【アメリカの人事部】「他の会社はどんな評価制度を使っていますか?」

 


 【アメリカの人事部】「他の会社はどんな評価制度を使っていますか?」

 

今回いただいた御質問は「他の会社はどんな評価制度を使っていますか?」という内容だ。他の会社がどのような評価制度を利用しているかは気になるところだが、視点を少し変えて、実際に他の企業では評価制度が機能しているのか?調査を見てみよう。

 

評価制度が機能していると思う企業は2%

フォーチュン500企業の最高人事責任者(CHRO)のうち、「自社の評価制度が従業員の仕事の向上を促す」と強く同意したのはわずか2%に過ぎなかった。この調査は2024年5月7日のギャラップの報告書によるものだ。同様に、米国の従業員18,600人以上を対象とした別のギャラップ調査によれば、20%強の人しか「自社の評価プロセスが公平かつ透明である」と答えておらず、期待される業務と実際の業務の間に乖離があることが浮き彫りになっている。

 

調査によれば、過半数の従業員が目標を正式に上司と見直すのは年に一度以下であるという。「伝統的な年次評価の愚かさは、年初に目標を設定し、それを正式に議論するのが年末までないことにある。その間に目標が依然として関連性を持っているかどうかも不明である」とギャラップは指摘している。

 

パンデミック後、多くの企業が評価システムの欠陥を認識し、見直しを始めた。特にハイブリッドワークの増加により、従業員がリアルタイムのフィードバックを得ることが難しくなっていることが分かっている。2022年のイーグルヒルコンサルティングの報告によれば、ハイブリッドワーカーの約40%が建設的なフィードバックを得ることが課題と感じているという。

 

年次評価が完全になくなることはないだろうが、ギャラップを含む専門家は、マネージャーのフィードバックセッションと給与や昇進の会話を分けることを提案している。「給与と昇進の話を分けることで、マネージャーはこれらの決定がどのように行われ、次のレベルに進むために必要なことを説明する時間を確保できる」とギャラップは述べている。

 

成功するためには、特に年末のミーティングにおいて心理的安全性に焦点を当てることが重要である。フィードバックは驚きであってはならず、パフォーマンスの懸念には具体的な支援が提供され、思いやりを持ってアプローチすべきである。

 

この調査で思い出されるのはアドビの「チェックイン」だ。

 

アドビの「チェックイン」の始まり

2012年、アドビは年次評価と格付けを廃止し、より柔軟な「チェックイン」というアプローチに切り替えた。従業員は年次評価のプロセスを煩雑で官僚的だと感じており、評価やスタックランクによる報酬がチームワークの障壁となり、多くの従業員が自分の価値を見失っていた。アドビは最高の仕事をするためには、年末までフィードバックを待つのではなく、年間を通じてオープンで継続的な対話を行うべきだと考えた。この考えから「チェックイン」が生まれたという。「チェックイン」は、従業員とマネージャーがパフォーマンスやキャリア成長について話し合い、リアルタイムでフィードバックを交換する継続的な双方向の対話である。これは、何がうまくいっているのか、何を改善できるのか、次に何に集中すべきかを話し合う意味のある会話であり、ビジネスの影響とキャリアの成長を促進する。

 

デジタルファーストのチェックインの導入

パンデミックの中、働き方が大きく変わる中で、アドビは優れた従業員体験の提供とキャリア成長の支援を継続しようと試みた。ハイブリッドワークと進化するビジネス形態を受け入れる中で、ビジネスの拡大と従業員の成長を支援するために「チェックイン」を進化させる必要があると認識したという。

 

2021年、チームや地域を超えた数百人のリーダーと従業員からのフィードバックを収集し、「チェックイン」がどのように機能しているかを調査したアドビ。この変革の必要性が一層明確になったという。アドビは10年前とは異なる会社であり、従業員数はほぼ3倍に増え、グローバルでマトリックス化され、働き方は変わり続けている。これを踏まえ、デジタル対応の「チェックイン」を導入し、継続的な対話に焦点を当てつつ、従業員が目標を記録し、マネージャーとパフォーマンスを議論し、キャリアの願望をマップできる一貫した中央集権的な場所を提供することにしたという。

 

またChipotleは4X4のコミュニケーションを全社に導入しているという。

 

4×4パフォーマンス管理とは

年次パフォーマンスレビューは多くの企業で一般的なプロセスであり、チームメンバーとマネージャーが毎年集まり、過去12か月間の成果、改善点、そして今後の目標について話し合う。しかし、伝統的な評価プロセスが効果的でないと感じるHRの専門家もいる。彼らは、意図された成果がほとんど実現されず、多くの従業員とマネージャーが評価そのものを嫌うようになったと指摘する。

 

