【アメリカの人事部】なぜ、あなたは部下の話が聞けないのか?

なぜ、あなたは部下の話が聞けないのか?
人の話を聞くのが下手だから、傾聴のスキルを学ぶ。
質問ができないから、質問のスキルを学ぶ。
「弊社のマネージャーは、部下の話を全然聞かないんです。だから、傾聴を中心にコーチングのスキルトレーニングをしてください」
人事部、研修部の担当者からよく聞く話です。
ところが、トレーニング実施後しばらく経ってからどのくらいコーチングが行われているかを調べてみると、ほとんどの場合、継続的に実行している人はごくわずか。
スキルを学んだとしても、そのスキルを使わない、使えない。結果としてコミュニケーションは変わらない、ということが起こります。
問題なのはスキルなのか?
ある営業マネージャーの言葉です。
「お客さんの話は聞けるんだけど、部下の話を聞けない」
お客さんの話を聞けるということは、聞くスキルはもともとあるということです。スキルはあるのだから、部下の話を聞くことができるはずです。しかし、できない。それはなぜなのか?
大きな理由の一つは、コミュニケーションの目的といえるでしょう。お客さんの話を聞くときと、部下の話を聞くときはおそらく目的が違う。
私たちが交わすコミュニケーションは、その目的によって変化します。たとえば、部下とのコミュニケーションの目的が「目標達成に向けて相手を指示通りに動かすこと」であれば、
・詳しく説明する
・相手が理解できているか確認する
というコミュニケーションをとるでしょう。
しかし、目的が「目標達成に向けて何をすればいいかを一緒に考えること」に変われば、
・相手の意見を聞く
・自分の意見を言う
・さらに何をしたらいいかディスカッションする
というように、実際の相手とのコミュニケーションも変わるでしょう。
それで、「お客さんの話は聞けるが部下の話は聞けない」。
ということは、もしコミュニケーションの目的を切り替えることができれば、部下の話もお客さんと同じように聞くことができる、ということです。
ところが、実際はそんな簡単にはいきません。
コミュニケーションを阻害する「無意識の目的」
「コミュニケーションの目的を変えましょう」
たとえ「その通りだ」と思ったとしても、実際に切り替えるのは難しいものです。
それはなぜか? 私たちがコミュニケーションの目的を切り替えることを阻害しているのは何なのでしょうか。
それは、私たちの「無意識の目的」です。意識的に持とうとするコミュニケーションの目的を、「無意識の目的」が上塗りしてしまうのです。
無意識の目的は、上司の不安から生まれるのかもしれません。上司と部下はほとんどの場合、目標を共有しています。さらに、上司は部下の育成に責任を持っていることも多い。共同責任を負っている。そこがお客さんとは違います。
お客さんとは距離を持って客観的になれるけれど、部下とは共同責任を負っているので、同化してしまって客観的に距離が持てない。
上司の思うとおりに目標に向けて順調に進捗していればいいのですが、思い通りのことが起こっていないとき、不安に駆られて相手へのリスペクトが消える。いつのまにか目的がすり替わってしまうのです。
部下と話しながら、上司の内側では、
「まだやっていないのか?」
「何回言ったらわかるんだ?」
「このままでうまくいくのか?」
「間に合うのか?」
という問いが駆け巡る。
これでは部下の話を聞けなくなるのは当然です。
部下の話を聞くためには、この不安から来る自動的な問いに身を任せるのではなく、そうしている自分の状態に気づく必要があります。
私は今どこにいてどこに行こうとしているのか?
それはやりたいことなのか?
それは何のためにやるのか?
それは誰のためにやるのか?
