【アメリカの人事部】アメリカから学ぶ日本のハラスメント問題と対応

 

 

【アメリカの人事部】アメリカから学ぶ日本のハラスメント問題と対応

最近、日本で「〇〇ハラ」という単語を耳にする頻度が高くなっている傾向があります。直近では、2020年6月にでき、2022年4月から中小企業にも適用となるパワハラ防止法などもあり、就労中の不平等や理不尽に対する社会の目が厳しくなる一方で、「何をしてもハラスメントと言われてしまう」状況も発生しかねないといった意見も時折聞こえて来ます。

また、例えばパワハラ防止法に関しては、行政の方で具体的な内容を決めているというよりは、各企業が方針や措置を定める事になっている点や、問題が発生した際には企業側に責任はあるものの罰則は無いという事で、対応に悩まれるご担当者の方も多いのでは無いでしょうか。そこで、今回は「雇用に対する不平等 (Discrimination)に関して先進国とも捉えられるアメリカではどの様になっているのか」という事を整理すると同時に、日本での方針や措置を考える際のポイントを考察してみました。

 

ハラスメントの定義

アメリカでは、ハラスメントは雇用法によって定義されているという認識で、例えばセクシャルハラスメント(以後セクハラ)に関しては、代償型のセクハラであるQuid Pro Quoや環境型のセクハラであるHostile Environmentなどいった形で「職場のセクシャルハラスメント (Workplace Sexual Harassment)と定義されています。ポイントは「違法となる職場でのセクハラがどういったものなのか」という事や、「それに対してどういった事をすると違反となるのか」といった事がある程度明確になっている部分が挙げられます。

また、セクハラに関しては、州や市などの行政によって法律が定められている場合も多く、細かい内容はそれぞれ異なっており、例えば「遡って苦情が挙げられる期間がどの程度なのか」「問題があった際の調停が禁止なのか」また「ハラスメント防止研修の義務化の有無」など様々なものがあります。ただし、方針を含めた規定のサンプルや、研修内容のサンプルなども行政が作成しているため、企業はその内容を調整する形で適用させる流れとなっています。つまり、組織ごとに微調整は行うものの、基本的に「解釈の違いは無い状態となっている」部分がポイントとなるのだと考えられます。

 

問題の防ぎ方

ハラスメントの定義や企業に求められている内容がある程度明確だったとして、それはどの様に防がれているのでしょうか。一つは行政が作っている規定を調整して社内で周知徹底しているという部分もありますが、アメリカではハラスメントに限らず、社内での不平等を認めない体制を取っている部分が大きいと考えられます。それは、アメリカではもともと「雇用に対する不平等を禁止する」という事がTitle VII of the Civil Rights Act of 1964  (Title VII: 公民権法第七編)という法律によって定められており、人種・宗教やその宗教上の信念・肌の色・出身国・年齢・家系・国籍・婚姻ステータス(ドメスティックパートナーやシビルユニオンなども含む)・性別(性自認や表現なども含む)・障がい・兵役・遺伝情報(変則的特徴のある細胞や血液なども含む)などが対象となり、その対象は年々増えている傾向にあります。また最近では、賃金の不平等や、犯罪履歴に対する雇用時の不平等などに関しても注目度が上がっています。この「雇用に対する不平等」というのは、雇用関連の意思決定者が従業員や採用候補者を不平等に扱うのを禁じているという事で、採用時の判断だけでなく、現在就労している従業員の昇給や昇格・解雇など多岐に渡って不平等を禁じているものになります。

その様な中で、まず会社がこういった法律を守れなかった場合の罰則がある事から始まり、それに従って社内でそれを守れない人がいた場合には懲戒処分の対象となるといった「ペナルティが明確」という部分と共に、「従業員サイドに相談や申し立てをする経路がある」という部分がポイントになります。例えば、各社の相談経路が「Open Door Policy」などによって明確になっており、社内にはHR (Human Resources≠人事)という部署や役割があってこの様な「雇用に対する不平等」を取り締まっている事、そして社外に強力な相談先であるEEOC (Equal Employment Opportunity Commission=雇用機会均等委員会)やDOL (Department of Labor=労働省)があり、それによって社内外で問題を防ぐ構造がある程度できていると考えられます。

もちろん、日本は「上下関係のパワーバランスが大きい」事や、「雇用主の都合で解雇ができない」などといった、文化的背景あるいは社会/ビジネス構造の部分も多少なりとも影響を及ぼしているかと思いますが、今回はその点に関しては言及しません。

 

問題へ対応とHR(Human Resources ≠ 人事)の重要性

前述の通り、アメリカの「ハラスメント」や「雇用に対する不平等」に関しては、行政が内容や罰則をある程度明確にしている事や、何よりも社内でそれを防ぐ役割が確立している事が、問題回避や正しい対応をする上で不可欠なものとなっています。行政の部分は各社の取り組みによって変わる物では無いかもしれませんが、社内に関しては取り組める事が多いはずなので、まずは、それを「誰が」「何を参考に」「どの様に」取り組むのかという事を明らかにする事が重要です。

取り組みの中で明らかにすべき要素としては、①ハラスメントに関する方針やルール、②相談経路や窓口、③相談を受けた際の対応手順や方法、④改善処置のガイドライン、⑤ペナルティといったものが挙げられますが、つまり、これを「誰が」「何を参考に」「どの様に」取り組むのかを明確にする事が第一歩という事になります。

社内で発生する問題の窓口もそうですが、こういった事は、全て「HR」という専門分野の領域に入るため、この機会に、皆さまの組織の中のHRの役割やその重要性に関して今一度見直されてみてはいかがでしょうか。

 

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【執筆】    

 

SolutionPort, Inc.

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Kimihiro Ogusu, SHRM-SCP、中央大学非常勤講師

Email :contact@solution-port.com  

 

【プロフィール】

全米HRマネジメント協会の上級プロフェッショナル認定資格、および医療/生命保険ライセンスを保有する、Human Resources分野のエキスパート。また、中央大学の教員としてHR関連の授業も担当中。


全米各地の日本商工会議所やJETRO、日本ではVenture Café TOKYOや大学などで講演を重ねる他、メガバンクのサイト・MUFG Bizbuddyで大好評連載中。

アメリカと日本双方の義務教育を始め、日本にあるベンチャー/上場企業、日本に本社を置く米国法人、アメリカにあるローカルの日系企業、および純米系企業や外資系大手コンサルティングファームの勤務経験があり、日米における文化の違いを熟知するバイリンガル。中央大学経済学部卒。  

 

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