【アメリカの人事部】2022年は日系企業のDEI元年

 

 

 

 

 

2022年は日系企業のDEI元年

 

2022年1月は世界中でオミクロン株蔓延のニュースで幕を開けたような感覚がいたしますが、感染が先行していた南アフリカやイギリスでは、すでにピークアウトが起こり、感染も下火になりつつあります。ニューヨークをはじめアメリカの東部地域でもピークアウトの傾向が見えてきており、今後新たな変異株の再来がなければ、脅威をもたらした新型コロナもパンデミックからインフルエンザのようなエンデミックにその姿を変え、収束に向かうことが期待されます。そこで、今回はコロナ関係の話は横において、別の角度からのお話としてこの2022年のアメリカのHRについての展望を皆様にシェアさせていただきたいと存じます。

 

別の角度からと申し上げましたのは、アルファベット3文字を使ったDEIです。これは“Diversity, Equity & Inclusion”の略になります。日本語にしにくい単語が入っているのですが、あえて訳してみますと、「多様性、公平性、包括性」となるでしょうか。多様性と公平性というのは、日本でもときどき使われている言葉ではありますが、では包括性というのはどうでしょうか?あまり聞きなれない言葉ですよね。少なくとも日常会話の中で使われている言葉ではないと思います。つまり、これらの言葉は多くの日本人にとってもいまだ馴染みの薄い言葉でしかありません。

 

そこで日本語に翻訳した言葉にして使うのではなく、そのまま英語でお使いになり、あえて英語のままでご理解していただくのがむしろ理にかなっているように思われます。最初は英語でお使いいただき、のちにフィットする適正な日本語が生まれてくるかもしれません。それだけ、まだまだ日本では目新しい言葉であり概念であるかといえます。ですが、アメリカではコロナ禍とほぼ軌を同じにして、広く深く浸透してきた言葉であり、概念であります。ちょうど日本では、はやり言葉のようにESGであるとかSDGsであるとかのアルファベット3文字がメディアではもてはやされています。恐らく多くの日本人の方々にとっては、これらの3文字は馴染みのあるアルファベットの組み合わせだと察しますが、逆にほとんどのアメリカ人には聞いたこともない文字の組み合わせです。その意味では、日本のESG/SDGsとほぼ対照となりますのがこのDEIだといえなくもないと思います。

 

さて、日本人の方々には言わずもがなかも知れませんが、ESGは“Environment, Social, Governance”の略で、主に企業投資する際のひとつの新たな投資指標です。もうひとつのSDGsは“Sustainable Development Goals”の略で、持続可能な開発目標を指しています。日本では「エスディジース」と呼ばれていますが、もともと国連が2015年9月に取りまとめた2030年までの17項目からなる達成目標設定から成り立っています。企業投資に関係がない人々や国連活動やその決議に関心を持たない一般のアメリカ人にとってはまず記憶に残ることのないアルファベットの3文字です。では一方のDEIはどうでしょうか。ESG/SDGsに比べれば、多くのアメリカ人にとっては身近に感じられるトピックでありますので、仮にその3文字の省略が何であるかを知らなくとも、Diversity, Equity & Inclusionだといえば、アメリカでは皆ピーンとくるのではないでしょうか。

 

とりわけESG/SDGsもDEIも企業活動の中で自社の重要な行動指針を反映している概念であり、目標設定になるものであると申し上げられます。建国以来、移民を受け入れ移民で成り立ってきたこの多民族国家であるアメリカでは、DEIは企業にとっても常に避けて通ることの出来ないクリティカルなテーマではなかったでしょうか。それは基本的にアメリカに進出している日系企業様にとってもほぼ同じことがいえるかと思うのですが、アメリカに現地法人を作って進出しても従業員はほぼローカルの日本人や日系人だけであったり、せいぜい(日本語が出来る)アジア系アメリカ人を採用している程度であれば、今までDEIは喫緊の課題ではなかったといえるのかもしれません。

 

それでも従業員の枠も今後拡張していく中では日本人や日本語だけに重きを置いて募集をかけるのはいずれ限界が来てしまうと考えられますし、企業の顧客や取引先、そしてステークホルダーなどは、日本人関係者だけに限ることは当然出来なくなります。するとどうしたって遅かれ早かれDEIの課題に直面するときが来るのは自然の成り行きだといえるのではないでしょうか。日本でDEI、その中でもとりわけダイバーシティというとほぼ女性の活用、中でも女性の採用数や管理職への比率がイメージされるかもしれませんが、アメリカのダイバーシティは女性はもちろんのこと、性別(ジェンダー)、人種、民族、肌の色、宗教、出身国、市民権、障害者、軍出身者、性的指向など非常に多岐にわたるダイバーシティがそこには存在しています。それらのカテゴリーに位置づけされている人々はアメリカの中では法律上でのプロテクションがかけられていますので、企業は雇用上、それらを理由とした差別やハラスメント、そして報復措置などをとることは一切許されていません。

 

