【アメリカの人事部】リモートワーク下での人事評価について

 

 

 

     

リモートワーク下での人事評価について  

 

アメリカではオフィスがロックダウンされ、エッセンシャルビジネスで働くエッセンシャルワーカーを除いて多くの従業員が自宅などでのリモートワークにほぼ強制的に移行という状態になってから1年半以上が経過しようとしています。なかば有無を言わさずにリモートワークに移行させられてから、従業員の生産性や士気(エンゲージメント)には何ら変わりはなかった、いやむしろ生産性や士気は上昇した、という企業の声も聞こえてくる一方で、生産性や士気は低迷し、企業業績も落ち込んだままという企業の声もあり、決して一様ではないことが感じられます。もちろん、それらは業種によって、地域によって、さらに企業規模によっても当然違いがあります。IT業界やソフトウエア業界はリモートへの職場環境にもっともスムーズに移行できた業界であったかといえるでしょう。それに対して製造現場を持つ製造業では社内でリモートできる従業員と毎日出勤しなければならない従業員とに分けられ、同じ社内での不均衡さが問題化している企業も目立っています。

 

これらリモートに移行したことによって発生している問題を数え上げれば、枚挙に暇がないのですが、その中でも共通して管理側の頭を最も悩ませているひとつにリモートワーカーの人事評価があるのではないでしょうか。前置きが長くなりましたが、本日はこの問題について取り上げてみます。おそらくコロナ禍前のオフィス勤務が当たり前であったときの評価制度を温存させて、リモートに移行してからも同じ制度で従業員を評価するというのはやはり無理があるわけです。このドラスティックにシフトした勤務環境の中で、人事評価制度の見直しがどうしても必要です。しかもこのコロナ禍は長期戦で対峙する覚悟をもたねばならず、リモートワークは一過性の流行で終わる性質のものではないことを管理側としては肝に据える必要があります。

 

では、評価制度の見直しに着手するにはどこから手をつけたらよいのでしょうか。おそらく多くの評価者は最初の一手から迷ってしまうのではないかと察します。私がお勧めしたいのは、月並みであるかもしれませんが、ジョブディスクリプションの見直しからです。コロナ禍に入って1年半が経過した中でオフィス勤務であったときとリモートワークとでの業務内容の違いもはっきりしてきた頃ではないでしょうか。このタイミングでまずはジョブディスクリプションの見直しをしてみてください。ジョブディスクリプションは評価フォームとは一線を画してはいますが、最新のジョブディスクリプションと紐付けして、評価フォームの中にある評価項目に落とし込んでいくことができるはずです。

 

その評価項目についてですが、よく巷でいわれているのは、リモートの評価はできるだけ実績や数字で評価するとよいということです。ですが、私はあえて反対意見を述べたいと思います。つまり、管理側はリモートをしている従業員がオフィスで働いていたときと比べて実際どのようにリモートワークしているのかがなかなか見えないので、だったら数字で評価しましょうと言っているに過ぎないと見えます。これでは、管理側の言い訳にしか聞こえないと私には映ります。リモートであれ、オフィスであれ、数字で評価できる点は一定であり、リモートになったからといって、数字で評価できる項目が数段増えるということなのでしょうか。従業員がタイプした文字数またはワード数の量や時間、あるいはスピードなどをモニターして、管理側に報告する機能がついたソフトなども出回っているようですが、確かにこれらのソフト機能を駆使すれば、数字は取ることができます。ただし、それらが従業員の生産性や士気の向上に直接的な相関関係があると証明できているのか、疑問を感じ得ません。

 

そこで、私としては数字には直接表わされない部分における評価をむしろリモートではウェイトをおくことをお勧めしたいと思います。リモートになっていると、そういった部分が見えないからこそ数字に比重をおくというのは一見もっともなように感じられるのですが、そこによりウェイトをおくことになると、従業員は会社からより強く管理されていると感じ、ただでさえコロナ禍で先行きの見えにくい混沌とした状況の中での不安やストレスを抱えている従業員の士気やモチベーションに暗い影を投げかけることになりかねません。リモートだから管理を強くするというのは、必ずしも適切ではないと思いますので、管理面を強くした数字中心の評価は従業員に対してあとあと禍根を残すことにつながるリスクがあることを意識していただきたいと存じます。

 

