【アメリカの人事部】移民政策執行を担う主要人物の人選と第1期政権からの変化から見る第二期トランプ政権移民政策の方向性

 

 

【アメリカの人事部】移民政策執行を担う主要人物の人選と第1期政権からの変化から見る第二期トランプ政権移民政策の方向性

 

2024年11月の米大統領選挙で再選を果たしたドナルド・トランプ氏は、第2期政権の最優先事項として、不法移民の国外退去と国境警備の強化を掲げています。選挙公約として「米国史上最大規模の国外退去」を実現することを約束し、この政策が就任初日から進められると見込まれています。一方で、合法移民政策、特に就労ビザに関する具体的な方針については明確な言及がなく、不法移民の取り締まりを優先する姿勢が強く感じられました。

第1期政権(2017年~2021年)では、合法移民を含むすべての移民に対して否定的な姿勢を示していたトランプ氏ですが、今回は不法移民の取り締まりを政策の中心に据えた点で、前回からの方針転換が示唆されます。また、今回の選挙運動では、合法移民政策に対して比較的前向きと受け取れる発言が見られました。特に、米国の大学を卒業した優秀な留学生に永住権を提供することを約束した点(実現には議会の協力が必要ですが)や、海外から優秀な人材を積極的に受け入れることを求めるシリコンバレーのイーロン・マスク氏ら実業家たちが選挙運動で重要な役割を果たし、当選への貢献を背景に政府内で影響力のある地位を得た点は、過去の政権運営とは異なる新たな特徴と言えるでしょう。政策に影響を与える立場となったシリコンバレーの実業家たちと、移民政策強硬派のスティーブン・ミラー氏が率いる保護主義的ナショナリストらとの党内対立の中で、それぞれのトランプ氏への影響が政策にどのように反映されるかが注目されています。

 この対立とマスク氏らの影響は、20日の就任を待たずして、既に公然と表面化しています。2024年12月、H-1Bビザを巡る議論が突如として始まり、SNS「X」上での対立として可視化されました。マスク氏らは、米国の技術革新と国際競争力を維持するために高度技能移民が不可欠であると主張しています。一方で、極右活動家で反移民派のローラ・ルーマー氏や、第1期トランプ政権で首席戦略官を務めたスティーブン・バノン氏は、H-1Bビザが「安価な外国人労働者によって米国人の雇用を奪う」として強く反対しています。また、トランプ氏の支持基盤である労働者階級や、党内でスティーブン・ミラー氏を中心とする強硬派も労働者保護を最優先する姿勢を崩さず、移民政策を巡るイデオロギー対立は一層深刻化しています。

 トランプ氏は今の所、シリコンバレー陣営に近い立場を示しているものの、第1期政権で合法移民制度を厳格化し、移民の道を大幅に制限した実績や、前述のXでの議論の勃発と、それが主流メディアとソーシャルメディアの双方で注目を集め、高度技能移民の受け入れを巡る激しい議論を引き起こしている現状を考えると、その政策がどこまで具体化されるかは未知数です。また、この議論はH-1Bビザに限らず、LビザやEビザといった他のビザカテゴリーにも波及する可能性があります。特に、LビザはH-1Bと類似した用途で多く利用されており、その動向が注視されています。

 本稿では、トランプ氏の第1期政権における政策やこれまでの発言(特に移民政策における焦点の変化)を基に、次期政権の主要人物が示唆する方向性を踏まえ、第2期トランプ政権下での移民政策の可能性を分析します。

  1. 1期トランプ政権の移民政策が示唆する方向性

トランプ氏は、第1期政権下で400以上の移民政策に関連する大統領令を発布しました。その結果、就労ビザ手続きが煩雑化し、日系企業を含む多くの企業が影響を受けることとなりました。特に2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが移民政策に与えた影響が顕著でした。同年3月には大使館でのビザ発給サービスが停止され、6月には一部のビザ(H・L・J)の発給が大統領令により停止されました。同年7月にビザ発給業務が再開されたものの、フル稼働には長い時間を要し、2020年度は近年で最も移民数が少ない年となりました。

