NY州の新法“HERO Act”とは
NY州の新法“HERO Act” とは
今回は今年5月5日にクオモNY州知事によってサインされたNY州の新法であります、“HERO Act”について解説をしたいと思います。HERO Act とは“Health and Essential Rights Act”の略称で、翻訳しますと「健康必須権利法」となります。この名称からすると、健康に関しての人権法だという印象を受けますが、概要としてはNY州で事業を行うすべての雇用主に課せられる(COVID-19 だけに限定されない)空気感染症(Airborne Infectious Disease)全般に対する州から出された職業安全衛生法であるという性格がうかがえます。
本法は、州の人権法であり職場安全衛生法でもあるという位置付けになるかと思われますので、対象となりますのは、フルタイムやパートタイムのステータスにかかわらず、すべての従業員、そして派遣社員、臨時雇いや季節労働者、さらにコントラクターやインターンの方々などにも適用となります。基本的に職場で働いている人がいれば、すべて適用となりますので、もはや従業員であるかどうかは同法では関係ありません。通常、連邦法である職業安全衛生法(OSHA: Occupational Safety and Health Act)および各州のOSHA(Occupational Safety and Health Administration)では、法律の対象は従業員に限定されない、職場で働くすべての人という定義になりますので、HERO Actも同等の扱いであることになります。
NY州にも州独自のOSHAはあることはあるのですが、NY州のOSHAは州政府などで働く公務員(Public Workers)だけが対象で、一般の民間企業で働く従業員は対象となっていません。連邦も州も本来すべての職場で働く人が対象とされなければならないと思うのですが、ことNY州のOSHAにいたっては変則的です。そこで今回は州のOSHAからではなく、州法としての HERO Act が発案され、立法化されたわけなのです。繰り返しますが、州にあるすべての雇用主が対象であり、職場であるということから、その範囲は多岐にわたり、本法の施行日は当初公示されていた6月4日から1ヶ月延びて、独立記念日明けの7月5日からに変わりました。
同法で義務化されることとなる空気感染症暴露防止プラン(Airborne Infectious Disease Exposure Prevention Plan)を州労働局(NYDOL: New York Dept. of Labor)から発表される予定であるモデルスタンダードプランを最低基準として、同等かそれ以上の基準、たとえば業界仕様の特別基準などを含めた各企業独自のプランを作成し、職場に導入することが義務付けられます。ところが、このモデルプランも6月中には出される予定であったはずなのですが、結局こちらも延ばされてしまい、いまのところ7月5日の施行日からさらに1ヶ月後の8月5日までに出される予定だということになっています。

本暴露防止プランを作成した後は、速やかに全従業員に書面でプランが配布されなければならず、また新規従業員を採用した際には、入社時に本プランを配布することが義務付けられます。さらに、プラン作成は英語のみならず、従業員が普段使う母国語でも翻訳したものを渡すという徹底ぶりが盛り込められています。そうなりますと、日系企業様では英語と同時に日本語版も作成する義務があるということになります。これらプラン作成の作業は期限はいつまでという明確な公示はまだされていないようですが、遅くとも年内中には作成を終わらせて、配布していなければならないものとしてご準備なさっておくことが望まれます。
また同法では今年の11月1日までに州内で10名以上の従業員を雇用する企業に対して、「労使協同による職場安全委員会」(“Joint Labor Management Workplace Safety Committee”)を設立させ、運営の承認をしなければならないとしています。しかもこの委員会の構成メンバーの3分の2は、非管理職者でなければならず、非管理職者の選出は非管理職者で行われなければならないとされています。まるで労働組合のボードメンバーを選出するような書き方になっているので、少々驚かされます。もともと労働組合活動が伝統的に盛んで、全米の中でも組合員加入率がトップクラスのNY州においてはやはり、さもありなんと思わせる法律の条項になっています。
まず暴露防止プランの作成においては、本法が施行になっても州労働局からのスタンダードプランが出るまでは作成自体を進めることは難しいと思います。そしてスタンダードが出された後でも、年を越えて自社プランが作成されておらず、万一それが州労働局側に発覚した場合には、プランが作成されるまで1日最低50ドルのペナルティが罰則で科されることになります。仮に作成されていてもプランどおりに職場での履行がなされていない場合には、最低でも1,000ドルから最高10,000ドルまでのペナルティが科せられるとされていますので、やはりこれは本法が規定しているとおりに職場でのプラン作成とその履行が確実となるように全社で真剣に取り組まなければならないものとお考えください。
NY州にある日系企業の皆様におかれましては、また大変厄介な新しい法律がNYで作られたものだと深いため息のひとつでも出てくるものではないかとお察し申し上げますが、貴社の職場で働く従業員をはじめとしたすべての人を感染症から守る上で遵守しなければならない重要な州法だとご認識されて、腹をくくってご対応なされますことをご指南させていただきます。
※この記事に関してのご質問は、Pacific Dreams, Inc.まで、お気軽にお問い合わせください。
【執筆】
Pacific Dreams, Inc.
