【アメリカの人事部】コロナ禍によるパワーシフト

 

 

 

 

コロナ禍によるパワーシフト

 

COVID-19によるパンデミックで世界はニューノーマルに突入したといわれてすでに久しい感がいたしますが、こと雇用に関して申し上げれば2021年を通じて観察されたことは、このコロナ禍によってパワーシフトがまぎれもなくより鮮明になったということなのではないかと思います。このパワーシフトという意味ですが、雇用におけるパワーが従来は雇用主側にあったものが従業員側にシフトして移ったということであります。もちろん人を面接して雇用するかどうかを決めるのは雇用主であることに変わりはありませんが、いったん雇用した従業員に働き続けてもらう上での権利の維持や安全衛生面での確保にこれほどの配慮や規制が雇用主側に課せられたことは過去を遡ってみてもかつてなかったといえるのではないでしょうか。

 

このようなシフトを間違いなくバックアップしておりますのは、連邦や州、さらに(主に大都市圏を抱える)地方自治体から出されます、法令や規制、ガイドラインだといえます。しかもそれら法令や規制は政権交代の影響なども重なって二転三転するという展開となり、めまぐるしくアップデートがなされています。その都度、雇用主への要求も少しずつ厳しいものへとなっていき、逆に従業員にとってはセーフティネットが徐々に張り巡らされるという状況が作られてきたというのはあながち過言ではないと思います。これは現在も進行中のニューノーマルへの移行期の現実なのであり、雇用主はこのシフトにキャッチアップしていかなければ、近いうちに従業員を失うかもしれないリスクがあることを認識する必要があります。

 

昨年から今年9月初めまで続けられていた連邦から上乗せして給付されていた失業保険も、それが失効した後は急速に雇用が戻るであろうという専門筋からの予測を見事裏切る形で必ずしも雇用はすぐには回復しませんでした。つまり、いまでも仕事に復帰することをコロナ禍にあってためらっている人々が少なからずいることが認識できます。経済上はすっかり上向きで、労働市場は過熱しつづけているにもかかわらず、ほぼどの業種も職場も人手不足の状態で、コロナ禍からの回復途上で大きな足かせとなっているニュースが連日マスメディアで伝えられています。人手不足に端を発してサプライチェーンの遅延や損傷により、かつてないほどの急激な物価上昇を引き起こし、アメリカ経済は押しなべてインフレーションの波に洗われています。この物価上昇とインフレは当然のことながら従業員の賃金上昇に甚大な影響を及ぼします。

 

人材採用においても今までの賃金レベルでは応募者さえも集まらないと嘆く雇用主が少なくありません。かといって多少の賃上げ程度では応募者からは見向きもされず、焼け石に水だったという恨み節も聞こえてこようというものです。とりわけ最低賃金に近いレベルで働く従業員の多い業種(特に飲食業や小売業、サービス業など)では今や ”Turnover Tsunami”(離職の津波)に襲われているというニュースを小耳にします。まさに雇用のカードは、雇用主側から従業員側にシフトしてしまったと申し上げても皆様、合点がいくのではないでしょうか。それではこのような津波は今後とも続くものなのでしょうか?そして雇用主はいったいどのようにしてこのシフトに対応していかなければならないのでしょうか。

 

離職の津波は一時的な現象であるのかどうか、今後とも注視して見極めていかなければなりません。現在のようなインフレ状況が続く中では津波の勢いは残念ながら衰えないのではないかと私は見立てています。つまり逆算にはなりますが、行き着くところコロナの収束ができないうちはこの趨勢の収束も難しいのではないかということです。ですが、冒頭でも申し上げましたように雇用上における雇用主から従業員へのパワーシフトは一時的な現象ではなく、これは恒久的に続くものだと見なしてほぼ間違いないものだと、雇用主の方々は肝に据える必要があります。このパワーシフトの趨勢を認識することによって、従業員の立場をより親身になって深く考え、共鳴できるコミュニケーションを図れた雇用主がこの津波を乗り越えていけるのではないかとやや抽象的にではありますが、申し上げたいと存じます。

 

そのための雇用主が取れる具体的な施策などについては、また年明け以降、このコラムで綴ってまいりたいと考えています。感染力の強い新たな変異株も世界中で確認され、海外渡航などでは大きな影響が出てきていますし、人々の心理的部分や行動範囲などにも計り知れない負のインパクトをもたらします。2020年に続いてコロナ禍で終始した2021年ではありましたが、経済の回復と復興とが見えてきた年であったことは疑いようがなく、2022年に希望がつながる年ではなかったかと察します。このコラムを読んでいただいた皆様にこの1年の感謝と来たる新年の抱負とを祈願して今年最後のコラムを終えさせていただきます。どうぞよい年末年始をお迎えください。 

 

 

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  【執筆】

   

 

Pacific Dreams, Inc.