 H・L・Jビザの発給停止は、バイデン政権下で失効するまで継続されました。こうした動きは米国で活躍する多くの企業にとって記憶に残る出来事であり、次期政権下での移民政策に対する懸念を高める要因となっているのではないでしょうか。これらの政策はCOVID-19パンデミックにおける公衆衛生対策や失業率悪化への対応としての側面が強調されましたが、実際には国境を閉鎖し移民を制限することで、トランプ氏が従来から推進していた移民制限方針の実現に寄与する結果となったことも否めません。

さらに、トランプ氏は大統領令に加え、ビザの審査を行う行政機関(米国国務省および米国国土安全保障省)への指示を活用し、移民手続きの審査基準を厳格化しました。このような多層的なアプローチにより、前任期中にはビザ取得のハードルが大幅に引き上げられました。特に、既存の法律の再解釈や審査基準の厳格化といった変更は、法改正を伴わずに移民制度を迅速かつ容易に変更する手段として機能し、外国人労働者やその雇用主に多大な影響を及ぼします。法律の改正には議会の承認が必要となる一方で、このような変更は既存の法的枠組み内で比較的容易に実施可能であり、第2期トランプ政権においてもこの手法が引き続き活用されると考えられます。 

  • 1期トランプ政権下で外国人労働者に影響を与えた政策の例

大統領令

  • 特定国(ムスリム多数派国家)からの入国禁止令
  • カナダ・メキシコ陸路国境の閉鎖とビザ発給業務停止(コロナ対策)
  • COVID-19と失業率の悪化によるH・L・Jビザの発給停止(コロナ対策)
  • 大統領令「Buy American and Hire American」に基づく米国民の雇用保護を目的とした審査・取り締まりの強化

米国国務省の取り組み(傘下の米国大使館・領事館は、ビザ審査を通じて米国への入国を許可する外国人を決定する重要な役割を担い広範な裁量権を有している)

  • ビザ審査の厳格化(それにより却下率が上昇し、審査期間も延長された)
  • 全てのビザ発給業務の一時停止(コロナ対策)
  • H・L・Jビザ発給の一時停止(コロナ対策)
  • ビザの有効期限の短縮、入国回数制限の実施
  • 出産目的の観光ビザ取得を制限
  • ソーシャルメディア、旅行履歴、家族歴などの追加情報の要求
  • 大統領令「Buy American and Hire American」に基づく米国民の雇用保護を目的とした審査を実施

米国国土安全保障省の取り組み(傘下に米市民権・移民局があり、米国内での移民関連の申請を処理する)

  • ミッションステートメントを「移民国家の約束」から「米国国民の保護」に変更
  • 審査の厳格化による追加資料要求と却下率の増加および審査遅延
  • 審査において公的扶助依存の可能性を評価(所得、学歴、資産等の審査)
  • 生体情報(指紋、写真)の採取を義務化
  • 一部特急申請の停止
  • 延長申請で過去の許可を尊重する方針を撤回し、新規審査基準を適用
  • 特定のビザの対象職業を限定し「専門職業」の定義を狭める試みを実施
  • H-1B(専門職)ビザの審査において給与額を審査基準に追加
  • H-1Bビザ保持者の賃金基準を引き上げる試みを実施(裁判所が阻止)

その他の取り締まり強化

  • トム・ホーマン移民税関捜査局(ICE)局長代理(次期国境管理責任者)の指揮で職場訪問(不法就労の取り締まり)や監査(移民コンプライアンスの調査)を拡大
  1. 1期トランプ政権以降の変化

トランプ氏の初任期以降、政治、経済、ビジネス、社会の環境は大きく変化し、それに伴い、トランプ氏自身の移民政策に対する姿勢にも変化が見られます。初任期では、就労ビザ保持者が米国民の雇用を奪い、低賃金労働によって雇用環境を悪化させていると主張し、合法移民に対しても否定的な姿勢を示していました。しかし、今回の選挙運動では、国境警備や不法移民問題に重点を置き、バイデン政権の対応を批判する内容が中心となる一方、合法移民に関する具体的な発言は控えめであり、むしろポジティブと捉えられるものが注目されました。

イーロン・マスク氏やヴィベック・ラマスワミ氏らの影響力はいかに?

