【アメリカの人事部】あなたの学びを邪魔するもの

 

 

【アメリカの人事部】あなたの学びを邪魔するもの

 

AIに雇用を奪われる。

 

誰もが遠くないと予想した未来は、あっという間に現実になりました。2023年9月24日の日本経済新聞は、米雇用調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが、同社の実施するレイオフ調査の解雇理由の項目に「AI」を加えたと報じました。さらに、AIを解雇理由に選んだ米国企業を集計すると、2023年1~8月に約4,000人がレイオフされたことになります。(※1)この数字は全体の1%弱の規模だそうですが、この比率は、これからどこまで上がっていくのでしょうか。

 

「最も強いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残る」

 

これは、『種の起源』の著者として有名なチャールズ・ダーウィンの言葉といわれますが、劇的なスピードで変化する今の時代を生きる我々にも当てはまる、普遍的な言葉といえるでしょう。

 

改めて注目したい「ラーニングアジリティ(学習の機敏性)」

 

ラーニングアジリティ(学習の機敏性)という言葉があります。この言葉を広く世に知らしめた人材コンサルティング会社のコーンフェリーは、ラーニングアジリティを次のように定義しています。(※2)

 

Ability and willingness to learn from experience, and then apply that learning to perform successfully under new situations.

 

経験から学び、その学びを新しい状況で成功裏に活用する能力と意欲(筆者訳)

 

ラーニングアジリティの定義を他にもいくつかあたりましたが、共通するのは「経験から学び、認識・捉え方を更新し、行動変容を機敏に選択する姿勢」ということです。

 

私は、このラーニングアジリティが「変化に敏感なものとして生きる」ための鍵を握るのではないかと考えています。環境から学び続けることを可能にするには、変化に敏感でいる必要があるからです。

 

では、ラーニングアジリティを鍛えるために、私たちには何ができるでしょうか。

 

 

ラーニングアジリティが高いという思いこみ

 

ラーニングアジリティをどう鍛えていくかを同僚と話しているときに、相手がふと口にしました。

 

「私たちコーチも、クライアントであるリーダーたちも、『自分はラーニングアジリティが高い』と思いこんでいる方が多いように思います」

 

真偽はさておき、少なくとも私はこの言葉を聞いてドキリとしました。まさに「私はラーニングアジリティが高い」と思っていたからです。

 

この同僚の言葉をきっかけに、実は自分が変化を拒んでいることはあるかを考え始めました。そして頭に浮かんだのが「部下の開発」というテーマです。

 

私は「部下の開発」に自信をもってきました。書籍などを通して貪欲に学ぶだけでなく、実際に部下と関わる時間を多くとるなど、人並み以上に部下の開発に時間をあててきた自負があります。その意味では「ラーニング」を続けてきた領域です。実際に成功体験もたくさんありますし、過去に上司・同僚・部下本人からも称賛の言葉をもらってきました。

 

しかし、部下の開発に携わってきたこの10年余の中で、うまく羽ばたいてもらうことのできなかったメンバーもいました。名前を思い浮かべながら人数を数えてみると、その数は決して少なくありません。

 

上司からそのことを指摘されたこともあります。上司は私のマネージャーとしての成長を支援しようとしてくれたのだと思いますが、私には上司の言うことの意味がわかりませんでした。

 

「部下の開発については学び続けているし、実際に自分の元で育った部下もたくさんいる。うまくいかなかったのは、彼らにプロとして仕事する気持ちがないからだ」

 

私の頭に浮かぶのはそんなセリフばかりでした。

 

しかし、ラーニングアジリティという概念に触れたとき、私の頭の中で初めて「自分は本当に間違っていないのか?」という問いが生まれました。

 

 

変化を阻んでいるもの

 

「部下の開発」に関して、自分なりのこだわりがあることに自覚はありました。しかし、こだわりがあるのも大事なことだと考えてきました。

 

とはいえ、冷静に振り返れば、うまくいかなかったケースは「部下の開発の失敗」以外の何ものでもありません。

 

上司は私にそのことから学んでほしいと思っていたのでしょう。それでも私は「失敗」に向き合おうとしてきませんでした。成長の材料、変化のきっかけを手にしながら、それを無視してきたのです。それはさながら、事故を起こしたにもかかわらず、それに気づかずに車を運転し続けるようなものです。

 

そこまで考えて、私はもしかしたら自分のこだわりに固執して、変化を拒んでいるのかもしれないと思い至りました。

 

「失敗から学ぶ」とよく言いますが、「失敗」を認めることができなければ、そこから学ぶことはできません。私は過去に起こしてきた事故を振り返り、部下へのアプローチを変え始めました。

 

しかし、やり方を変えてもうまくいくとは限りません。もし失敗したら、結局過去のやり方に戻ることになるのではないか。そんな気もし始めました。

 

 

あなたが固執しているものは何か

 

「もしいま試しているやり方で成果が出なかったら、結局以前のやり方に後戻りしてしまうかもしれない。それでいいのだろうか?」

 

そう思ったときに、初めて自分が本当に固執しているものが見えてきました。

 

私には、部下にこんなふうに成長してもらいたい、その人たちとこんなふうに仕事をしたいというチームのビジョンがあります。そこにたどり着くために、部下にはこういう体験をしてほしい、と思ってきました。なぜなら、自分がそうやって成長してきた実感があるからです。過去の上司の関わりに価値を感じ、その体験を大切に思っている私は、自分の部下にもそれを味わってほしいと思ってきました。

 

しかし、目指す場所にたどり着くための道は、本当にその一本しかないのでしょうか?

 

私がこれまで学びながら取り組んできたのは、自分が「これだ」と信じた道を、いかにいい道にするかということでした。ほかの道を探そうとはしてこなかったのです。

 

こうしてみると、ラーニングアジリティを邪魔するものは、実は自分が心から信じ、大切にしているものの中に潜んでいるのかもしれません。

 

あなたが仕事上で大切にし、こだわっていることはなんでしょう?

 

そして、その確からしさを健全に疑い、最後にアップデートしたのはいつでしょう?

 

 

【参考資料】

※1 「『AI失業』米国で現実に 1?8月4000人、テックや通信」、日本経済新聞、2023年9月24日

※2 Korn Ferry, ”What's Smarter than IQ? Learning Agility

 

※この記事に関してのご質問は、(株)コーチ・エィ(https://www.coacha.com/inquiry/)まで、お気軽にお問い合わせください。 

 

 

【出典】

(株)コーチ・エィ(https://www.coacha.com/)

Hello, Coaching!  (https://coach.co.jp/)

Coach's VIEW (https://coach.co.jp/view/20231004.html)

あなたの学びを邪魔するもの (https://coach.co.jp/view/20231004.html)(2023年10月04日掲載)より 

 

 


 

 

【筆者】

栗井智希

株式会社コーチ・エィ 

 

【プロフィール】

上智大学法学部国際関係法学科卒業。コンサルティングファームにて、構想策定・BPR・ITシステム導入などのプロジェクトに幅広く従事。大小さまざまな組織の立ち上げに関わり、業績を上げやすい組織風土は、トップ主導の元、組織の構成員が一体となって創りあげていることを痛感。企業の業績向上の一端を担いたいと考え、コーチ・エィへ入社。コーチとして大企業の経営層・幹部層を中心に150名を超えるクライアントと共に活動。同時に、日本を代表する企業グループ数社におけるプロジェクト責任者を担当している。コミュニケーションが秘めている可能性をひらいていくことを目指し、コーチングの実践と学習の両輪をおもしろがりながら、日夜積み重ねている。

 

 

 


 

 

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