President & CEO

酒井謙吉 Ken Sakai

8532 SW St Helens Dr. Wilsonville, OR 97070

www.pacificdreams.org

Email : kenfsakai@pacificdreams.org

Phone: 503-783-1390  

 

【プロフィール】

信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。

   


 

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【バックナンバー】  

No.1 日本の人事について、トランプ政権発足以降のビザ取得の状況

No.2 人事が知っておくべき高額医療/消費者保護法(CCPA)施行/感染症対策

No.3 コロナウィルス拡大で米国CDCも推奨「在宅勤務」について/シックリーブ

No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A

No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ

No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について

No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ

No.8 出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順

No.9    Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答

No.10  コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから

No.11 移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報

No.12 失業保険の不正受給が急増/評価制度Q&A

No.13 職場におけるコロナ関連訴訟/ オフィス対策/ 感染テスト

No.14  ジョブ型?メンバーシップ型?/自主隔離を終了させる新たなガイドライン

No.15  CA州無給休暇と収入保障/強い企業になる!ブラックスワン比較とは

No.16 ポストコロナの新入社員研修/最新移民法/リモート採用注意点/失業率の推移、学校再開Q&A

No.17 訴訟が多いワースト10/コーチングの活用目的

No.18 緊急有給シックリーブ法の改定/リモートでのコミュニケーション

No.19 各州の雇用に必要な給与額/従業員が感染!会社としての対策とは

No.20 2021年は2.6%昇給すべきか?!/採用もマーケティングと同じ

No.21 バイデン新政権誕生で変わる今後の雇用情勢/H1b申請新基準

No.22 企業が提供する祝日と割合/オンラインホリディパーティゲーム9選

No.23 医療費は上がり続けるのか?

No.24 2021年有給シックリーブ法/何はなくともブランディング

No.25 グラフで振り返る2020年/新世代のコミュニケーションCPaaSとは

No.26 ワクチン接種を強制しますか?/H-1Bビザ抽選プロセスの変更案について

No.27 大統領令と法律の違い/医療費控除を最大に/州政府の仕事を請け負うには

No.28 従業員ベネフィットのトレンド/COVID後のオフィスデザイントレンド

No.29  COVID-19救済法と人事関連情報/コミュニケーションは進化する/音声メディアを考えてみる

No.30  2021年ハンドブック更新の拠り所/まだ間に合う!節税のためのIRA/クラウドサービス利用の秘訣

No.31 大麻使用許可による職場規定とドラッグテストの影響/永遠に勝てる組織を作るには

No.32  あなたの給料はAIが決めてもよいか?/駐在員が絶対に知らないといけない個人税務知識

No.33  アメリカの失業保険制度と給付金/最近のアメリカ移民法事情/日本帰国のポイント  

No.34  リモートワークでの雇用と離職について/短期の離職を抑えるためにできること/音声メディアを考えてみる Part:2

No.35  CA州はマスクを外せないのか?/ここだけは押さえておきたいIRS

No.36  新法HERO Act法とは?/「小さな物語」が組織を変える

No.37  学生スポーツのビジネス化/ リモート、ハイブリッドでの新人教育

No.38  なぜ過去の給与履歴を質問してはいけないのか?/ オンラインビジネスの主な形態  

No.39  来るべき人材採用難と従業員の離職対策/ 新しい「働く」をデザイン-オフィス再開に向けて-/ 「日本型」ジョブ型雇用が抱える課題 

No.40  出張の回復は2024年/ 予定納税ってなに?自分には関係ある? 

No.41  日本にあってアメリカにないものは?/変化の時代ころ「パーパス」について語り合う

No.42  リモートワーク下での人事評価/ 駐在者へのトレーニング

No.43  2019年からの求人数・雇用数の推移/駐在員のジレンマ~相手の価値観と自分の価値観~/米国大使館のEビザ申請の現状

No.44  2022年のSalaryトレンド。インフレ+人手不足で昇給率は更に上がるか?/コロナ後の新しい雇用のカタチ/アメリカ進出!BtoBマーケティングの基本となる8つのポイント

No.45  ワクチン接種を拒む従業員への対応/昇給・給与設定にありがちな問題!~問題を回避する秘訣とは?!~/クラウド時代のネットワークを実現するSecure Access Service Edge(サシー)

No.46 雇用者数の推移と、重要な数値/GILTI(米国外軽課税無形資産所得)とFDII(外国稼得無形資産所得)

No.47  2022年カリフォルニア州の人事関連 新しい法律

 


 

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