ただし、この企業のDEIは単に法律でプロテクトされているからというよりももっと多くの奥深い問題を内在しています。しかも建国以来、歴史的にも黒人に対する深刻な人種差別が存在し、それは今現在も根深く残っています。そのような連綿と続く人種差別を歴史上経験してこなかった日本人にはなかなか実感としてわかり得ないところがあるのは事実だと思います。それでもアメリカにお越しになって企業経営なされている日本人の方々にもアメリカのDEIのトレンドや思考には少なくとも無関心を貫くというのはあまり褒められた話ではないと考えます。ESG/SDGsに高い関心を示されている日系企業の皆様方には、同じくこのDEIにつきましても今年は関心を持っていただきたいと存じます。2022年は、本コラムの中でもDEIについての記事をたびたび掲載してまいりたいと思いますので、スキップなさらずお目を通してみてください。日系企業様にとりましても今年2022年をDEI元年の年にできれば、少なくともDEIが何を意味しているかがピンとくる年になっていただくことを願っております。

 

 

※この記事に関してのご質問は、Pacific Dreams, Inc.まで、お気軽にお問い合わせください。  

 


 

  【執筆】

   

 

Pacific Dreams, Inc.

President & CEO

酒井謙吉 Ken Sakai

8532 SW St Helens Dr. Wilsonville, OR 97070

www.pacificdreams.org

Email : kenfsakai@pacificdreams.org

Phone: 503-783-1390  

 

【プロフィール】

信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。

   


 

●「アメリカの人事部」ニューレターのお申込み

クイックUSAは「アメリカの人事部」を発足し、在米日系企業様向けにニュースレターを配信させていただいております。アメリカでビジネスを遂行していくために、必ず知っておかなければならない法律、人事・労務、ビザなどの最新ニュースを定期的にお届けしております。

 

「アメリカの人事部」のニュースレターをご希望の企業様は、下記までお気軽にお申し付けください。   「アメリカの人事部」のニュースレターお申込みご希望の方はお手数ですが、会社名、ご担当者様氏名、役職、電話番号、会社のご住所、E-mailアドレスを明記の上、下記E-mailアドレスまでご連絡くださいますようお願いいたします。 

 

E-mail:info-usjinjibu@919usa.com  

 

     

 

「アメリカの人事部ニュースレター」のバックナンバーをご希望の方は、 E-mail:info-usjinjibu@919usa.com まで、 ご希望のナンバーをお気軽にお知らせください。  

 

【バックナンバー】  

No.1 日本の人事について、トランプ政権発足以降のビザ取得の状況

No.2 人事が知っておくべき高額医療/消費者保護法(CCPA)施行/感染症対策

No.3 コロナウィルス拡大で米国CDCも推奨「在宅勤務」について/シックリーブ

No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A

No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ

No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について

No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ

No.8 出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順

No.9    Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答

No.10  コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから

No.11 移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報

No.12 失業保険の不正受給が急増/評価制度Q&A

No.13 職場におけるコロナ関連訴訟/ オフィス対策/ 感染テスト

No.14  ジョブ型?メンバーシップ型?/自主隔離を終了させる新たなガイドライン

No.15  CA州無給休暇と収入保障/強い企業になる!ブラックスワン比較とは

No.16 ポストコロナの新入社員研修/最新移民法/リモート採用注意点/失業率の推移、学校再開Q&A

No.17 訴訟が多いワースト10/コーチングの活用目的

No.18 緊急有給シックリーブ法の改定/リモートでのコミュニケーション

No.19 各州の雇用に必要な給与額/従業員が感染!会社としての対策とは

No.20 2021年は2.6%昇給すべきか?!/採用もマーケティングと同じ

No.21 バイデン新政権誕生で変わる今後の雇用情勢/H1b申請新基準

No.22 企業が提供する祝日と割合/オンラインホリディパーティゲーム9選

No.23 医療費は上がり続けるのか?

No.24 2021年有給シックリーブ法/何はなくともブランディング

No.25 グラフで振り返る2020年/新世代のコミュニケーションCPaaSとは

No.26 ワクチン接種を強制しますか?/H-1Bビザ抽選プロセスの変更案について

No.27 大統領令と法律の違い/医療費控除を最大に/州政府の仕事を請け負うには

No.28 従業員ベネフィットのトレンド/COVID後のオフィスデザイントレンド

No.29  COVID-19救済法と人事関連情報/コミュニケーションは進化する/音声メディアを考えてみる

No.30  2021年ハンドブック更新の拠り所/まだ間に合う!節税のためのIRA/クラウドサービス利用の秘訣

No.31 大麻使用許可による職場規定とドラッグテストの影響/永遠に勝てる組織を作るには

No.32  あなたの給料はAIが決めてもよいか?/駐在員が絶対に知らないといけない個人税務知識

No.33  アメリカの失業保険制度と給付金/最近のアメリカ移民法事情/日本帰国のポイント  

No.34  リモートワークでの雇用と離職について/短期の離職を抑えるためにできること/音声メディアを考えてみる Part:2

No.35  CA州はマスクを外せないのか?/ここだけは押さえておきたいIRS

No.36  新法HERO Act法とは?/「小さな物語」が組織を変える

No.37  学生スポーツのビジネス化/ リモート、ハイブリッドでの新人教育

No.38  なぜ過去の給与履歴を質問してはいけないのか?/ オンラインビジネスの主な形態  

No.39  来るべき人材採用難と従業員の離職対策/ 新しい「働く」をデザイン-オフィス再開に向けて-/ 「日本型」ジョブ型雇用が抱える課題 

No.40  出張の回復は2024年/ 予定納税ってなに?自分には関係ある? 

