【アメリカの人事部】不明確なFMLA申請への対応

 

 

【アメリカの人事部】不明確なFMLA申請への対応

 

皆さんは、従業員から次のような電話がかかってきたらどのように対応しますか?

 

・「気分が悪くて、めまいと頭痛がします。家族が緊急事態です」

・「医師の診断書はこちらです」(診断書の内容:「2018年9月4日は仕事を休ませてください。診察予約があります」)

・「背中と肩が痛みます。FMLAの書類が必要です」

・「ここ3日間、片頭痛がひどい状態です」

 

Family and Medical Leave Act(FMLA)*1の規定により、従業員は雇用主に休暇の通知を行うことが義務付けられています。

従業員は休暇申請にFMLAを適用できるかどうかを雇用主が合理的に判断するのに十分な情報を提供する必要があります。

これには従業員が休暇を必要とする期間、従業員が妊娠または入院していること、家族が介護を必要としていることなどの詳細情報が含まれます。

29 C.F.R. § 825.302(c)および825.303(b)をご確認ください。

詳細を伝えずに電話で「病気」と伝えるだけでは、通知としては不十分です。

これらは実際にはどのように対処されるのでしょうか。雇用主はどう対応すべきでしょうか。

 

実例に基づいて見ていきましょう!

 

「気分が悪くて、めまいと頭痛がします。家族が緊急事態です」 

ある従業員が「頭がぼんやりしてめまいがあり、安全に仕事ができず、家族に緊急事態になった」ため、休暇を申請しました。 これはFMLAの通知として十分でしょうか。裁判所はこれを認めませんでした。従業員は以前から断続的なFMLA休暇を取得し手順を知っていたにも関わらず、新たな申請に際して具体的な病状を述べなかったためというものでした。

 

医師の診断書の内容:「2018年9月4日は仕事を休ませてください。診察予約があります」 

ある従業員が上司に、次のような医師の診断書の写真をテキストメッセージで送りました。「2018年9月4日は仕事を休ませてください。診察予約があります」 裁判所はFMLAに基づき、この通知が不十分であると判断しました。詳細を記載せずに従業員に診断予約があるとだけ記載した医師の診断書は、従業員にFMLAの権利を与えられないだけではなく、雇用主が定める出勤規定の違反を取り消すにも不十分であると判断されました。 さらに裁判所は、たとえ十分であったとしても、従業員は雇用主の通常かつ慣習的な通知要件に従っていなかったと述べました。

 

「背中と肩が痛みますFMLAの書類が必要です」 

腰痛のある従業員がFMLAの書類を求めました。数週間後、彼は仕事を休み、追加情報なしで医師の診察予約の画像を上司にテキストメッセージで送信しました。この従業員は会社の方針に違反する欠勤を複数回行ったことを理由に解雇され、訴訟を起こしました。FMLAに基づき、最初の通知が十分であったかどうかが争点となりましたが、従業員が完全な状態のFMLA申請を提出していなかったため、FMLA違反には当たらないと判断されました。裁判所は「FMLAでは、雇用主が従業員の勤務履歴を精査し、従業員が公表していない本当の欠勤理由を知る手がかりを得るためにシャーロック・ホームズのようになることを求めていない」と述べました。

 

「片頭痛があります」

裁判所は、従業員が片頭痛と発作について伝えた上司へのテキストメッセージは、FMLA休暇の延長が必要であることを雇用主に通知するには不十分であると判断しました。「原告のテキストメッセージは単に休暇を取ることを被告に伝えており、深刻な健康状態のために休暇の延長を要求するものではなかった」と裁判所は述べました。

 

ポイント

雇用主は、マネージャーと従業員がFMLAに適切に対応できるよう体制を整える必要があります。

 

マネージャーがFMLAに関する従業員の権利と義務を理解できるようトレーニングを行う

従業員が休暇の連絡にテキストメッセージ、メール、インスタントメッセージを使用するようになったため、この問題はさらに大きくなっています。共有された情報の内容にかかわらず、FMLAの対象となる可能性のある状況を特定し、すぐに人事部または休暇管理者に問い合わせるようマネージャーをトレーニングする必要があります。

