【アメリカの人事部】バックグランドチェックは本人の許可なく出来ますか?

 


 【アメリカの人事部】「バックグランドチェックは本人の許可なく出来ますか?」

 

今回いただいた質問は「バックグランドチェックは本人の許可なく出来ますか?」という質問だ。

 

今回はカリフォルニア州の例をとって回答していきたい。

端的に申し上げると、本人の許可がないとバックグランドチェックは行うことは出来ない。採用の条件付きオファーを発行した上で、下記の書類を候補者に渡し、必要な署名を得た後で、初めてバックグランドチェックを行うことが出来る。

 

書類としては下記の内容のものを準備する必要がある。

 

求人広告での書面による開示:

雇用主は、バックグランドチェックが行われる可能性があることを、応募者または従業員に対して書面で開示する必要がある。この開示は、雇用申込書や他の文書とは別の単独の文書でなければならない。

 

バックグランドチェックの承認:

雇用主は、バックグランドチェックを行うために個人から書面による許可を得る必要がある。これは通常、応募者や従業員が署名する承認フォームによって行われ、バックグランドチェックへの同意を示す

 

調査型消費者報告に関する追加の開示:

バックグランドチェックが「調査型消費者報告」(応募者の友人、隣人、知人など、応募者を知る人々へのインタビューを含む)を含む場合、雇用主は追加の開示を行う必要がある。この開示では、調査の性質と範囲について応募者または従業員に通知する必要がある。

 

医療情報に関する開示:

仕事が医療情報の収集を必要とする場合、カリフォルニアの雇用主はこれに対する特定の許可を得る必要があり、アメリカ障害者法(ADA)およびカリフォルニア医療情報保護法(CMIA)を含む連邦法および州法に準拠しなければならない。

 

FCRAに基づく権利の概要:

署名を必要としないが、第三者のスクリーニングサービスを使用する場合には、公正信用報告法(FCRA)に基づく応募者の権利の概要を提供するのが最善の方法であり、連邦法によって要求されている。

 

州特有の通知:

状況に応じて、カリフォルニア州法の下で要求される追加の州特有の通知や開示がある場合がある。例えば、カリフォルニア調査型消費者報告機関法(ICRAA)やカリフォルニア消費者信用報告機関法(CCRAA)に関連する通知などが含まれる。

 

これらの文書は、背景調査を行う前に提供され、同意を得る必要がある。また、バックグランドチェックの結果に基づいて不利な措置(例えば、応募者を雇用しない)を取る場合、FCRAおよびカリフォルニア法の下で追加の手続きと通知が必要になる。カリフォルニア州の手続きについては下記にて詳細をご説明したい。

 

QUICK USA ハ・タ・ラ・クの下記の記事でも紹介されているように多くの州で「セカンドチャンス」を提供しようという動きは拡大している。

 

アメリカで特定の犯罪歴を封印し社会復帰を促進する「クリーン・スレート法」(白紙に戻す法)が広がっています

2024年4月9日

ハタラク・知っ得!話

https://919usanews.com/clean-straight-2024/

 

カリフォルニア州では以前からバックグランドチェックの実施には「条件付きオファーをした後にバックグランドチェックが可能」というルールが存在している。

更にカリフォルニア州ではバックグランドチェックの特に犯罪歴によるジョブオファーの拒否について仕事の関連性がなければ採用拒否が出来ないという厳しい要請が盛り込まれている。

 

そこで、カリフォルニア州ではCivil Rights Departmentの下記のリンクにて

Fair Chance Act: Guide to Using CRD’s Sample Formsを公開している。

https://calcivilrights.ca.gov/fair-chance-act/fca-forms/

https://calcivilrights.ca.gov/wp-content/uploads/sites/32/2023/03/Fair-Chance-Act-Sample-Forms-Packet.pdf

 

ここにあるように次の6つのステップを経た上で、バックグランドチェックによるJob Offerの取り下げが初めて可能になる。

      1. 求人広告でのバックグランドチェックがある旨の告知

      2. 条件付きオファーレターの発行

      3. バックグランドチェックの結果と仕事内容をフォームに沿って検証

      4. バックグランドチェックによる条件付きオファーの取り下げ予告通知

      5. 4の結果について反論等を考慮して再度検証

      6. 最終的な条件付きオファーの取り下げ告知

 

▼特に上記のステップ4で仕事との関連性により仕事オファーを拒絶する理由を記載する必要がある。サンプルフォームは下記からダウンロードが可能である。

https://calcivilrights.ca.gov/wp-content/uploads/sites/32/2023/03/Sample-Criminal-History-Individual-Assessment-Form.pdf

 

たとえば、犯罪歴報告書により、内定者が飲酒運転の重罪で有罪判決を受けたことが判明しているが、仕事の一環として運転を行う予定がない場合、犯罪歴が仕事の性質に及ぼす影響は限定的だと考えられる。