こうした問いは、自分自身の状態を「止まって観るための問い」です。
コミュニケーションを変えるということは、スキルを覚えて、それを使うことではありません。
世のマネージャーは、すでにスキルを持っています。
だからこそ、そのスキルを発揮できる状態をつくる。
そのために、自分を止まって観る。
自分を止まって観るための問いを自分に投げてみる。
コミュニケーションを変えることは組織を変えること
そもそも私たちはなぜ、組織の中の関わり、コミュニケーションを変えようとするのでしょうか。
上司の部下育成の能力を高めることで組織全体のパフォーマンスを上げたい。
社員のエンゲージメントを高めて、離職率を下げたい。
理由はいろいろあれど、私たちはどこかで、コミュニケーションや関わりがよくなることは、組織にとって「よいこと」だと思っています。
それはなぜか。
急激な環境の変化、予測不可能な未来。このような状況の中で、組織を存続、発展させるために、組織は自ら変革し続ける必要があります。
組織の活動はコミュニケーションによって成り立っています。したがって、組織の中のコミュニケーションが変わるということは、まさに組織が変わるということです。
私たちが組織に身を置く理由は、一緒に考えたり、誰かとコラボレーションしたりすることであることは自明のことです。ところが気づくと一人になっていることがある。
部下の話を聞くためには、「無意識の目的」に自分を乗っ取らせないようにしなければなりません。
そのために、あなたはどんな問いを自分の内側にもちますか?
※この記事に関してのご質問は、(株)コーチ・エィまで、お気軽にお問い合わせください。
【出典】
(株)コーチ・エィ
Hello, Coaching!
Coach's VIEW
なぜ、あなたは部下の話が聞けないのか?
(2022年08月10日掲載)より
【筆者】
桜井一紀
株式会社コーチ・エィ
執行役員
国際コーチング連盟マスター認定コーチ
一般財団法人生涯学習開発財団認定マスターコーチ
K.I.T.虎ノ門大学院イノベーションマネジメント専攻客員教授
[プロフィール]
日本大学大学院史学専攻修士課程修了。東京都公立中学校にて教員として勤務後、コミュニケーション研修の講師を10年間務める。1997年に株式会社コーチ・トゥエンティワンの設立、また、2000年に特定非営利活動法人日本コーチ協会の設立に参画。2018年4月より現職。経営層を対象としたエグゼテクィブ・コーチングを中心に、数多くの企業や団体の組織開発に携わる。2011年4月、K.I.T.虎ノ門大学院イノベーションマネジメント専攻客員教授に就任。
【著書】
『一流のリーダーほど、しゃべらない』(すばる舎)
●「アメリカの人事部」ニュースレターのお申込み
クイックUSAは「アメリカの人事部」を発足し、在米日系企業様向けにニュースレターを配信させていただいております。アメリカでビジネスを遂行していくために、必ず知っておかなければならない法律、人事・労務、ビザなどの最新ニュースを定期的にお届けしております。
「アメリカの人事部」のニュースレターをご希望の企業様は、下記までお気軽にお申し付けください。 「アメリカの人事部」のニュースレターお申込みご希望の方はお手数ですが、会社名、ご担当者様氏名、役職、電話番号、会社のご住所、E-mailアドレスを明記の上、下記E-mailアドレスまでご連絡くださいますようお願いいたします。
E-mail:info-usjinjibu@919usa.com
「アメリカの人事部ニュースレター」のバックナンバーをご希望の方は、 E-mail:info-usjinjibu@919usa.com まで、 ご希望のナンバーをお気軽にお知らせください。
【バックナンバー】
No.1 日本の人事について、トランプ政権発足以降のビザ取得の状況
No.2 人事が知っておくべき高額医療/消費者保護法(CCPA)施行/感染症対策
No.3 コロナウィルス拡大で米国CDCも推奨「在宅勤務」について/シックリーブ
No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A
No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ
No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について
No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ
No.8 出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順
No.9 Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答
No.10 コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから
No.11 移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報
No.12 失業保険の不正受給が急増/評価制度Q&A
No.13 職場におけるコロナ関連訴訟/ オフィス対策/ 感染テスト
No.14 ジョブ型?メンバーシップ型?/自主隔離を終了させる新たなガイドライン
No.15 CA州無給休暇と収入保障/強い企業になる!ブラックスワン比較とは
No.16 ポストコロナの新入社員研修/最新移民法/リモート採用注意点/失業率の推移、学校再開Q&A
No.17 訴訟が多いワースト10/コーチングの活用目的
No.18 緊急有給シックリーブ法の改定/リモートでのコミュニケーション
No.19 各州の雇用に必要な給与額/従業員が感染!会社としての対策とは
No.20 2021年は2.6%昇給すべきか?!/採用もマーケティングと同じ
No.21 バイデン新政権誕生で変わる今後の雇用情勢/H1b申請新基準
No.22 企業が提供する祝日と割合/オンラインホリディパーティゲーム9選
No.23 医療費は上がり続けるのか?
