【アメリカの人事部】「小さな物語」が組織を変える
「小さな物語」が組織を変える
多様化社会におけるパーパスの意義
「一億総中流」
高度経済成長期における、大多数の日本人に共通していたとされる意識を指す言葉です。それから数十年の間に、個人のライフスタイルや価値観は実に多様化しました。
現代社会の象徴は、ダイバーシティ、個人化、持続可能性、あるいはポストモダニズムの言葉を借りれば、終焉を迎えた「大きな物語」から「小さな物語」への解体、とも言えます。
消費者ニーズの多様化にともない、企業は自らの存在意義を表現するパーパス(Purpose)を語るようになりました。パーパスに共感する消費者を増やさなければ、生き残ることが難しくなってきたのです。
パーパスへの共感は、企業の内側においても重要です。組織のパーパスに、そこで働くひとりひとりが共感していると、その組織の競争力は、より高まりやすくなります。
パーパスへの共感を生む「主体化」
組織のパーパスに共感し、さらに自分のパーパスとのつながりを理解すること。さらにその実現に向けて周囲を巻き込みながら変化を起こしている状態のことを、私たちは「主体化」と呼びます。この主体化には、関わりを通して人から人へ広がっていく連鎖性があります。また、コーチング研究所の調査では、リーダーが主体化している組織では、一体感が増し、組織間連携が進みやすいということがわかっています。
では、主体化しているリーダーは具体的にどのような行動をとっているのでしょうか。主体化していないリーダーと比較する形で、コーチング研究所が分析したデータを紹介します。

これは、上司が発揮しているリーダーシップについて、部下からの評価を比較分析したものです。50以上のアンケート項目のうち、40もの項目において有意な差がみられましたが、ここには、特に評価スコアの差が大きい10項目が示されています。
主体化している上司の行動で際立つのは、「組織のビジョンを魅力的に語っている」「日頃からビジョンの話をしている」「会社のビジョンと方向性について周囲と話している」「会社全体を考えて行動している」といった、ビジョンに関するリーダーシップをより強く発揮しているという点です。
主体化している人ほど、自分が組織のパーパスを実現する主体であるという意識を強く持っています。この意識と表裏一体の行動が、管轄組織や会社のビジョンについて日常的に、かつ魅力的に周囲と話すというリーダーシップの顕著な差として表れています。
また、「仕事に情熱を持っている」「自信を持っている」という項目で差が大きいことも注目すべき点です。
イソップの「3人のレンガ職人」で「自分の仕事は人類全体に貢献するものだ」と答えた職人のように、主体化している人ほど、自分の仕事や存在が組織や社会でどのような意味を持つのかを、明確に言語化することができます。自分の仕事の意義を実感できている人ほど、より情熱や自信を持てるようになるというわけです。
組織のビジョンや会社の方向性をいつも魅力的に語り、情熱的に仕事に取り組む上司がいれば、その部下も自然と影響を受けることになります。明確なビジョンが一体感を生むだけでなく、自組織だけでは実現できない会社のパーパスに向けた連携すらも促進する効果があるといえます。
主体化を連鎖させるための条件
主体化の連鎖は、上司のロールモデル的なリーダーシップだけでなく、その特徴的な構造からも引き起こされます。組織と自分のパーパスについて考えるだけでなく、その実現に向けて周囲と対話し、巻き込みながら変化を起こすというプロセス自体が、主体化の連鎖を生み出している要因なのです。
ここで、主体化の連鎖をさらに促進するためのヒントとなるデータを紹介します。

これは、同じ程度に主体化している上司がいるとき、上司の「コミュニケーション」のレベルが高いほど、部下の主体化が進んでいることを示しています。ここでの「コミュニケーション」とは、次のような、上司と部下との間の日々の関係性のことを指しています。
・部下の話をさえぎることなく、最後まで聞く。
・部下の考えに興味を持ち、その価値観を理解しようとする。
・部下に感謝やねぎらいを伝える。
どれも基本的なコミュニケーションですが、相手の存在を承認し、一緒に仕事をするための関係性の基盤となるものです。
仮に上司が主体化していても、もしこれらのコミュニケーションが成り立っていないままだとすると、部下はその上司との関係性において、自分の役割や存在に意義を感じにくくなってしまいます。
上司が提示するビジョンに共感していたとしても、主体化の要である個人のパーパスが否定された状態では、部下の主体化は促進されることはありません。決して進まないというわけではありませんが、部下や周囲との日々の関係性を丁寧に構築しておくことで、組織全体への主体化の連鎖がより促進されることになります。
主体化は、特別なスキルやツールを必要とするものではありません。忙しい日常にあっても、組織や自分のパーパスについての問いを持つことから、いつでも始められます。それは、いわば自分の「小さな物語」を語り始めるということです。
日々のコミュニケーションを大切にしながら、その物語に誰かを誘うだけで、新しい物語が生まれます。やがて、ひとつの「小さな物語」はいくつもの「外伝:あなたに誘われた相手がつくりあげる、別の物語」を生み、組織全体が新しい時代の「大きな物語」を紡ぎだすことになるかもしれません。
※本記事は、コーチング研究所による最新のリサーチのインサイトをまとめたものです。
※この記事に関してのご質問は、(株)コーチ・エィまで、お気軽にお問い合わせください。
【出典】
(株)コーチ・エィ
Hello, Coaching!