今回の選挙運動で注目を集めたのは、マスク氏やヴィベック・ラマスワミ氏など、シリコンバレーの実業家たちによる積極的な介入です。彼らはトランプ氏の選挙運動を資金面やキャンペーンの支援を通じて後押しし、その政策形成に影響を及ぼす可能性がある存在として注目されています。特に高技能者に関する移民政策については、「就労ビザのより容易なアクセスと増加」や「合理的なビジネス移民政策の実現」が不可欠であると主張しており、これが今後の政策にどのように反映されるかが焦点となっています。

例えば、マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務めるテスラは、2024年だけで1,738件以上のH-1Bビザを申請しており、H-1Bビザを活用する企業トップ22にランクインしています。また、トランプ氏自身も選挙運動中にシリコンバレーのベンチャーキャピタリストとのポッドキャストで「米国の大学を卒業した留学生に永住権を提供する」と明言しました。

さらに、マスク氏やラマスワミ氏は、トランプ氏が設立を発表した「政府効率化省(Department of Government Efficiency)」という連邦政府の効率化と支出削減を目的とする委員会に共同責任者として任命されています。この「効率化」が移民政策、特に就労ビザにどのような影響を及ぼすのかは不明ですが、第2期トランプ政権において彼らが関与することで、外国人就労者にとってポジティブな動きが期待されています。

移民政策強硬派の人選による政策推進体制の強化

トランプ陣営は第1期政権で直面した課題への対応に向け、過去4年で十分な準備を整えてきました。前任期中、多くの大統領令や規制が裁判で争われ、差し止めや撤回を繰り返しました。また、レーガン大統領以降の歴代大統領と同様に、包括的な移民法改革を実現するには至りませんでした。しかし今回は、状況が大きく異なります。前任期中に築き上げた保守派多数の最高裁判所に加え、共和党が下院・上院・ホワイトハウスを支配する「トリフェクタ」の体制を背景にしています(ただし、議会では僅差の多数派にとどまっており、包括的な移民法改革の成立には依然として困難が伴う可能性があります)。さらにバイデン政権下で悪化した不法移民問題の解決を求める世論も味方につけています。このような政治的条件の下で、第2期政権の移民政策がどのように進展するのかが注目されています。

移民政策の遂行における戦略の一環として、ロイヤリストを中心とした人選による政権体制の強化が挙げられます。トランプ氏は今回、政策の実現に必要な人材を厳選し、その多くをロイヤリストで固めています。前任期中には、トランプ氏に任命された「エスタブリッシュメント派」の官僚が意見の対立から政策を抑制し、辞任に至るケースも見られましたが、今回はそのような内部の弊害を防ぐ意図が明確にうかがえます。特に移民問題に関しては、以下の移民政策強硬派のラインアップを通じて、積極的に政策を推進する姿勢がうかがえます。

  • スティーブン・ミラー氏(Stephen Miller)政策担当の大統領次席補佐官(Deputy Chief of Staff for Policy)

第1期トランプ政権で上級顧問を務め、厳格な移民政策を設計した中心人物。「ゼロ・トレランス政策」を含む多くの物議を醸した政策を推進しました。今回はさらに攻撃的な政策アジェンダを準備していると言われています。

  • トム・ホーマン氏(Tom Homan)国境管理責任者(Border Czar)

ICEの局長代理を務め、職場査察や移民取り締まりを主導した移民政策の強硬派。第2期トランプ政権では「大量国外退去」の責任を担うとされています。共和党大会で不法移民に対して「荷造りを開始すべき」と公言するなど、移民取り締まりに対する強硬な姿勢を鮮明にしています。

  • クリスティ・ノエム(Kristi Noem)米国国土安全保障省長官(Secretary of Department of Homeland Security)

トランプ氏の国境政策を積極的に支持するサウスダコタ州知事。第1期トランプ政権では州兵を国境警備に派遣するなど、トランプ氏の政策に深く共感する強硬派として知られています。

彼らはトランプ氏の理念に共感し、それを忠実に実行する意志を持っているだけでなく、特にミラー氏とホーマン氏は、政策を効果的に実行するための知識と能力を備えています。特に国境問題、不法移民の国外退去、さらには「ムスリム渡航禁止令」(ムスリム多数派国家を対象とした渡航禁止措置)の再導入において、就任初日からの実行が見込まれています。また、ミラー氏は、全ての移民に反対する保護主義的な姿勢を強く持っており、その立場はトランプ氏自身よりもさらに極端です。就労ビザの拡充を求めるマスク氏らシリコンバレー陣営との意見は鋭く対立しており、移民政策における党内の対立を深刻化させる要因ともなるでしょう。

