【アメリカの人事部】評価制度を止めた企業はどうなったか?

 

   

 

 

 

評価制度を止めた企業はどうなったか?

 

8年前頃からAdobe、Deloitte、 GEといった大企業から始まった「評価制度」の廃止。大企業から始まり、少しずつ中小企業にもその動きは広がってきている。弊社にも「まだ評価制度を導入していないので、これから導入したいのですが・・・」という相談が来るが、実は「評価制度を止めていくトレンドがあるのですよ」と説明をすると多くの企業さんが「いいえ、うちはまだそこまでいっていないので、まずは評価制度を導入したいのです」と主張される方も多くいらっしゃるのが現実だ。

 

 

評価制度を止めて何を行っているのか?

評価制度を止めた企業はどのように上司が部下と向き合っているのだろうか?

年に1回の業績評価を止めて、より頻繁な上司と部下のミーティング、より多くの目標設定(少ない目標を短期間にクリアしていく方法)、および継続的な対話による、より非公式なアプローチが行われているようだ。

具体的に導入している企業では、年に1回のミーティングの代わりに上司は部下に対して「仕事の期待、進歩、発展についてより頻繁で意味のある会話をする」ようにHRがアドバイスしているようだ。実際にこのアプローチにより、エンゲージメントとパフォーマンスが向上しているという調査結果が出ている。

 

 

マネジャーはコーチとして部下に接する

マネジャーは、コーチと同じように、客観的かつ主観的な観点から部下を見る必要がある。頻繁に行われるミーティング時に、マネジャーは従業員が得意なこと、彼らが気にかけていること、そして彼らの目標と夢が何であるかを知る必要だろう。部下と接する時に長期的で頻繁にコミュニケーションをとる関係を築けということだ。

頻繁なミーティングを「チェックイン」と呼ぶ会社もあるが、ある企業では2-4週間ごとにチェックインを行うようになったという。 あるマネジャーは5人の部下をもっていて、年初にまずは目標を立てる。そして2-4週間ごとに頻繁に「チェックイン」を行う。

通常30分で行う頻繁な会議「チェックイン」は、それらの目標と目的に基づいて、何がうまくいっていて何がうまくいかないかを議論するための時間となる。上司と部下は一緒にソリューションを構築する機会を創る。

そして、より頻繁なチェックインは双方向の方法であり、従業員は上司と会社全体にフィードバックを与えることもできると言う。

 

 

年に1回のミーティングとはどんな会議だったのか?

 一方、年に1回のレビューとはどんなミーティングだっただろうか?ある企業では年に1回のレビューは、自分の仕事が標準に達していないと思っていた従業員にとっては驚きであり、不快なものであることが多かったと語っている。

年次レビューは、本質的に、従業員にとって一方的で神経質なものであることが分かったそうだ。多くの場合「ここで、過去12か月間のあなたとあなたの業績に関するすべてを確認します。1時間あります。」という会話が年に1回繰り広げられる。評価制度を運営しているあなたも身に覚えがないだろうか?

 

 

OKRとCFRでチェックイン

ここまで話をお聞きになって、「あ、このコンセプトは3年前くらいから頻繁に耳にするようになったOKRとCFRに似ているな」と思った方もいらっしゃるだろう。

OKRはもともと1980年代にインテルで実践されてからシリコンバレーを中心に広がってきたMBO(Management by Objective=目標設定制度)に代わるコンセプトだ。

OKRとは Objective + Key Resultの省略のことである。その特徴は下記のような点だ。

・ObjectiveとKey Result(KPIを定めてゴールを噛み砕いたマイルストーンを設定する)

・2週間に1度等頻度の高いコーチングによりCFR(Conversation, Feedback and Recognition) を続けながら目標達成に導く。

 

 

MBOとOKRの違い

それではMBOとOKRはどこが違うのだろうか?