人事コンサルタントのジェイソン・ラウリッツェンは、パフォーマンスレビューの再構築を長年提唱してきた。彼は同僚と共に一般的なパフォーマンス管理の問題を議論した後、4×4パフォーマンス管理という新しいプロセスを開発した。このプロセスでは、年次評価の代わりに四半期ごとの評価を行う。ラウリッツェンの理論では、年に一度のミーティングでは不十分であり、会社や部門の優先事項が評価の間に変わり、マネージャーと従業員が以前に話し合ったことを忘れてしまう可能性があるという。理想的には月次ミーティングが望ましいが、四半期ごとでも十分である。

ここでその4X4のプロセスについて紹介しよう。

 

4×4パフォーマンス管理のプロセス

4×4パフォーマンス管理プロセスでは、四つの質問に焦点を当てる。マネージャーと従業員は回答を文書化し、ミーティングの前に互いに共有する。四つの質問は以下の通りである:

 

(1)前回のミーティング以来の最も重要な成果は何か?

この質問はミーティングをポジティブなノートで始め、従業員が誇りに思っている仕事や進捗を話す機会を提供する。マネージャーは認識を示し、見逃していた成功を学ぶことができる。

(2)次回のミーティングまでに集中する最も重要なことは何か?

ミーティングは過去の成果から将来の目標設定に移行する。マネージャーと従業員が同じページにいることを確認し、チームが目標を達成するために必要な作業を理解する機会を提供する。この質問はキャリア開発についても話し合う機会を提供する。

(3)現在直面している障害は何か?

従業員はレビュー中に直面している問題を共有する機会を常に持つべきである。これにより、マネージャーは従業員が目標を達成するために必要なリソースや修正すべき問題を学ぶことができる。

(3)マネージャーとして、あなたをサポートするために私ができること、または違う方法は何か?

この質問はミーティングを完結させ、従業員にマネージャーへのフィードバックを提供する機会を与える。各チームメンバーと会うことで、マネージャーはリーダーとして改善すべき点を学ぶことができる。

 

従業員主導の四半期ごとのパフォーマンスレビュー

4×4プロセスのもう一つのユニークな側面は、評価を受ける従業員が主導することである。従業員はミーティングのスケジュール、議論の文書化、ミーティング後のフォローアップを行う責任を負う。従業員が自分のパフォーマンス向上に責任を持ち、フィードバックを受け取ることを望むべきだという考え方だ。従業員主導のプロセスにより、従業員は自分の全体的なパフォーマンスに焦点を当てることができ、評価プロセスを迅速に終わらせることに対する不安を軽減することができるだろう。

 

パフォーマンスレビューの近代化

4×4パフォーマンス管理プロセスはすべての企業に完璧に適しているわけではないが、会社の文化や従業員のポジションに応じて異なる質問を使用すべきだろう。重要なのは、どのようなパフォーマンスレビューでも成果の認識、改善点の議論、将来の目標設定が行われるべきであるということである。もし会社のレビューが期待に応えていない場合は、プロセスの近代化を検討する時期が来ている。

 

▼出所:Only 2% of CHROs say performance management systems work as intended

https://www.hrdive.com/news/improve-performance-management-systems/715787/?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=Issue:%202024-05-13%20HR%20Dive%20%5Bissue:61974%5D&utm_term=HR%20Dive

 

▼How Adobe continues to inspire great performance and support career growth

https://www.adobe.com/check-in.html

 

▼出所: How Chipotle is Investing in their People

https://medium.com/jacob-morgan/how-chipotle-is-investing-in-their-people-60377afb21a0

 

この記事に関してご質問は、Philosophy LLC まで、お気軽にお問い合わせください。


 
【執筆】
 
 
Philosophy LLC
President
山口 憲和   (Norikazu Yamaguchi)
Email:yamaguchi@yourphilosophy.net  
 
 
【プロフィール】
MBA, SHRM-SCP
CA Insurance License: 0F78137
日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ 会員番号463
 
 
群馬県高崎市出身
2000年より米国型人事コンサルティングを行う。
2004年からロサンゼルスに拠点を移し、日系企業を中心に500社以上のコンサルティングを経験。米国人事に欠かせない保険のライセンスも取得し米国人事のサポートを行っている。
また、米国人事プロフェッショナルとしての資格 SHRM-SCP=SHRM(Society for Human Resource Management=米国人材マネジメント協会)Senior Certified Professionalを取得。  
 
 
(学歴 )
群馬県立高崎高等学校卒業
東京外国語大学 外国語学部 
中国語学科卒業 中国 復旦大学 国際文化交流学院修了
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 修士課程修了(MBA)  
 
 
(職歴)
全日本空輸株式会社(ANA)、Mercer Human Resource Consulting等を経て現職  
 
 
(共著書)
A&R優秀人材の囲い込み戦略A&R優秀人材の囲い込み戦略  
 
 
 
