【アメリカの人事部】日本にあってアメリカにないものは?

 

   

 

   

 

 

日本にあってアメリカにないものは?

 

~次の人事関連の事柄で日本にあって、アメリカにないものはどれでしょうか?

「昇格」「手当」「退職金」「パワハラ」「試用期間」「正社員」「雇用契約書」~

 

1.アメリカに昇格はありますか?
アメリカには昇格はありません。

ジョブ型の雇用を説明する時に「昇格」と「昇進」の違いについて説明させていただくことが多い。「昇格」の格は資格の格の意味だ。つまり資格があがること。日本の人事制度は多くの企業が「職能資格制度」を採用しているため、この資格制度の資格があがることを「昇格」と呼んでいる。資格が上がることを「昇格」と呼んでいるので、昨日と今日では仕事の内容が全く変わらないのに、4月1日から「昇格」したので給与が5,000円上がる、というようなことが起こる。

 

資格が上がるのは「人」をベースにした人事制度において、その「人」の能力が高まったから資格が上がるという考え方に基づいている。資格は「人」の階段ということになる。アメリカでは「人」をベースに人事制度を設けると人種、民族、肌の色、出身国、性別、年齢、障害の有無等による差別に関連づけられる可能性が高まるので「人」の階段は一般的に利用されていない。

 

アメリカでは基本的に資格を制度にしている人事制度はないが、アメリカでも仕事の役割が「スーパーバイザー」から「マネジャー」になることはある。これは資格ではなく、仕事のポジションが上がったわけだ。この場合は日本語では「昇進」となる。もちろん、日本には仕事の役割があがることもあるので日本には「昇格」と「昇進」という2つの言葉が存在する。

 

アメリカと日本には「仕事」の階段があり、日本には「人」の階段もあるという人事制度の特徴がある。

 

 

2.アメリカに手当はありますか?
アメリカには基本的に手当の報酬はありません。

弊社でもよく質問される内容の1つに「手当」を支給するにはどうしたらよいか?という質問がある。そこで、アメリカでは基本的に「手当」の概念がない、という説明をする。

日本には数多くの手当が存在する。その手当には「生活関連手当」と「仕事関連手当」である。

 

「生活関連手当」とは

通勤手当

住宅手当

家族手当

等の手当である。

「仕事関連手当」とは

役職手当

技能手当

資格手当

等の手当である。

 

まず、「生活関連手当」は一体何のために支給されているのだろうか?通勤手当は仕事場よりも遠いところに住んでいる人が電車賃等でより高い手当をもらうことになる。仕事とは何も関係のない「住居の場所の選択」によってなぜ報酬が異なるのだろうか?アメリカでは住んでいる地域によって報酬が異なるとそれは差別になる可能性がある。日本の企業は生活も含めて人生そのものが会社であるという意味がこんな手当にも見え隠れする。退職した会社員が元気がなくなるのは、会社という人生そのもののアイデンティティを失うからかもしれない。

 

また、「仕事関連手当」は一見合理的なように思えるが、例えば「部長役職手当」があるならば、なぜ「部長という仕事の役割」に対して基本給の報酬が支払われずに「手当」になるのだろうか?

ここに最初に登場した「昇格」と「昇進」のからくりが絡んでくる。「人」の階段で基本給が上がっていくため、組織の中で役割が大きい人と役割が小さい人が存在する。そのため、役割が大きい人への報酬を支給するための手当が「役職手当」である。

さらに生活関連手当も含めて日本で多くの「手当」が存在してきた理由に1つに「退職金」がある。なぜなら、退職金の計算は、多くの企業が「基本給」を算定基準にして支払を行ってきた。ポジションが高い人に高い基本給を支払ってしまうと「退職金」も上がってしまうことになる。手当で支給をしておくと、退職金の算定基準に含まれないため、退職金のコストを下げることができる仕組みである。

一般的にはアメリカの企業は「退職金」がないため、この基本給の算定基準も気にする必要がないということになる。

また、「手当」が支給されていた場合、例えばカリフォルニア州では残業代を支給する際に残業代の算定基準に「手当」も含める必要がある。もし、時給の1.5倍の残業代を計算しているとしたら、「手当」分もその残業代計算の算定基準に含める必要がある。残業代の訴訟になる可能性があるので、この点も注意が必要だ。

 

 

3.これはパワハラではないでしょうか?
アメリカにはパワハラはありません。

パワハラ=パワーハラスメントという言葉が日本では多く聞かれ、実際にその損害について議論になることがあるようだが、このパワーハラスメントという言葉は和製英語のため、アメリカには存在しないことになる。

