【アメリカの人事部】なぜ過去の給与履歴を質問してはいけないのか?

 

   

 

   

 

 

なぜ過去の給与履歴を質問してはいけないのか?

 

 

現在、全米20州において過去の給与質問禁止

 

例えば採用をする際に「前職の給与はいくらでしたか?」

と質問することはないだろうか?

 

現在、採用時にこの質問ができる州は全米の半分程度に限られていて、

20の州でSalary History Ban(前職の給与質問禁止)の法律がある。

▼出所:HR Dive Salary History Ban

https://www.hrdive.com/news/salary-history-ban-states-list/516662/

 

この法律が出来た理由は男女の賃金格差を埋めるためである。現在米国において、男女の給与格差は同様の仕事・同様の資格においては2%の賃金格差があるという調査がある。また、単純に男女の報酬を比較すると18%の差があるようだ。

▼出所:Payscale Gender Pay Gap

https://www.payscale.com/data/gender-pay-gap

 

過去の給与履歴を質問して新しいポジションの給与を決めていたら、いつまで経ってもこの性別による給与格差が埋まらないため、過去の給与履歴を禁止するトレンドが全米に広がっているわけだ。

 

 

コロラド州のEqual Pay Actはどのような規定か?

 

例えば、コロラド州のEqual Pay Actはどのような規定になっているだろうか?

下記の例をご確認いただけると、大変詳細に賃金平等のための施策が行われてきていることが分かる。アメリカでの雇用にはJob Description(職務記述書)と報酬レンジの設定が必須になってくる。

 

この法律は、コロラドで働く少なくとも1人の従業員を雇用しているすべての事業体に適用される。

 

また、雇用者が雇用期間中、さらには雇用終了後2年間、各従業員の職務記述書と賃金の履歴を記録することを義務付けている。

 

 

コロラド州のEqual Pay Actの禁止事項

 

この法律は、雇用主が以下を行うことを禁じている。

 

1.性別、性的志向等を理由に賃金を変える

法的に正当な理由がない限り、実質的に同様の仕事に対して、異なる性別(または性別と別の保護されたステータス)の従業員に別の性別の従業員に支払われる賃金よりも低い賃金を支払う。

 

2.過去の給与履歴を質問する

採用応募者の給与履歴について質問をする。

 

3.従業員同士の給与情報開示を禁止

従業員が他の従業員と報酬について話し合うことを制限する。

 

4.給与履歴を開示しなかった従業員への報復

賃金履歴を開示しなかった申請者に対する報復。

 

 

コロラド州のEqual Pay Actの要請事項

 

1.求人情報掲載時の要請事項

雇用主は、報酬のレンジ(ポジションごとの報酬の幅)とすべての福利厚生の一般的な説明を求人情報に掲載する必要があります。雇用主は、報酬および福利厚生情報へのハイパーリンクを含めることができる。

 

雇用主は最終的に、掲載された報酬レンジよりの範囲を超えた支払いの可能性が認められている。複数の州またはリモートの求人情報には、コロラド州で勤務する場合の情報だけを別途掲載することが必要である。

 

掲載される報酬レンジは、掲載されている特定の仕事に対するものでなければならない。(たとえば、雇用主は、通常のAccounting Managerの報酬レンジが$50,000~$70,000のところ、Senior Accounting Managerを含めるとAccounting Managerの報酬レンジが$50,000~$100,000の範囲になるからと言って、求人情報に$50,000~$100,000と掲載してはいけないことになっている)。

 

コロラド州内の企業の場合はリモートジョブであっても、求人情報に報酬レンジと福利厚生の内容を含める必要がある。最近のケースではコロラド州を除くすべての場所でリモートジョブを利用できると投稿して報酬レンジの掲載を省略している会社があったが、この法律に準拠していないと州から判断された。

 

 

コロラド州のEqual Pay Actの既に勤務している従業員への対応

 

雇用主は、昇進の決定を行う前に、コロラド州の全従業員に昇進の機会について説明する義務が発生する。ここで言う昇進の機会とは、雇用主が、報酬、福利厚生、職務等の情報について、さらなる昇進へのアクセスの観点から、少なくとも1人の従業員の昇進と見なされる可能性のある既存または新しいポジションの欠員がある場合に社内で発表する必要がある。コロラド州は、企業は発表を「資格のある」従業員のみに限定することはできないと述べている。