下記は簡単な比較表だ。特に大きな違いは結果評価を報酬に結びつけないという点だ。

そして、今回の記事で紹介したような2-4週間ごとの頻繁なミーティングでOKRをベースにCFR(Conversation/Feedback/Recognition)を進めていく。

 

 

▼OKRとMBOの違いは動画でも説明をしているので、よろしければ御覧下さい。

https://youtu.be/rqh-eTBiOKQ

 

 

OKRの事例

下記は3年前からのOKRブームを創り出したJohn Doerrの“Measure What Matters”の運営するWebサイトで出している事例だ。下記はHRのOKRのサンプルである。

 

Hire 10 new employees by end of March.(3月末までに10名雇用する)

 

KR1


Develop an annual hiring plan by end of February.(2月末までに年間の採用プランを策定する)

 

KR2


Onboard 2 recruiting agencies for Engineering and Sales hiring by February 15th.(2月15日までに2つの人材紹介会社からエンジニアとセールスを採用する)

 

KR3


Launch new careers page with employee content to improve hiring brand.(採用ブランドを高めるためのWebページを作成する)

 

KR4


Restructure employee referral program to generate 10% more referrals.(従業員からの紹介プログラムを再構築して紹介を10%増加する)

 

https://www.whatmatters.com/get-examples#HR

 

いかがだろうか?とてもシンプルな構成になっているのが分かる。このOKRをベースに頻繁にチェックインを行うということだ。

 

 

評価をせずに報酬はどうやって決めるのか?

そこで疑問になるのは評価をせずに報酬はどうやって決めるのか?ということだろう。

3つの方法がよくとられているようだ。

1.Market Rating

2.Manager Discretion

3.Shadow Rating

 

1.Market Ratingは市場の調査で出てくるデータをもとに、そのポジションの人材を市場から雇用したらいくら支払うのか?そしてボーナスはどの程度支払うのか?という観点で決定する方法だ。

2.Manager Discretionはまさにマネジャーの判断。米系の企業ではマネジャーが人件費の予算を握っていることも多いため、Managerの判断で決めるということだ。頻繁なミーティングあれば、その決定を後押しすることができるだろう。

3.Shadow Ratingは評価制度ではなく、マネジャー、あるいはマネジメントが評価を行うという方法だ。

どの方法も一長一短あるが、それでは今までの評価制度も完璧だったとは言いがたい。評価制度を止めた企業は2の方法をとっている会社が最も多いようだ。

ここ8年くらいで少しずつ広がっている評価制度なしの運営方法。御社も取り入れてみますか?

 

 

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【執筆】
 
 
Philosophy LLC
President
山口 憲和   (Norikazu (Kazu) Yamaguchi)
Email:yamaguchi@yourphilosophy.net  
 
 
【プロフィール】
MBA, SHRM-SCP, California Insurance License 0F78137,
日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ #463。
群馬県高崎市出身
2000年より米国型人事コンサルティングを行う。
2004年からロサンゼルスに拠点を移し、日系企業を中心に500社以上のコンサルティングを経験。米国人事に欠かせない保険のライセンスも取得し米国人事のサポートを行っている。
また、米国人事プロフェッショナルとしての資格 SHRM-SCP=SHRM(Society for Human Resource Management=米国人材マネジメント協会)Senior Certified Professionalを取得。  
 
 
(学歴 )
群馬県立高崎高等学校卒業
東京外国語大学 外国語学部 
中国語学科卒業 中国 復旦大学 国際文化交流学院修了
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 修士課程修了(MBA)  
 
 
(職歴) 全日本空輸株式会社(ANA) Mercer Human Resource Consulting等を経て現職  
 
 
(共著書)
A&R優秀人材の囲い込み戦略A&R優秀人材の囲い込み戦略  
 
 
 
【会社情報】
Philosophy LLC
Philosophy Insurance Services
所在地:2377 Crenshaw Blvd., Suite 315, Torrance, CA 90501
URL:philosophyllc.com/
TEL  310-465-9173  
 
 
 
【事業内容】
日系企業向け人事コンサルティング・保険代理店業務  
 
 
免責事項:山口憲和は、この記事の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、この記事の内容は 法的助言として解釈できません。 不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。 この電子記事上の情報は、ガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。  
 
 
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