【アメリカの人事部】大量退職時代に従業員を惹きつける401(k)プラン

 

     

 



   

大量退職時代に従業員を惹きつける401(k)プラン

 

2021年の後半より、労働者の大量退職の傾向が多数のメディアによって取り上げられるようになり、それはThe Great Resignation-大量退職時代と呼ばれ、雇用主にとって大きな心配の種となってきました。世界最大級のビジネス特化型ソーシャル・ネットワーキング・サービスのLinkedInでも私は辞めました!と発言するユーザーが増え始め、中には上司との間でやり取りしたメールやテキストを公開し、職場のストレスや不満を抱えている他社の従業員と共感しあう発言もありました。これらの発言の信憑性は確信できませんが、ドミノ効果のように次から次へ同じような発言が現れました。更に2021年8月には米国で過去最高の430万人の労働者が仕事を辞めました。これは米国労働統計局が離職率を統計し始めてから21年間で過去最高の従業員の離職と退職の数を表しております。

 

世界経済の全体的な不安定さとは反対に従業員は大量辞職を計画しており、最近のResume Buidler.com(オンライン履歴書作成会社)の調査では労働力の15%以上が2022年末までに仕事を辞める計画があると指摘しております。

 

新入社員の入社準備には職位に応じて、従業員の年間給与の16%から213%のコストがかかると言われております。多くの日系企業は従業員を常に採用し続ける余裕がありません。高い離職率が今後も続けば採用コストや新入社員の研修や準備に伴う生産性コストが企業の収益にネガティブな影響を与えて行く可能性があります。この為、企業は優秀な人材を維持し、新しい人材を惹きつける為に戦略を変更する必要があります。

 

従業員が退職する理由は多数ありますが、最も一般的に引用される要因に賃金の低さや停滞、401(k)福利厚生の欠如、安全性の懸念(COVID-19) 、ワークライフバランスの欠如、ストレスの多い職場環境、過少評価などがあります。

 

また多くの若者は社会保障制度(SSN)への不安やリタイアメントプランを提供する仕事が比較的少ない為、金銭面で将来に不安を感じています。従って従業員の忠誠心を高めるインセンティブが少なく、契約労働に流れていく傾向があります。論理的に考えて、企業が私の将来の為に貯蓄するのを手伝ってくれないのなら、なぜここで働かなければいけないのかと考え出す従業員が増えています。これはパンデミックにより引き起こされた現象とも言えます。

 

 

広範囲に渡る従業員に対する福利厚生は離職率を減少させるのに効果がある

 

特に日系企業は、選択肢の多い従業員をアメリカ企業と競い合わなければなりません。雇用主がどのようにして魅力的な従業員を入社させ長期間勤務を維持させることができるのでしょうか?現在インターネットを通じて単発の仕事を受注できるギグエコノミーという働き方も選択肢にあります。このようなギグエコノミーの求人と優秀な人材を競い合う為には、ギグエコノミーでは得られない現代的な福利厚生パッケージを通じた長期的な財政安定性を提供することです。

 

多くの労働者にとって、401(k)プランは福利厚生パッケージの中でも最も魅力的なベネフィットです。メットライフが実施した調査では、従業員の60%が、リタイアメントプランが新規雇用を検討する際の重要な要素であると述べています。

 

全ての401(k)プランは同等でなく、各企業様により大幅に内容は異なります。ここで大切なのは、企業にとって候補者と現在の従業員に最適な401(k)プランを提供する事がとても重要な項目となります。

 

ここで最近のトレンドをご紹介します。

 

加入期間

新規採用従業員に即時に401(k)プランに加入権を与える企業が増えております。

即時に401(k)に加入する事によって、設定された期間(3か月ー1年)を無駄にすることなく引き続き退職金を転職後も貯蓄する事ができます。即時加入することによって、オンボーディングの際に401(k)プランにサインアップする可能性が高くなるため、従業員全体の参加率を向上させることができます。また、以前の会社で利用していた401(k)プランをそのまま即時新しいプランに時差がなく移行することができるのも魅力的です。

 

低コスト投資物の提供

現在401(k)プランでは投資物の主な種類はミューチュアルファンドになります。企業は提供する投資物を選択する際に、フィディシーリー受託信認義務があります。従業員の利益を最優先に考えコストや運用率が適切な投資物を提供する義務があります。最近人気のある低コストインデックスファンド(ETF)を提供することで、従業員はより多くの収益を維持でき退職後の資金を多くの手数料が引かれることがありません。手数用の1%の違いでさえ、長期間でみると数十万ドルの差に上る可能性があります。