数字では直接表わせない評価項目の構築にぜひ使ってみていただきたいのが、「コンピテンシー」(Competency)です。辞書を引きますと、能力、適正、力量などの訳語が出てきますが、これは心理学用語のひとつでもあり、高成績を上げている従業員を調べてみると共通した特性や行動様式を持っていることがわかり、この高成績を生み出す人が持つ共通した特性のことをコンピタンシーと呼んでいます。コンピテンシーは、ポジションや職務内容が異なれば、やはり違いが出てきますので、最初は試行錯誤があるかもしれませんが、その職務内容に見合ったコンピテンシーを選んで評価フォームの評価項目に入れます。コンピテンシーは通常複数あり、必ずしも数が多ければよいというわけでもありませんが、10項目ぐらいまででしたら、異なるコンピテンシーを使ってみていただいて問題ないものと考えます。

 

最後にリモートワークをする従業員への評価で、最も重要であるのは評価者と従業員との間の信頼(Trust)関係の構築だと申し上げられます。信頼関係が弱ければ、どうしても管理面を強くせざるを得ないのは当然かもしれません。けれども、それは必要悪であって、本来の趣旨ではありません。リサーチ会社であるギャラップの調査によると、士気の高い従業員の96%は会社の管理側を信頼していると答えたのに対して、士気の低い従業員のそれは46%であったといいます。さらに信頼関係が高い職場においては、生産性が平均よりも50%高く、病気欠勤が13%低かったという調査結果が出ています。さらに会社を信頼している従業員のストレスレベルは74%、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥る従業員は会社を信頼していない従業員に比べてそれぞれ低かったという結果が出ています。これらの数字は、他山の石として管理者の方々の頭のどこか片隅に残しておいていただきたいと思います。

 

 

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  【執筆】

   

 

Pacific Dreams, Inc.

President & CEO

酒井健吉 Ken Sakai

8532 SW St Helens Dr. Wilsonville, OR 97070

www.pacificdreams.org

Email : kenfsakai@pacificdreams.org

Phone: 503-783-1390  

 

【プロフィール】

信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。

   


 

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No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A

No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ

No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について

No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ

No.8 出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順

No.9    Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答

No.10  コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから

No.11 移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報

No.12 失業保険の不正受給が急増/評価制度Q&A

No.13 職場におけるコロナ関連訴訟/ オフィス対策/ 感染テスト

No.14  ジョブ型?メンバーシップ型?/自主隔離を終了させる新たなガイドライン

No.15  CA州無給休暇と収入保障/強い企業になる!ブラックスワン比較とは

No.16 ポストコロナの新入社員研修/最新移民法/リモート採用注意点/失業率の推移、学校再開Q&A

No.17 訴訟が多いワースト10/コーチングの活用目的

No.18 緊急有給シックリーブ法の改定/リモートでのコミュニケーション

No.19 各州の雇用に必要な給与額/従業員が感染!会社としての対策とは

No.20 2021年は2.6%昇給すべきか?!/採用もマーケティングと同じ

No.21 バイデン新政権誕生で変わる今後の雇用情勢/H1b申請新基準

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No.24 2021年有給シックリーブ法/何はなくともブランディング

No.25 グラフで振り返る2020年/新世代のコミュニケーションCPaaSとは

No.26 ワクチン接種を強制しますか?/H-1Bビザ抽選プロセスの変更案について

No.27 大統領令と法律の違い/医療費控除を最大に/州政府の仕事を請け負うには

No.28 従業員ベネフィットのトレンド/COVID後のオフィスデザイントレンド

No.29  COVID-19救済法と人事関連情報/コミュニケーションは進化する/音声メディアを考えてみる

No.30  2021年ハンドブック更新の拠り所/まだ間に合う!節税のためのIRA/クラウドサービス利用の秘訣

No.31 大麻使用許可による職場規定とドラッグテストの影響/永遠に勝てる組織を作るには

No.32  あなたの給料はAIが決めてもよいか?/駐在員が絶対に知らないといけない個人税務知識  

No.33  アメリカの失業保険制度と給付金/最近のアメリカ移民法事情/日本帰国のポイント

No.34  リモートワークでの雇用と離職について/短期の離職を抑えるためにできること/音声メディアを考えてみる Part:2

 

No.35 CA州はマスクを外せないのか?/ここだけは押さえておきたいIRS

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No.38  なぜ過去の給与履歴を質問してはいけないのか?/ オンラインビジネスの主な形態  

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