移民政策強硬派 vs.マスク氏らの相反する主張-トランプ氏はどちらに耳を傾けるのか

トランプ氏の第2期政権における移民政策で注目されるのは、ミラー氏を筆頭とする移民政策強硬派と、マスク氏をはじめとする就労ビザ拡充支持派との対立です。この対立は、トランプ氏が正式に就任する前から既に始まっており、支持基盤内での分断を浮き彫りにしています。特にH-1Bビザを巡る議論は、双方の陣営がそれぞれの理念や経済的利害を巡り激しく衝突する象徴的な争点となっています。

具体的には、トランプ氏がAI政策顧問に指名したスリラム・クリシュナン氏の移民政策に対する姿勢が、議論をさらに激化させるきっかけとなりました。クリシュナン氏は、自身も移民出身であり、H-1Bビザがシリコンバレーの競争力を支える重要な手段であると主張しています。この姿勢は、シリコンバレーのリーダーたちから一定の支持を受ける一方で、反移民派からは「米国労働者を犠牲にするもの」として激しく批判されています。この議論の中で特に注目すべきは、マスク氏の発言です。彼自身もH-1Bビザを通じて米国でキャリアを築き、現在もテスラやスペースXで多くのH-1Bビザ取得者を雇用しています。マスク氏は「H-1Bがなければ私はここにいなかった」と明言し、アメリカ国内で才能と動機を兼ね備えた技術者の不足を指摘しています。さらに、国籍を問わず優秀な人材を確保する必要性を訴え、この制度を批判する反移民派に対しても強く反論しました。こうした姿勢はシリコンバレーでは一般的な見解であり、世界的な競争力の強化を目指す同業界において就労ビザの重要性を改めて浮き彫りにしています。

移民政策に関するこのような対立の背景には、現状の米国経済が抱える問題もあります。2024年11月時点で失業率は4.2%と低く、770万人の雇用が未充足という状況が、ビザ拡充を求める議論を後押ししています。不法移民の国外退去が進めば、さらなる人手不足が予想される一方で、合法的滞在資格の拡充がそのギャップを埋める可能性が期待されています。さらに、H-1Bビザを巡る議論は、単に全般の人手不足の問題にとどまらず、必要とされるスキルを持つ労働者が不足しているという現状に深く根ざしています。米国の教育機関で関連分野の学位を取得する米国生まれの人々が減少していることが、企業が外国人労働力に依存せざるを得ない要因となっています。この状況は、激しい国際競争の中で米国企業が競争力を維持するための重要な課題を浮き彫りにしています。ただし、その解決策としてビザの拡充を進めるべきかについては、H-1Bビザへの過度な依存に対する懸念や、「アメリカ人優先」という価値観を守りたい反移民派の強い抵抗があり、この問題を一層複雑化させています。

トランプ氏は今回の議論において、H-1Bビザを「素晴らしいプログラム」と称賛し、マスク氏らに近い立場を示しています。しかし、過去の発言を振り返ると、彼の姿勢は一貫していません。2016年にはH-1Bビザを「安価な外国人労働力を利用する制度」として厳しく批判した一方で、第1期政権では「厳格な審査」や「高給与基準の導入」を試みましたが、裁判所で一部のルールが無効化されるなど、政策が揺れ動きました。さらに、2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で失業率が急上昇する中、米国人の雇用を守る目的でH-1BおよびLビザの発給を一時停止するという非常に厳しい措置を取っています。この政策はパンデミックによる経済的な混乱への対応として正当化されましたが、多くの企業から強い反発を招きました。従って今回の発言がトランプ氏の最終的な立場であるとは限りません。彼はこれまでも方針を左右に揺らしてきた経緯があり、2年後の中間選挙を控える中で、最終的な政策の方向性は経済状況や失業率に大きく左右される可能性があります。これらの要素は、移民政策を含む他の政策全般の影響を受けるため、H-1Bビザを巡る議論の行方も依然として不透明です。 

  • トランプ氏の指針

トランプ氏が第2期政権で就労ビザに関してどのような政策を打ち出すのかについては、今回のH-1Bの議論を含む主要な関係者の発言や就任初日からの動向に注目する必要があります。しかし、一貫して言えるのは、彼の政策の根底に「アメリカ第一主義」が据えられていることです。トランプ氏の政策決定の基準は、常にアメリカ経済とアメリカ国民にとって最善であると考えられる方向性に基づいています(その解釈が多様であり、実際の結果が伴うかどうかは別問題として)。