 

雇用主のマッチング

マッチングは従業員の401(k)参加を促進し、彼らの退職後の貯蓄を増やし、自社の401(k)プランの魅力を高めることができます。401(k)マッチングは本質的には金銭的な報酬であり、税金が繰り延べられるという利点があり、多くの従業員は給料やボーナスの一部と考えていることが多いです。米国労働統計局による全国報酬調査によると、雇用主の41%が0~6%、10%が6%以上のマッチングを提供しております。

 

 

ファイナンシャルウエルネスプログラムの活用

 

ファイナンシャルウエルネスプログラムは様々なワークショップを通じて従業員の財務健全性を向上させることができます。ジョンハンコック社が行った調査によると、アメリカ人の49%が十分な退職後の貯蓄がないことを心配し、雇用主は財政上のストレスが従業員の生産性にネガティブな影響があると報告しています。更に福利厚生研究所(Employee Benefit Research Institute) が500社の401(k)プランに対して2021年に行った調査によりますと、ファイナンシャルウエルネスプログラムを利用している企業は従業員の401(k)プランの参加率と拠出額を高める効果があると報告しています。多くの401(k)プランのアドバイザーはファイナンシャルウエルネスプラグラムの提供を行っております。

 

従業員の財務健全性は企業の成功に直接結びついています。彼らにとって有益な401(k)プランを提供することは従業員の忠誠心を高め企業の成功に従事していることを確認するための効果的な方法です。現在の従業員にアンケートをとり、自社の401(k)の満足度を理解する事も重要な事かもしれません。この機会に現在のプランを見直し、自社の従業員に最適な401(k)プランを提供してはいかがでしょうか?

 

 

※この記事に関してのご質問は、エドワードジョーンズまで、お気軽にお問い合わせください。

 

 


 

【筆者】

 

 

吉川 真弓

エドワードジョーンズ

ファイナンシャルアドバイザー

www.edwardjones.com/mayumi-flesner

E-mail: mayumi.flesner@edwardjones.com

Phone: 630 -836 -8988

 

[プロフィール]

ファイナンシャルアドバイザー、米国証券外務、投資アドバイザー有資格者。 イリノイ大学MBA卒業 。2018年より米証券会社エドワードジョンズ にて401Kなどのリタイアメントプラン管理、 資産運用を手掛ける。特に401Kプランの 従業員への教育に力を入れており、定期的に 勉強会を開始している。

 

 


 

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【バックナンバー】  

No.1 日本の人事について、トランプ政権発足以降のビザ取得の状況

No.2 人事が知っておくべき高額医療/消費者保護法(CCPA)施行/感染症対策

No.3 コロナウィルス拡大で米国CDCも推奨「在宅勤務」について/シックリーブ

No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A

No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ

No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について

No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ

No.8  出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順

No.9    Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答

No.10  コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから

No.11  移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報

No.12 失業保険の不正受給が急増/評価制度Q&A

No.13 職場におけるコロナ関連訴訟/ オフィス対策/ 感染テスト

No.14  ジョブ型?メンバーシップ型?/自主隔離を終了させる新たなガイドライン

No.15   CA州無給休暇と収入保障/強い企業になる!ブラックスワン比較とは

No.16   ポストコロナの新入社員研修/最新移民法/リモート採用注意点/失業率の推移、学校再開Q&A

No.17   訴訟が多いワースト10/コーチングの活用目的

No.18   緊急有給シックリーブ法の改定/リモートでのコミュニケーション

No.19   各州の雇用に必要な給与額/従業員が感染!会社としての対策とは

No.20   2021年は2.6%昇給すべきか?!/採用もマーケティングと同じ

No.21   バイデン新政権誕生で変わる今後の雇用情勢/H1b申請新基準

No.22   企業が提供する祝日と割合/オンラインホリディパーティゲーム9選

No.23  医療費は上がり続けるのか?