【会社情報】
Philosophy LLC
Philosophy Insurance Services
所在地:609 Deep Valley Drive, WEST TOWER Suite 358
Rolling Hills Estates, CA 90274  
URL:philosophyllc.com/
TEL  310-465-9173  
 
 
【事業内容】
日系企業向け人事コンサルティング・保険代理店業務  
 
 
免責事項:山口憲和は、この記事の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、この記事の内容は 法的助言として解釈できません。 不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。 この電子記事上の情報は、ガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。  
 
Disclaimer: Please note that Norikazu Yamaguchi makes every effort to offer accurate, common-sense, ethical Human Resources management, employer, workplace, and Insurance information on this article, but Norikazu Yamaguchi is not an attorney, and the content on this article is not to be construed as legal advice.  When in doubt, always seek legal counsel. The information in the email is provided for guidance only, never as legal advice. We will not be responsible for any damages caused by using this information.    
 

 

●「アメリカの人事部」ニュースレターのお申込み

クイックUSAは「アメリカの人事部」を発足し、在米日系企業様向けにニュースレターを配信させていただいております。アメリカでビジネスを遂行していくために、必ず知っておかなければならない法律、人事・労務、ビザなどの最新ニュースを定期的にお届けしております。

 

「アメリカの人事部」のニュースレターをご希望の企業様は、下記までお気軽にお申し付けください。   「アメリカの人事部」のニュースレターお申込みご希望の方はお手数ですが、会社名、ご担当者様氏名、役職、電話番号、会社のご住所、E-mailアドレスを明記の上、下記E-mailアドレスまでご連絡くださいますようお願いいたします。 

 

E-mail:info-usjinjibu@919usa.com  

 

     

 

「アメリカの人事部ニュースレター」のバックナンバーをご希望の方は、

E-mail:info-usjinjibu@919usa.com まで、 ご希望のナンバーをお気軽にお知らせください。  

 

 


 

【アメリカでのご採用をご検討中の企業様へ】

 

★採用でお困りなことはありませんか?

クイックUSAでは、アメリカでのご採用のお手伝いをしています。

フルタイム、パートタイム、派遣等、御社のご採用のお手伝いをさせていただきます。

お気軽に下記までご連絡ください。  

 


 

●人事・労務関連のご相談にも応じております。

クイックUSAではハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成、セクハラ防止セミナーの開催など、 人事労務関連のご相談も承っております。内容、お見積りなど何でもお気軽に下記までご相談ください。  

 

QUICK USA, Inc.

 

[ Orange County Office ] 
2211 Michelson Dr., Suite 900, Irvine, CA 92612 USA
Phone: 310-722-3813
[ Atlanta Office ] 
303 Perimeter Center N Suite. 300, Atlanta, GA 30346 USA
Phone: 404-706-5266

 

【アメリカでのご転職・就職をお考えの方へ】

 

アメリカでのお仕事探し、就職・転職はクイックUSAにお任せください。

弊社のサービスにご登録がお済みでない方は、まずは英文履歴書のご登録をお願いいたします。

www.919usa.comより、オンライン登録をしていただくか、

quick@919usa.comまでE-mailにて英文履歴書を添付ファイルにてお送りください。

折り返しご連絡させていただきます。  

 

※クイックUSAではニューヨークとロサンゼルスを拠点に全米で、留学生や社会人の求職者に対してアメリカでの就職・転職のお手伝いをしています。ご紹介しているお仕事は、金融、会計、IT、輸出入、人事、営業など多岐に渡ります。  

 

雇用形態はお仕事をお探しの方のライフスタイルに合わせて、 フルタイムのお仕事とテンポラリーのポジションをご紹介。 クイックUSAでは経験豊富なリクルーターが、求職者の皆様一人ひとりのご希望などを伺いアメリカでのキャリアプランを一緒に考えさせていただいています。 アメリカでお仕事をお探しであれば、アメリカ求人多数のクイックUSAに是非ご登録ください!(無料)  

 


 

★★クイックUSAにレジュメのご登録がまだの方は、今すぐご登録ください!★★

 

 

 

クイックUSAでは、ご登録者の方に対して無料のキャリアカウンセリングを実施しています。
★★Emailにてレジュメを送るだけで登録完了のエクスプレス登録もご利用いただけます!★★

     

アメリカで現在お仕事をされている方、OPTや学生の方など、現在アメリカに住んでいらっしゃる方へ
アメリカでのご転職・就職で何かご質問がございましたら下記よりご連絡ください。

 


 

    

 
クイックUSAでは、LinkedinLINE、InstagramFacebookTwitterでも情報発信をしています。是非、フォローお願いします。