 

昇進の機会に関する発表には、役職、従業員が応募できる手段、および役職に対する報酬と福利厚生を含める必要がある。昇進の機会には、必要な資格と意図された雇用も含まれる場合があります(たとえば、「Senior Accounting Managerへの昇進にはTaro Yamadaが推奨されています。報酬レンジは$ 70,000-100,000、健康保険および401kのベネフィットがあります。関心のある申請者はHRのKazu Yamaguchiに連絡してください。」等)。

 

雇用主は、対象となるすべての従業員が通常の職場内(オンラインまたはハードコピー)でアナウンスにアクセスでき、投稿またはアナウンスの場所が通知される限り、任意の方法でアナウンスを投稿できる。

 

雇用主が定期的(少なくとも月1回)に従業員を雇用するか、他部門からの横方向昇進を含めて、設定された要件の完了時に特定のポジションに自動的に昇進させる場合、雇用主は昇進の機会についてEmployee Handbook等で1回限りの通知を発行できる。(昇進の都度の告知は不要)

 

社内求人情報掲載の要件の例外は、下記のような場合である。

(1)現職の従業員の交代による守秘義務

(2)最長1年の試用期間後の自動昇進、および

(3)最長6か月間の臨時/演技/暫定雇用(ポジションが永続的になった場合、雇用主は投稿する必要がある)

 

 

求人情報の要件に違反した雇用主は、違反ごとに$500から$10,000の罰金を支払う必要がある場合がある。雇用主が最初の違反の後すぐにその投稿を修正して法律を守ったものに修正した場合、すべての罰金を免除されることがある。

 

Equal Pay Actの広がりはCalifornia、New York、Massachusetts等から始まり全米に広がって来ている。Colorado州の事例はもっとも先進的な内容が含まれているが、この動きが全米に広がることが考えられる。

 

 

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【執筆】
 
 
Philosophy LLC
President
山口 憲和   (Norikazu (Kazu) Yamaguchi)
Email:yamaguchi@yourphilosophy.net  
 
 
【プロフィール】
MBA, SHRM-SCP, California Insurance License 0F78137,
日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ #463。
群馬県高崎市出身
2000年より米国型人事コンサルティングを行う。
2004年からロサンゼルスに拠点を移し、日系企業を中心に500社以上のコンサルティングを経験。米国人事に欠かせない保険のライセンスも取得し米国人事のサポートを行っている。
また、米国人事プロフェッショナルとしての資格 SHRM-SCP=SHRM(Society for Human Resource Management=米国人材マネジメント協会)Senior Certified Professionalを取得。  
 
 
(学歴 )
群馬県立高崎高等学校卒業
東京外国語大学 外国語学部 
中国語学科卒業 中国 復旦大学 国際文化交流学院修了
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 修士課程修了(MBA)  
 
 
(職歴) 全日本空輸株式会社(ANA) Mercer Human Resource Consulting等を経て現職  
 
 
(共著書)
A&R優秀人材の囲い込み戦略A&R優秀人材の囲い込み戦略  
 
 
 
【会社情報】
Philosophy LLC
Philosophy Insurance Services
所在地:2377 Crenshaw Blvd., Suite 315, Torrance, CA 90501
URL:philosophyllc.com/
TEL  310-465-9173  
 
 
 
【事業内容】
日系企業向け人事コンサルティング・保険代理店業務  
 
 
免責事項:山口憲和は、この記事の中で正確で常識的、倫理的な人事管理、雇用者、職場、保険情報等を提供するために万全を期していますが、山口憲和は弁護士ではなく、この記事の内容は 法的助言として解釈できません。 不確かな場合は、常に弁護士に相談してください。 この電子記事上の情報は、ガイダンスのためだけに提供されており、決して法的助言として提供されるものではありません。この情報を利用して損害が生じた場合でも弊社では責任を負いかねますのでご了承下さい。  
 
 
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