No.24  2021年有給シックリーブ法/何はなくともブランディング

No.25  グラフで振り返る2020年/新世代のコミュニケーションCPaaSとは

No.26  ワクチン接種を強制しますか?/H-1Bビザ抽選プロセスの変更案について

No.27  大統領令と法律の違い/医療費控除を最大に/州政府の仕事を請け負うには

No.28  従業員ベネフィットのトレンド/COVID後のオフィスデザイントレンド

No.29  COVID-19救済法と人事関連情報/コミュニケーションは進化する/音声メディアを考えてみる

No.30  2021年ハンドブック更新の拠り所/まだ間に合う!節税のためのIRA/クラウドサービス利用の秘訣

No.31  大麻使用許可による職場規定とドラッグテストの影響/永遠に勝てる組織を作るには

No.32  あなたの給料はAIが決めてもよいか?/駐在員が絶対に知らないといけない個人税務知識

No.33  アメリカの失業保険制度と給付金/最近のアメリカ移民法事情/日本帰国のポイント  

No.34  リモートワークでの雇用と離職について/短期の離職を抑えるためにできること/音声メディアを考えてみる Part:2

No.35  CA州はマスクを外せないのか?/ここだけは押さえておきたいIRS

No.36  新法HERO Act法とは?/「小さな物語」が組織を変える

No.37  学生スポーツのビジネス化/ リモート、ハイブリッドでの新人教育

No.38  なぜ過去の給与履歴を質問してはいけないのか?/ オンラインビジネスの主な形態  

No.39  来るべき人材採用難と従業員の離職対策/ 新しい「働く」をデザイン-オフィス再開に向けて-/ 「日本型」ジョブ型雇用が抱える課題 

No.40  出張の回復は2024年/ 予定納税ってなに?自分には関係ある? 

No.41  日本にあってアメリカにないものは?/変化の時代ころ「パーパス」について語り合う

No.42  リモートワーク下での人事評価/ 駐在者へのトレーニング

No.43  2019年からの求人数・雇用数の推移/駐在員のジレンマ~相手の価値観と自分の価値観~/米国大使館のEビザ申請の現状

No.44  2022年のSalaryトレンド。インフレ+人手不足で昇給率は更に上がるか?/コロナ後の新しい雇用のカタチ/アメリカ進出!BtoBマーケティングの基本となる8つのポイント

No.45  ワクチン接種を拒む従業員への対応/昇給・給与設定にありがちな問題!~問題を回避する秘訣とは?!~/クラウド時代のネットワークを実現するSecure Access Service Edge(サシー)

No.46  雇用者数の推移と、重要な数値/GILTI(米国外軽課税無形資産所得)とFDII(外国稼得無形資産所得)

No.47  2022年カリフォルニア州の人事関連 新しい法律

No.48  コロナ禍によるパワーシフト | その会議に心理的安全性はありますか?

No.49  各州での最低賃金の上昇 | 日系企業の意識改革の試み

No.50  評価制度を止めた企業はどうなったか? | H-1B、E、Lビザ配偶者の就労許可について

No.51  2022年は日系企業のDEI元年| 個人の確定申告で注意すべき4つのポイント

No.52  健康保険加入でCOVID-19の自宅検査キットが無料に | 人材難が続くアメリカのGreat Resignation~いま何が起こっているのか~

No.53  2022年アメリカの物価上昇と昇給への影響は? | あなたは、どのように組織に「社会化」していますか?

No.54  複雑化し、高度化するアメリカHR  | リモートワークと企業文化の維持~アポロ宇宙船基地のトイレ清掃員の目的意識と通ずるところ

No.55  COVID-19以降のキャリアとライフスタイル | アフターコロナ新たな課題~人材採用で一役買うかもしれない新たなサービス~

No.56 【報酬】募集広告にサラリーレンジの開示義務(アメリカ流ジョブ型雇用義務化の流れ) | 日米税務当局間の金融口座に関する情報交換

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No.60  Exempt 従業員は時間管理が出来るのか? | 「急がば回れ」が機能するとき

No.61 7月1日からStandard Mileage Rateが変更 | サイバーセキュリティリスクへの法的対応~事前準備の重要性~

No.62 ジョニー・デップとアンバー・ハードの裁判からHRは何を学ぶか? | 大量退職時代を乗り越えるために知っておくべき総報酬(Total Reward)の基本

No.63 COVID-19 に感染した従業員に対するアップデート | 人事訴訟と米国の差別解消への動き 

No.64 夢遊病とAmericans with Disability Act(ADA: 障がいを持つアメリカ人法)|  「リタイヤ前にやるべきだった・・・」後悔トップ10<日米比較>

No.65 カリフォルニア州 Paid Family Leave利用した従業員一人につき最大$2,000の給付金 | E-1 VISAの申請方法の説明

No.66 セクハラ防止トレーニングは継続しなければならない | なぜ、あなたは部下の話が聞けないのか?

 

 


 

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