No.24 2021年の有給シックリーブ法/何はなくともブランディング
No.25 グラフで振り返る2020年/新世代のコミュニケーションCPaaSとは
No.26 ワクチン接種を強制しますか?/H-1Bビザ抽選プロセスの変更案について
No.27 大統領令と法律の違い/医療費控除を最大に/州政府の仕事を請け負うには
No.28 従業員ベネフィットのトレンド/COVID後のオフィスデザイントレンド
No.29 COVID-19救済法と人事関連情報/コミュニケーションは進化する/音声メディアを考えてみる
No.30 2021年ハンドブック更新の拠り所/まだ間に合う!節税のためのIRA/クラウドサービス利用の秘訣
No.31 大麻使用許可による職場規定とドラッグテストの影響/永遠に勝てる組織を作るには
No.32 あなたの給料はAIが決めてもよいか?/駐在員が絶対に知らないといけない個人税務知識
No.33 アメリカの失業保険制度と給付金/最近のアメリカ移民法事情/日本帰国のポイント
No.34 リモートワークでの雇用と離職について/短期の離職を抑えるためにできること/音声メディアを考えてみる Part:2
No.35 CA州はマスクを外せないのか?/ここだけは押さえておきたいIRS
No.36 新法HERO Act法とは?/「小さな物語」が組織を変える
No.37 学生スポーツのビジネス化/ リモート、ハイブリッドでの新人教育
No.38 なぜ過去の給与履歴を質問してはいけないのか?/ オンラインビジネスの主な形態
No.39 来るべき人材採用難と従業員の離職対策/ 新しい「働く」をデザイン-オフィス再開に向けて-/ 「日本型」ジョブ型雇用が抱える課題
No.40 出張の回復は2024年/ 予定納税ってなに?自分には関係ある?
No.41 日本にあってアメリカにないものは?/変化の時代ころ「パーパス」について語り合う
No.42 リモートワーク下での人事評価/ 駐在者へのトレーニング
No.43 2019年からの求人数・雇用数の推移/駐在員のジレンマ~相手の価値観と自分の価値観~/米国大使館のEビザ申請の現状
No.44 2022年のSalaryトレンド。インフレ+人手不足で昇給率は更に上がるか?/コロナ後の新しい雇用のカタチ/アメリカ進出!BtoBマーケティングの基本となる8つのポイント
No.45 ワクチン接種を拒む従業員への対応/昇給・給与設定にありがちな問題!~問題を回避する秘訣とは?!~/クラウド時代のネットワークを実現するSecure Access Service Edge(サシー)
No.46 雇用者数の推移と、重要な数値/GILTI(米国外軽課税無形資産所得)とFDII(外国稼得無形資産所得)
No.47 2022年カリフォルニア州の人事関連 新しい法律
No.48 コロナ禍によるパワーシフト | その会議に心理的安全性はありますか?
No.49 各州での最低賃金の上昇 | 日系企業の意識改革の試み
No.50 評価制度を止めた企業はどうなったか? | H-1B、E、Lビザ配偶者の就労許可について
No.51 2022年は日系企業のDEI元年| 個人の確定申告で注意すべき4つのポイント
No.52 健康保険加入でCOVID-19の自宅検査キットが無料に | 人材難が続くアメリカのGreat Resignation~いま何が起こっているのか~
No.53 2022年アメリカの物価上昇と昇給への影響は? | あなたは、どのように組織に「社会化」していますか?