・勤務報告について明確なルールを示す

従業員が休暇申請を行う際には、人事部がFMLAに関する判断を行うのに十分な情報を収集できるよう、従業員に休暇の理由を具体的に説明すること、電話で伝えることを義務付けます。たとえば、マネージャーまたはチームリーダーへの電話を1回、人事部または会社の休暇管理者への電話を1回、と計2回の電話をしないといけないというルールを導入することを検討してください。

・従業員に対する教育を行う

従業員が教育を受けることなくFMLAとその要件を理解することは期待できません。Department of Laborの従業員向けのFMLAガイド*2を従業員に提供し、読んでいただくことを検討してください。この小冊子は従業員のFMLAにおける権利だけでなく、FMLAの対象となる理由での休暇が必要な場合に従業員が負う義務についても説明しており、実際面で非常に優れています。

 

*1 Family and Medical Leave Act(FMLA)とは?

・1993年8月5日に施行された連邦法で、一定の条件を満たした従業員に対して、①1年間で最?12週間の無給休暇の取得、②休暇期間中の健康保険の維持、③休暇前に従業員が就いていたポストまたは同等のポストへの復職させる義務を雇用主に負わせる法律。一定の条件の中には、出産または養子縁組、健康を害して重度の状態にある配偶者・近親者のケア、従業員自身が深刻な健康状態を理由に就業できない、家族の出兵に伴う事態への急な対応が含まれている。

・従業員が①12ヶ月以上の雇用期間があること、②休暇開始前年に最低1,250時間の就業があること、③50人以上の従業員を雇用している職場の半径75マイル以内で雇用されていることの3つ条件を満たした場合に対象となる。

・当該法律に違反した場合には従業員からの訴訟を受ける可能性があり、慎重な対応が必要。

・全米従業員の約6割、約9,000万人の従業員がFMLAの対象となっており、年間約1,400万人の従業員が当該法律に基づいた休暇を利用している。

*2 FMLAガイド:https://www.dol.gov/sites/dolgov/files/WHD/legacy/files/employeeguide.pdf

 

こちらの記事の原文(英語版)はhttps://www.absencementor.blog/blogs/2023/09/19-1になります。

 

※上記内容は弊社グループのMatrix Absence Management社のBlogの内容をサマリー・説明を追加したものです。具体的な状況に応じた法的助言または判断は弁護士等にご相談下さいますようお願い申し上げます。

 

この記事に関してご質問は、Reliance Standard Life Insurance Companyまで、お気軽にお問い合わせください。

 


 
【執筆】
 

中村 淳(Jun Nakamura)

National Marketing Liaison

Reliance Standard Life Insurance Company

 
 
【プロフィール】
 

2015年東京海上日動に入社し、東京、名古屋で法人営業を経験。

2022年より東京海上グループのReliance Standardに出向し、東京海上アメリカと共に北米で事業展開する日系企業様の従業員福利厚生保険・休職管理の構築をサポートしています。

 

【会社情報】

<Reliance Standard>

社名:Reliance Standard Life Insurance Company

本社所在地:1700 Market Street, Suite 1200, Philadelphia PA, 19103

担当:中村 淳

事業内容 :

北米の企業様向けに従業員福利厚生保険・休職管理サービス、個人向けに年金を提供しています。

FMLAを始め、Americans with Disabilities Actなどの連邦法や最近動向が激しい州によるPaid Leave法などに対応する休職管理サービス(Absence Management)を提供しています。また企業様が手配する従業員のための福利厚生保険を提供しています。

E-mail:jun.nakamura@rsli.com

URL:https://www.reliancestandard.com/home/

 

<東京海上アメリカ>

社名:東京海上アメリカ(英名:Tokio Marine America)

本社所在地:499 Washington Boulevard, Suite 1500, Jersey City NJ, 07310

担当:長田 一優

事業内容 :

北米で事業展開する日系企業様向けに各種損害保険やリスクマネジメントサービスを全米50州で提供しています。また、日本と異なるリスクの存在する米国において、新規進出、既進出の企業様が安心して事業を行えるようサポートしています。

E-mail:kazumasa.nagata@tmamerica.com

URL:https://www.tmamerica.com/

 
 

 

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