部下にきつく注意するとパワハラで訴えられますよ、という言葉をアメリカでも言っている人が時折いますが、アメリカではパワハラは存在しません。

アメリカのハラスメントは人種、民族、肌の色、出身国、先祖、婚姻の有無、年齢、(生物学的)性別、性的志向、(社会文化的)性別、社会文化的性別の認識、社会文化的性別の表現、身体障害、精神障害、病状(癌を含む)軍事ステイタス、退役軍人、妊娠、出産と出産に関連した病状、自然なヘアスタイル等を根拠にした嫌がらせのことをハラスメントと呼んでいる。部下にきつく注意をしたらハラスメントということではない。セクシャルハラスメントはこの中の性別に対する嫌がらせの1つの分野が独立して名付けられたものである。

部下への注意については、その注意が社内でのイジメだとしたら、その行為はAbusive Conductという別の問題になる可能性はある。例えば、カリフォルニア州では社内イジメの防止研修をセクシャルハラスメント防止研修と一緒に行うことが義務づけられている。

 

 

4 試用期間が終わったら本採用でしょうか?
試用期間と本採用という労働法上の区別はありません。

日本から進出企業でよく訊かれる質問の1つに試用期間が終わったら本採用か?という質問がある。また、フルタイムの従業員を正社員、パートタイムをアルバイトと呼んだりするようだが、そのような区別もない。

試用期間であれば解雇がしやすいという法律もない。基本的に雇用はAt-Will(随意雇用)と呼ばれる形になっているので、法律に違反していなければあるいは差別がなければ、いつ、どんな理由によっても解雇ができることになる。また、従業員もいつ、どんな理由によっても辞職できることになる。これは期間を決めた「雇用契約書」がないことでもある。アメリカは契約社会なので「雇用契約書」があるのが当然だと思われることもあるが、「雇用契約書」も作成しないのが通常の雇用慣行である。(もちろん、Executive等で雇用契約書を作成することはよく行われる。また、雇用契約書を作成した方がよいとアドバイスする弁護士の先生もいらっしゃるので、御社の顧問弁護士にご確認いただけると幸甚です)

 

 

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【執筆】
 
 
Philosophy LLC
President
山口 憲和   (Norikazu (Kazu) Yamaguchi)
Email:yamaguchi@yourphilosophy.net  
 
 
【プロフィール】
MBA, SHRM-SCP, California Insurance License 0F78137,
日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ #463。
群馬県高崎市出身
2000年より米国型人事コンサルティングを行う。
2004年からロサンゼルスに拠点を移し、日系企業を中心に500社以上のコンサルティングを経験。米国人事に欠かせない保険のライセンスも取得し米国人事のサポートを行っている。
また、米国人事プロフェッショナルとしての資格 SHRM-SCP=SHRM(Society for Human Resource Management=米国人材マネジメント協会)Senior Certified Professionalを取得。  
 
 
(学歴 )
群馬県立高崎高等学校卒業
東京外国語大学 外国語学部 
中国語学科卒業 中国 復旦大学 国際文化交流学院修了
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 修士課程修了(MBA)  
 
 
(職歴) 全日本空輸株式会社(ANA) Mercer Human Resource Consulting等を経て現職  
 
 
(共著書)
A&R優秀人材の囲い込み戦略A&R優秀人材の囲い込み戦略  
 
 
 
【会社情報】
Philosophy LLC
Philosophy Insurance Services
所在地:2377 Crenshaw Blvd., Suite 315, Torrance, CA 90501
URL:philosophyllc.com/
TEL  310-465-9173  
 
 
 
【事業内容】
日系企業向け人事コンサルティング・保険代理店業務  
 
 
免責事項:山口憲和は、この記事の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、この記事の内容は 法的助言として解釈できません。 不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。 この電子記事上の情報は、ガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。  
 
 
Disclaimer: Please note that Norikazu Yamaguchi makes every effort to offer accurate, common-sense, ethical Human Resources management, employer, workplace, and Insurance information on this article, but Norikazu Yamaguchi is not an attorney, and the content on this article is not to be construed as legal advice.  When in doubt, always seek legal counsel. The information in the email is provided for guidance only, never as legal advice. We will not be responsible for any damages caused by using this information.    
 
 

 

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No.1 日本の人事について、トランプ政権発足以降のビザ取得の状況

No.2 人事が知っておくべき高額医療/消費者保護法(CCPA)施行/感染症対策

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No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A

No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ

No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について

No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ

No.8 出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順

No.9    Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答

No.10  コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから

No.11 移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報

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