逆に、犯罪歴から重大な暴力犯罪が発生しており、その職が一般社会と緊密に連携する場合、雇用主は、犯罪や行為の性質が将来の従業員の職務遂行能力に大きな影響を与えると判断する可能性もある。

こような判断の根拠を含めて、上記のリンクにあるような書類を利用しながら記録を残し、ステップに従った対応が必要になる。

バックグランドチェックには下記のような関連法律が影響することもあるため、専門の調査会社等に確認の上、進めることをお勧めしたい。

 

■バックグランドチェック関連の法律

公正信用報告法(FCRA):

情報の正確性、公平性、プライバシー保護を促進。

応募者は背景調査のコピーを入手する権利があり、誤った情報に異議を申し立てることができる。

カリフォルニアの雇用主は、第三者によって作成された背景調査を使用する場合、FCRAのガイドラインに従う必要がある。

 

ICRAAおよびCCRAA:

これらの法律は、特定の雇用背景調査に適用され、カリフォルニア州の雇用主は、これらに加えて、連邦および州の適用されるすべての法律に準拠する必要がある。

 

ICRAA(調査消費者報告機関法):

FCRAよりも厳格な条項を含み、7年間の情報制限を設ける。

 

カリフォルニアの7年ルックバックルール:

ICRAAにより、有罪判決の報告に7年間の制限が設けられている。

 

CCRAA:

ICRAAに似ているが、クレジットレポートに関しては異なる内容がある。

 

CIPA(カリフォルニア情報プライバシー法):

FCRAによる最小限の従業員プライバシー保護を拡張。

 

CA労働法 432.7:

雇用主は、特定の犯罪歴について応募者に尋ねることを禁止されている。

 

裁判所記録の生年月日削除:

雇用背景調査に影響を及ぼす可能性がある。

 

SB-731:

特定の条件を満たす非暴力的で性犯罪に関連しない重罪の記録を自動的に封印する法律。

 

公平なチャンス法:

雇用主は、条件付きの求人を出す前に、応募者の犯罪歴について問い合わせることを禁じられている。

 

カリフォルニアの検歴抹消法:

特定の条件を満たす者は、軽犯罪や重罪の記録を抹消することができる。

 

カリフォルニア州知事NewsomのSB 1262拒否:

生年月日を用いた犯罪記録の確認が困難になる可能性がある。

 

犯罪記録の抹消:カリフォルニアのクリーンスレート法:

特定の条件を満たした犯罪記録を自動的に抹消し、報告されないようにする。

 

過去のマリファナ有罪判決の取り消しと封印:

一定のマリファナ関連犯罪の有罪判決を自動的に取り消し、封印する。

 

就業外マリファナ使用に基づく雇用差別禁止:

2024年1月1日から、職場外でのマリファナ使用に基づく雇用差別を禁止する法律が施行される。

 

給与透明化法:

雇用主は、内部および外部の求人広告に給与スケールと範囲を掲載する必要がある。

 

介護者およびホームヘルス応募者に対する公正なチャンス法:

特定の古い有罪判決を持つ人々が、資格を満たし社会福祉局からの除外許可を受ける場合、介護組織によって雇用されることを許可する法律。

 

この記事に関してご質問は、Philosophy LLC まで、お気軽にお問い合わせください。


 
【執筆】
 
 
Philosophy LLC
President
山口 憲和   (Norikazu Yamaguchi)
Email:yamaguchi@yourphilosophy.net  
 
 
【プロフィール】
MBA, SHRM-SCP
CA Insurance License: 0F78137
日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ 会員番号463
 
 
群馬県高崎市出身
2000年より米国型人事コンサルティングを行う。
2004年からロサンゼルスに拠点を移し、日系企業を中心に500社以上のコンサルティングを経験。米国人事に欠かせない保険のライセンスも取得し米国人事のサポートを行っている。
また、米国人事プロフェッショナルとしての資格 SHRM-SCP=SHRM(Society for Human Resource Management=米国人材マネジメント協会)Senior Certified Professionalを取得。  
 
 
(学歴 )
群馬県立高崎高等学校卒業
東京外国語大学 外国語学部 
中国語学科卒業 中国 復旦大学 国際文化交流学院修了
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 修士課程修了(MBA)  
 
 
(職歴)
全日本空輸株式会社(ANA)、Mercer Human Resource Consulting等を経て現職  
 
 
(共著書)
A&R優秀人材の囲い込み戦略A&R優秀人材の囲い込み戦略  
 
 
 
【会社情報】
Philosophy LLC
Philosophy Insurance Services
所在地:609 Deep Valley Drive, WEST TOWER Suite 358
Rolling Hills Estates, CA 90274  
URL:philosophyllc.com/
TEL  310-465-9173  
 
 
【事業内容】
日系企業向け人事コンサルティング・保険代理店業務  
 
 
免責事項:山口憲和は、この記事の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、この記事の内容は 法的助言として解釈できません。 不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。 この電子記事上の情報は、ガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。  
 
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