３．ビデオコンファレンスでのチャットの多用
皆さんもたくさんのウェビナーに参加されていると思いますが、チャット機能を使うことで、本来の会議の内容をもっと深堀りすることが可能です。特に新人を参加させている場合、新人に質問があった場合など、その上司や同僚にチャットで確かめさせてから発言する、という段階を作っている会社がありました。日本企業らしいですが、いきなり発言させて参加者を驚かせるのではなく、新人の知識レベルも確認できるし、新人にとっても安全な会議への参加のツールになっているようです。
４．オンラインゲームの利用
リモートワークを強いられて一番つらいのは、社内で同僚や上司に実際に会えないことです。やはり実際に会うことで、アイデアやインスピレーションがわき、一体感も出て意識が高揚します。それをリモートでも作ろうと、社内でオンラインゲームのチームを作った会社がありました。ゲームの選択はそのチームの自由。戦争ものから、クリエイティブもの、スポーツ、アバターを使ったゲームなど、一緒に目的を持ってゲームをすることでお互いをより知り合うことができ、そして興奮しながら一体感を醸成することができます。特に新人は若い世代に属していますから、ゲームは得意だし、「ススんでる会社」という印象も残せます。新人を含め、社員がどの様にリモートでもお互いを知り合うかは大きな課題なので、積極的にゲームチームに勧誘してチームワークをつくる流れを作りました。上の世代の上司が時々顔を出して、ゲーム上で失敗するのもご愛嬌です。年に1回、社内のＥスポーツ大会を開催しよう、という新たな企画も生まれているそうです。
このような形で、リモートになってもいろいろな面白いアイデアを利用することで、今までの新人教育を超える部分も出てきました。出勤体系は、ハイブリッドが一般的になるというのが今後の予想なので、上に挙げたような、みんなが日常触れているテクノロジーを仕事にも持ち込むことで、新しい形のトレーニングが出来上がってくるのではと思います。
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【執筆者】
Waterview Consulting Group, Inc.
CEO
今泉江利子
www.waterviewcoaching.com
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email: eriko@waterviewcoaching.com
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【プロフィール】
米系証券会社での15年の経験後、起業、09年コーチング認証取得、座禅オタク。
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