これまでの政権では、移民政策において徐々に「メリットベース」へのシフトが進められてきました。具体的には、第1期政権でH-1Bビザ申請者に対し最低賃金基準を引き上げる提案が行われ、抽選制を廃止して高給与を受け取る候補者を優先する仕組みの導入が模索されました。また、トランプ氏は他国で採用されているポイント制移民制度を支持し、学歴、職歴、英語能力、収入などの要素に基づく評価を強化する方向性を示していました。一方で、家族ベースの移民制度については「チェーンマイグレーション」と批判し、公的扶助の受給リスクが低い移民を優先する厳格な審査基準を追加しました。このような措置からは、従来の人道的価値観や社会的多様性よりも、経済的利益を優先する姿勢が鮮明に見て取れます。

トランプ氏が目指すのは、合法移民を拡充しつつ不法移民を厳格に取り締まる「二重政策」のバランスを取ることのようにも見えます。しかし、今回のH-1Bをめぐる議論が浮き彫りにしたように、支持基盤内の対立を完全に解消することは難しいかもしれません。特に、シリコンバレーを中心とした技術業界が求める高技能移民の拡充案と、移民政策強硬派が主張する全般的な移民制限という相反する立場の調整は依然として困難を伴い、予測が難しい状況です。今後、トランプ氏が米国の国際競争力を維持しつつ、「アメリカ第一主義」の理念をどのように具体化し、政策として実現していくのかが注目されるでしょう。

 最後に

 第2期トランプ政権の移民政策がどのように展開するかは、多くの要因に左右されるため、確定的な予測は難しいものの、いくつかの重要な指針が見て取れます。トランプ氏が掲げる「アメリカ第一主義」は、「米国を守り、米国民の利益を最優先する」という一貫した基本方針に基づいています。一方で、H-1Bビザを巡る議論に象徴されるように、移民政策においては複雑な利害対立が存在します。

マスク氏らが推進する高度技能移民の拡充案は、米国の技術革新と国際競争力を維持するための重要な柱とされていますが、トランプ氏の支持基盤である労働者階級や、スティーブン・ミラー氏を筆頭とする移民政策強硬派は、「移民が米国人労働者の雇用を脅かす」としてこれに反対しています。このように、移民政策には「アメリカ人労働者を守る」という国内支持層への配慮と、「国家利益や技術革新を促進する」という経済的合理性の間で難しいバランスが求められています。

 H-1Bビザを巡る議論は、他のビザカテゴリーにも波及する可能性があります。特にLビザは、高度技術人材を受け入れる手段として広く活用されていますが、年間発行枠の制限がないため、柔軟な運用が可能です。一方、Eビザは二国間条約に基づいているため影響が限定的とされていますが、過去にはトランプ政権がH-1BやLビザの発行を一時停止した際、Eビザがその影響を受けなかった事例もあります。これらの政策変更が各ビザカテゴリーに与える影響を慎重に見極める必要があります。

 最終的に、これらの政策がどの程度実現されるかは、予算上の制約、法的課題、政治的課題、経済状況(失業率の変動による移民政策支持の変化)、さらには中間選挙を見据えた世論の動向など、多くの要因に左右されます。そのため、主要人物の発言やマクロ経済の動向、さらにはトランプ氏自身の発言や方針の変化に幅広くアンテナを張りながら、慎重に状況を追い続けることが求められるでしょう。

 

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  【執筆】

    

冨田法律事務所 パートナー弁護士

比嘉 恵理子 (Eriko Higa)

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【プロフィール】

ミシガン大学ロースクール卒業。在学中は同ロースクールの国際法学雑誌でマネージング・エグゼクティブ・エディターを務め、米国連邦控訴裁判所にて法務経験を積む。日本、南米、米国で移民として育った経験と語学力を活かし、日本企業向けの移民法務に従事。 企業の就労ビザ、研修ビザ、出張ビザ、永住権申請やコンプライアンスのアドバイザリーから、実業家、アスリート、アーティストなど個人のビザ申請や永住権申請まで幅広い分野で法務支援を展開。米国移民政策の動向に関する記事を各種ウェブマガジンに定期的に寄稿し、日系企業向けセミナーでの講演活動も行っている。


 

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