No.54 複雑化し、高度化するアメリカHR | リモートワークと企業文化の維持~アポロ宇宙船基地のトイレ清掃員の目的意識と通ずるところ
No.55 COVID-19以降のキャリアとライフスタイル | アフターコロナ新たな課題~人材採用で一役買うかもしれない新たなサービス~
No.56 【報酬】募集広告にサラリーレンジの開示義務(アメリカ流ジョブ型雇用義務化の流れ) | 日米税務当局間の金融口座に関する情報交換
No.57 DEIのEを知る | 職場で気を付けたい年齢発言
No.58 幅広いメンタルヘルスのベネフィット | 1on1で対話をすると組織の何が変わるのか? ~4ヶ月で起こせる変化~ | カナダ、メキシコ国籍保有者がアメリカ就労を可能にする専門職ビザ ”TNビザ”とは
No.59 リモートワークは是が非か? | アメリカの安全な都市。テキサス州のフリスコ市とマッキーニ市が1位2位!
No.60 Exempt 従業員は時間管理が出来るのか? | 「急がば回れ」が機能するとき
No.61 7月1日からStandard Mileage Rateが変更 | サイバーセキュリティリスクへの法的対応~事前準備の重要性~
No.62 ジョニー・デップとアンバー・ハードの裁判からHRは何を学ぶか? | 大量退職時代を乗り越えるために知っておくべき総報酬(Total Reward)の基本
No.63 COVID-19 に感染した従業員に対するアップデート | 人事訴訟と米国の差別解消への動き
No.64 夢遊病とAmericans with Disability Act(ADA: 障がいを持つアメリカ人法)| 「リタイヤ前にやるべきだった・・・」後悔トップ10<日米比較>
No.65 カリフォルニア州 Paid Family Leave利用した従業員一人につき最大$2,000の給付金 | E-1 VISAの申請方法の説明
【アメリカでのご採用をご検討中の企業様へ】
★採用でお困りなことはありませんか?
クイックUSAでは、アメリカでのご採用のお手伝いをしています。
フルタイム、パートタイム、派遣等、御社のご採用のお手伝いをさせていただきます。
お気軽に下記までご連絡ください。
●人事・労務関連のご相談にも応じております。
クイックUSAではハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成、セクハラ防止セミナーの開催など、 人事労務関連のご相談も承っております。内容、お見積りなど何でもお気軽に下記までご相談ください。
QUICK USA, Inc.
[New York Office ](Headquarters)
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
[Los Angeles Office ]
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[Dallas Office ]
5851 Legacy Circle, Suite 600, Plano, TX 75024
Email:quicktx@919usa.com
Phone: 469-626-5265
【アメリカでのご転職・就職をお考えの方へ】
★アメリカでのお仕事探し、就職・転職はクイックUSAにお任せください。
弊社のサービスにご登録がお済みでない方は、まずは英文履歴書のご登録をお願いいたします。
www.919usa.comより、オンライン登録をしていただくか、
quick@919usa.comまでE-mailにて英文履歴書を添付ファイルにてお送りください。
折り返しご連絡させていただきます。
※クイックUSAではニューヨークとロサンゼルスを拠点に全米で、留学生や社会人の求職者に対してアメリカでの就職・転職のお手伝いをしています。ご紹介しているお仕事は、金融、会計、IT、輸出入、人事、営業など多岐に渡ります。
雇用形態はお仕事をお探しの方のライフスタイルに合わせて、 フルタイムのお仕事とテンポラリーのポジションをご紹介。 クイックUSAでは経験豊富なリクルーターが、求職者の皆様一人ひとりのご希望などを伺いアメリカでのキャリアプランを一緒に考えさせていただいています。 アメリカでお仕事をお探しであれば、アメリカ求人多数のクイックUSAに是非ご登録ください!(無料)
★★クイックUSAにレジュメのご登録がまだの方は、今すぐご登録ください!★★

クイックUSAでは、ご登録者の方に対して無料のキャリアカウンセリングを実施しています。
★★Emailにてレジュメを送るだけで登録完了のエクスプレス登録もご利用いただけます!★★
アメリカで現在お仕事をされている方、OPTや学生の方など、現在アメリカに住んでいらっしゃる方へ
アメリカでのご転職・就職で何かご質問がございましたら下記よりご連絡ください。

[New York Office ](Headquarters)
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
[Los Angeles Office ]
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[Dallas Office ]
5851 Legacy Circle, Suite 600, Plano, TX 75024
Email:quicktx@919usa.com
Phone: 469-626-5265