【アメリカの人事部】リモートワークは是が非か?

 

   

 

 

 

リモートワークは是が非か?

 

 SHRMが調査したリモートワーカーのスーパーバイザーの3分の2以上、つまり67%は、リモートワーカーはオンサイトワーカーよりも簡単に他の人に代替可能と回答。62%は、フルタイムのリモートワークが従業員のキャリア目標に有害であると考えているという。72%は部下全員がオフィスで働くことを望んでいると言う。

 

▼出所:SHRM Research Reveals Negative Perceptions of Remote Work

July 26, 2021

https://www.shrm.org/about-shrm/press-room/press-releases/pages/-shrm-research-reveals-negative-perceptions-of-remote-work.aspx

 

 

リモートワークはマイナスが多い

 一方従業員側は、リモートワークが有益でパフォーマンスを向上させると回答する人が多いが、半数以上がリモートで永続的に作業すると、ネットワーキングの機会が減少し(59%)、仕事上の関係が損なわれ(55%)、勤務時間が長くなる(54%)と述べている。

 

このような状況の中、リモートワークを続けたいと希望する従業員を説得してオフィスワークに戻すための施策も必要だろう。このようなリモートワークのマイナス面についても説明する(客観的な情報)も役に立つかも知れない。

・リモートワーカーの51%は、リモートで作業するために必要な機器や家具に100ドルから499ドルを費やしたと述べている。(仕事に必要な経費は精算する必要がある州があるため州法を確認する必要がある)

・設備や家具にお金を費やした遠隔地の労働者の61%は、自腹で設備を購入していた。

・監督者の67%は、オンサイトの労働者よりもリモートの労働者の監督に多くの時間を費やしていると述べている。

・スーパーバイザーの42%は、タスクを割り当てるときにリモートワーカーのことを忘れることがあると述べている。

・在宅勤務者の34%は、恒久的にリモートで働くことで、利用できるキャリアの機会の数が減ると述べている。

・リモートワーカーの29%は、リモートで作業している間は開発の機会が少なくなると述べている。

 

 

リモートワークとオフィスワークの報酬差をつける場合

また、リモートワークとオフィスワークの報酬の差がつくことがあるかもしれない。この場合、リモートワークとオフィスワークの仕事の違い(Job Descriptionの違い)について明示しておくことが必要だろう。

 

リモートワークでは明らかにオフィスワークよりも仕事の幅が狭い、あるいは仕事内容に求められる役割が少ない等文書で明示できる差が報酬(固定報酬)の違いを説明可能な状態にすることが必要だ。

 

成果が上がらない場合の変動報酬はリモートであってもオフィスワークであっても報酬差をつけることは可能だが、まったく同じ仕事内容で経験やスキルも同じ場合は、固定報酬での差をつけることが差別になる可能性があるため、注意が必要だ。

 

 

リモートワークとオフィスワークの待遇差をつける場合

出勤する従業員と在宅だけの従業員と有給休暇等のベネフィットでの区別をすることも可能である。

 

この考え方は部門別にベネフィットや報酬構成が異なるのと同じ意味合いとなる。

(例えば、工場部門のベネフィットとセールス部門のベネフィットが異なるということはありえる)

 

注意すべき点は結果として在宅従業員が女性だけになり出社する従業員が男性だけというような環境になる場合、結果として差別的なベネフィットだとComplainや問題になる可能性があるということだ。

 

同人種、民族、肌の色、出身国、宗教等の偏りがある場合も注意が必要である。

 

 

他州へ引っ越した場合

また、リモートワークで他州に引っ越したりする場合には、他州へPayrollのプロセスを移したり、他州の労働法に従った対応(Employee Handbookの修正等も含め)がHRには必要になる。

 

他州に移る場合には、他州の報酬市場の相場に合わせて、報酬を調整することも考えられる。

 

例えば、Googleはシリコンバレーから他州でリモートワークする従業員の報酬をカットする方針を打ち出した際にニュースになっている。所謂、地域の報酬市場に合わせた報酬調整を行ったということだ。仕事が同じであっても住む場所によって物価も異なり、報酬の市場も異なることが理由である。下げ幅は最大で25%になると報道されている。

 

▼Googleのリモートワーク報酬削減について(SHRM)

https://www.shrm.org/resourcesandtools/hr-topics/compensation/pages/google-renews-location-based-pay-debate.aspx

 

▼Googleのリモートワーク報酬削減について(Reuters)

https://www.reuters.com/world/the-great-reboot/pay-cut-google-employees-who-work-home-could-lose-money-2021-08-10/

 

 

ガソリン価格の急騰によりリモートワークで通勤コストを軽減

一方、特にカリフォルニア州はガソリン価格が急騰。インフレと相まって、ロシアのウクライナ侵攻も重なり、ガソリン価格は1ガロン$6程度まで上がっている。(2022年5月)

 

この状況を受けて毎日オフィスワークに戻す予定だった企業が週2日、週3日だけの出勤に切り替えたところもある。これにより、少しでも自動車通勤によるコスト負担を軽減しようというものだ。

 

また同じ会社でも部署やポジションにより在宅勤務、出社と分かれる事もある。
出社する従業員向けに通勤費用相当のHazard手当等のFlat Bonusを支給することは可能である。

例えば、出社する従業員は月額$500のFlat Bonusを出すということは考えられる。
(この費用は課税対象になると思われる。尚、税金について専門的なアドバイスはCPA等に相談することをお勧めしたい。Non-Exempt の場合はFlat Bonusがひと月単位の場合、その月の残業代の計算をFlat bonusを含めて再計算する必要がある。各州の残業代計算の基本給算定額が異なる場合があるので、州法に注意が必要である)

 

まさに不透明な時代、HRも柔軟性と知恵を絞り出す必要があると実感している。

 

 

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【執筆】
 
 
Philosophy LLC
President
山口 憲和   (Norikazu Yamaguchi)
Email:yamaguchi@yourphilosophy.net  
 
 
【プロフィール】
MBA, SHRM-SCP
CA Insurance License: 0F78137
日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ 会員番号463
 
群馬県高崎市出身
2000年より米国型人事コンサルティングを行う。
2004年からロサンゼルスに拠点を移し、日系企業を中心に500社以上のコンサルティングを経験。米国人事に欠かせない保険のライセンスも取得し米国人事のサポートを行っている。
また、米国人事プロフェッショナルとしての資格 SHRM-SCP=SHRM(Society for Human Resource Management=米国人材マネジメント協会)Senior Certified Professionalを取得。  
 
 
(学歴 )
群馬県立高崎高等学校卒業
東京外国語大学 外国語学部 
中国語学科卒業 中国 復旦大学 国際文化交流学院修了
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 修士課程修了(MBA)  
 
 
(職歴) 全日本空輸株式会社(ANA) Mercer Human Resource Consulting等を経て現職  
 
 
(共著書)
A&R優秀人材の囲い込み戦略A&R優秀人材の囲い込み戦略  
 
 
 
【会社情報】
Philosophy LLC
Philosophy Insurance Services
所在地:609 Deep Valley Drive, WEST TOWER Suite 358
Rolling Hills Estates, CA 90274  
*2022年1月よりオフィスを移転しました。/Moving to New Office
URL:philosophyllc.com/
TEL  310-465-9173  
 
 
 
【事業内容】
日系企業向け人事コンサルティング・保険代理店業務  
 
 
免責事項:山口憲和は、この記事の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、この記事の内容は 法的助言として解釈できません。 不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。 この電子記事上の情報は、ガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。  
 
 
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