President & CEO
酒井健吉
Ken Sakai
8532 SW St Helens Dr. Suite 220 Wilsonville, OR 97070
www.pacificdreams.org
Email : kenfsakai@pacificdreams.org
Phone: 503-783-1390
【プロフィール】
信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。
●「アメリカの人事部」ニューレターのお申込み
クイックUSAは「アメリカの人事部」を発足し、在米日系企業様向けにニュースレターを配信させていただいております。アメリカでビジネスを遂行していくために、必ず知っておかなければならない法律、人事・労務、ビザなどの最新ニュースを定期的にお届けしております。「アメリカの人事部」のニュースレターの受信をご希望の企業様は、下記までお気軽にお申し付けください。
「アメリカの人事部」のニュースレターお申込みご希望の方はお手数ですが、会社名、ご担当者様氏名、役職、電話番号、会社のご住所、E-mailアドレスを明記の上、下記E-mailアドレスまでご連絡くださいますようお願いいたします。
E-mail:info-usjinjibu@919usa.com
「アメリカの人事部ニュースレター」のバックナンバーをご希望の方は、
E-mail:info-usjinjibu@919usa.com まで、ご希望のナンバーをお気軽にお知らせください。
【バックナンバー】
No.1 日本の人事について、トランプ政権発足以降のビザ取得の状況
No.2 人事が知っておくべき高額医療/消費者保護法(CCPA)施行/感染症対策
No.3 コロナウィルス拡大で米国CDCも推奨「在宅勤務」について/シックリーブ
No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A
No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ
No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について
No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ
No.8 出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順
No.9 Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答
No.10 コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから
No.11 移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報
No.12 失業保険の不正受給が急増/評価制度Q&A
No.13 職場におけるコロナ関連訴訟/ オフィス対策/ 感染テスト
No.14 ジョブ型?メンバーシップ型?/自主隔離を終了させる新たなガイドライン
No.15 CA州無給休暇と収入保障/強い企業になる!ブラックスワン比較とは
No.16 ポストコロナの新入社員研修/最新移民法/リモート採用注意点/失業率の推移、学校再開Q&A
No.17 訴訟が多いワースト10/コーチングの活用目的
No.18 緊急有給シックリーブ法の改定/リモートでのコミュニケーション
No.19 各州の雇用に必要な給与額/従業員が感染!会社としての対策とは
No.20 2021年は2.6%昇給すべきか?!/採用もマーケティングと同じ
No.21 バイデン新政権誕生で変わる今後の雇用情勢/H1b申請新基準
No.22 企業が提供する祝日と割合/オンラインホリディパーティゲーム9選
No.23 医療費は上がり続けるのか?
No.24 2021年の有給シックリーブ法/何はなくともブランディング
No.25 グラフで振り返る2020年/新世代のコミュニケーションCPaaSとは
No.26 ワクチン接種を強制しますか?/H-1Bビザ抽選プロセスの変更案について
No.27 大統領令と法律の違い/医療費控除を最大に/州政府の仕事を請け負うには
No.28 従業員ベネフィットのトレンド/COVID後のオフィスデザイントレンド
No.29 COVID-19救済法と人事関連情報/コミュニケーションは進化する/音声メディアを考えてみる
No.30 2021年ハンドブック更新の拠り所/まだ間に合う!節税のためのIRA/クラウドサービス利用の秘訣
No.31 大麻使用許可による職場規定とドラッグテストの影響/永遠に勝てる組織を作るには
No.32 あなたの給料はAIが決めてもよいか?/駐在員が絶対に知らないといけない個人税務知識
No.33 アメリカの失業保険制度と給付金/最近のアメリカ移民法事情/日本帰国のポイント
No.34 リモートワークでの雇用と離職について/短期の離職を抑えるためにできること/音声メディアを考えてみる Part:2
No.35 CA州はマスクを外せないのか?/ここだけは押さえておきたいIRS
【アメリカでのご採用をご検討中の企業様へ】
★採用でお困りなことはありませんか? クイックUSAでは、アメリカでのご採用のお手伝いをしています。 フルタイム、パートタイム、派遣等、御社のご採用のお手伝いをさせていただきます。 お気軽に下記までご連絡ください。
●人事・労務関連のご相談にも応じております。
クイックUSAではハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成、セクハラ防止セミナーの開催など、 人事労務関連のご相談も承っております。内容、お見積りなど何でもお気軽に下記までご相談ください。
QUICK USA, Inc.
[Los Angeles Office ](Headquarters)
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[New York Office ]
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
【アメリカでのご転職・就職をお考えの方へ】
★アメリカでのお仕事探し、就職・転職はクイックUSAにお任せください。 弊社のサービスにご登録がお済みでない方は、まずは英文履歴書のご登録をお願いいたします。 www.919usa.comより、オンライン登録をしていただくか、 quick@919usa.comまでE-mailにて英文履歴書を添付ファイルにてお送りください。 折り返しご連絡させていただきます。
※クイックUSAではニューヨークとロサンゼルスを拠点に全米で、留学生や社会人の求職者に対してアメリカでの就職・転職のお手伝いをしています。ご紹介しているお仕事は、金融、会計、IT、輸出入、人事、営業など多岐に渡ります。
雇用形態はお仕事をお探しの方のライフスタイルに合わせて、 フルタイムのお仕事とテンポラリーのポジションをご紹介。 クイックUSAでは経験豊富なリクルーターが、求職者の皆様一人ひとりのご希望などを伺いアメリカでのキャリアプランを一緒に考えさせていただいています。
アメリカでお仕事をお探しであれば、アメリカ求人多数のクイックUSAに是非ご登録ください!(無料)
★★クイックUSAにレジュメのご登録がまだの方は、今すぐご登録ください!★★

クイックUSAでは、ご登録者の方に対して無料のキャリアカウンセリングを実施しています。
★★Emailにてレジュメを送るだけで登録完了のエクスプレス登録もご利用いただけます!★★
アメリカで現在お仕事をされている方、OPTや学生の方など、現在アメリカに住んでいらっしゃる方へ
アメリカでのご転職・就職で何かご質問がございましたら下記よりご連絡ください。
QUICK USA, Inc.
[Los Angeles Office ](Headquarters)
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[New York Office ]
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
是非、フォローお願いします。