No.41  日本にあってアメリカにないものは?/変化の時代ころ「パーパス」について語り合う

No.42  リモートワーク下での人事評価/ 駐在者へのトレーニング

No.43  2019年からの求人数・雇用数の推移/駐在員のジレンマ~相手の価値観と自分の価値観~/米国大使館のEビザ申請の現状

No.44  2022年のSalaryトレンド。インフレ+人手不足で昇給率は更に上がるか?/コロナ後の新しい雇用のカタチ/アメリカ進出!BtoBマーケティングの基本となる8つのポイント

No.45  ワクチン接種を拒む従業員への対応/昇給・給与設定にありがちな問題!~問題を回避する秘訣とは?!~/クラウド時代のネットワークを実現するSecure Access Service Edge(サシー)

No.46 雇用者数の推移と、重要な数値/GILTI(米国外軽課税無形資産所得)とFDII(外国稼得無形資産所得)

No.47  2022年カリフォルニア州の人事関連 新しい法律

No.48 コロナ禍によるパワーシフト | その会議に心理的安全性はありますか?

No.49 各州での最低賃金の上昇 | 日系企業の意識改革の試み

No.50 評価制度を止めた企業はどうなったか? | H-1B、E、Lビザ配偶者の就労許可について

 


 

【アメリカでのご採用をご検討中の企業様へ】

 

★採用でお困りなことはありませんか?

クイックUSAでは、アメリカでのご採用のお手伝いをしています。

フルタイム、パートタイム、派遣等、御社のご採用のお手伝いをさせていただきます。

お気軽に下記までご連絡ください。  

 


 

●人事・労務関連のご相談にも応じております。

クイックUSAではハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成、セクハラ防止セミナーの開催など、 人事労務関連のご相談も承っております。内容、お見積りなど何でもお気軽に下記までご相談ください。  

 

QUICK USA, Inc.

 

[New York Office ](Headquarters)

8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018

Email:quick@919usa.com

Phone: 212-692-0850  

 

[Los Angeles Office ]

1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504

Email:quickla@919usa.com

Phone: 310-323-9190  

 

[Dallas Office ] 

5851 Legacy Circle, Suite 600, Plano, TX 75024 

Email:quicktx@919usa.com

Phone: 469-626-5265 

 


 

【アメリカでのご転職・就職をお考えの方へ】

 

アメリカでのお仕事探し、就職・転職はクイックUSAにお任せください。

弊社のサービスにご登録がお済みでない方は、まずは英文履歴書のご登録をお願いいたします。

www.919usa.comより、オンライン登録をしていただくか、

quick@919usa.comまでE-mailにて英文履歴書を添付ファイルにてお送りください。

折り返しご連絡させていただきます。  

 

※クイックUSAではニューヨークとロサンゼルスを拠点に全米で、留学生や社会人の求職者に対してアメリカでの就職・転職のお手伝いをしています。ご紹介しているお仕事は、金融、会計、IT、輸出入、人事、営業など多岐に渡ります。  

 

雇用形態はお仕事をお探しの方のライフスタイルに合わせて、 フルタイムのお仕事とテンポラリーのポジションをご紹介。 クイックUSAでは経験豊富なリクルーターが、求職者の皆様一人ひとりのご希望などを伺いアメリカでのキャリアプランを一緒に考えさせていただいています。 アメリカでお仕事をお探しであれば、アメリカ求人多数のクイックUSAに是非ご登録ください!(無料)  

 


 

★★クイックUSAにレジュメのご登録がまだの方は、今すぐご登録ください!★★

 

 

 

クイックUSAでは、ご登録者の方に対して無料のキャリアカウンセリングを実施しています。
★★Emailにてレジュメを送るだけで登録完了のエクスプレス登録もご利用いただけます!★★

         

 

 

アメリカで現在お仕事をされている方、OPTや学生の方など、現在アメリカに住んでいらっしゃる方へ
アメリカでのご転職・就職で何かご質問がございましたら下記よりご連絡ください。

 

 

   


 

[New York Office ](Headquarters)

8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018

Email:quick@919usa.com

Phone: 212-692-0850  

 

[Los Angeles Office ]

1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504

Email:quickla@919usa.com

Phone: 310-323-9190  

 

[Dallas Office ] (2022年1月1日開設)

5851 Legacy Circle, Suite, TX 75024

Email:quicktx@919usa.com

Phone: 469-626-5265 

 


 

    

 
クイックUSAでは、LinkedinLINE、InstagramFacebookTwitterでも情報発信をしています。是非、フォローお願いします。