Coach's VIEW
『小さな物語』が組織を変える (2021年5月26日掲載)より
【筆者】
高橋剣士郎
コーチング研究所
リサーチャー
●「アメリカの人事部」ニューレターのお申込み
クイックUSAは「アメリカの人事部」を発足し、在米日系企業様向けにニュースレターを配信させていただいております。アメリカでビジネスを遂行していくために、必ず知っておかなければならない法律、人事・労務、ビザなどの最新ニュースを定期的にお届けしております。「アメリカの人事部」のニュースレターの受信をご希望の企業様は、下記までお気軽にお申し付けください。
「アメリカの人事部」のニュースレターお申込みご希望の方はお手数ですが、会社名、ご担当者様氏名、役職、電話番号、会社のご住所、E-mailアドレスを明記の上、下記E-mailアドレスまでご連絡くださいますようお願いいたします。
E-mail:info-usjinjibu@919usa.com
「アメリカの人事部ニュースレター」のバックナンバーをご希望の方は、 E-mail:info-usjinjibu@919usa.com まで、 ご希望のナンバーをお気軽にお知らせください。
【バックナンバー】
No.1 日本の人事について、トランプ政権発足以降のビザ取得の状況
No.2 人事が知っておくべき高額医療/消費者保護法(CCPA)施行/感染症対策
No.3 コロナウィルス拡大で米国CDCも推奨「在宅勤務」について/シックリーブ
No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A
No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ
No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について
No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ
No.8 出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順
No.9 Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答
No.10 コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから
No.11 移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報
No.12 失業保険の不正受給が急増/評価制度Q&A
No.13 職場におけるコロナ関連訴訟/ オフィス対策/ 感染テスト
No.14 ジョブ型?メンバーシップ型?/自主隔離を終了させる新たなガイドライン
No.15 CA州無給休暇と収入保障/強い企業になる!ブラックスワン比較とは
No.16 ポストコロナの新入社員研修/最新移民法/リモート採用注意点/失業率の推移、学校再開Q&A
No.17 訴訟が多いワースト10/コーチングの活用目的
No.18 緊急有給シックリーブ法の改定/リモートでのコミュニケーション
No.19 各州の雇用に必要な給与額/従業員が感染!会社としての対策とは
No.20 2021年は2.6%昇給すべきか?!/採用もマーケティングと同じ
No.21 バイデン新政権誕生で変わる今後の雇用情勢/H1b申請新基準
No.22 企業が提供する祝日と割合/オンラインホリディパーティゲーム9選
No.23 医療費は上がり続けるのか?
No.24 2021年の有給シックリーブ法/何はなくともブランディング
No.25 グラフで振り返る2020年/新世代のコミュニケーションCPaaSとは
No.26 ワクチン接種を強制しますか?/H-1Bビザ抽選プロセスの変更案について
No.27 大統領令と法律の違い/医療費控除を最大に/州政府の仕事を請け負うには
No.28 従業員ベネフィットのトレンド/COVID後のオフィスデザイントレンド
No.29 COVID-19救済法と人事関連情報/コミュニケーションは進化する/音声メディアを考えてみる
No.30 2021年ハンドブック更新の拠り所/まだ間に合う!節税のためのIRA/クラウドサービス利用の秘訣
No.31 大麻使用許可による職場規定とドラッグテストの影響/永遠に勝てる組織を作るには
No.32 あなたの給料はAIが決めてもよいか?/駐在員が絶対に知らないといけない個人税務知識
No.33 アメリカの失業保険制度と給付金/最近のアメリカ移民法事情/日本帰国のポイント
No.34 リモートワークでの雇用と離職について/短期の離職を抑えるためにできること/音声メディアを考えてみる Part:2
No.35 CA州はマスクを外せないのか?/ここだけは押さえておきたいIRS
【アメリカでのご採用をご検討中の企業様へ】
★採用でお困りなことはありませんか?
クイックUSAでは、アメリカでのご採用のお手伝いをしています。
フルタイム、パートタイム、派遣等、御社のご採用のお手伝いをさせていただきます。
お気軽に下記までご連絡ください。
●人事・労務関連のご相談にも応じております。
クイックUSAではハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成、セクハラ防止セミナーの開催など、人事労務関連のご相談も承っております。内容、お見積りなど何でもお気軽に下記までご相談ください。
QUICK USA, Inc.
[Los Angeles Office ](Headquarters)
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[New York Office ]
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
【アメリカでのご転職・就職をお考えの方へ】
★アメリカでのお仕事探し、就職・転職はクイックUSAにお任せください。
弊社のサービスにご登録がお済みでない方は、まずは英文履歴書のご登録をお願いいたします。
www.919usa.comより、オンライン登録をしていただくか、
quick@919usa.comまでE-mailにて英文履歴書を添付ファイルにてお送りください。
折り返しご連絡させていただきます。
※クイックUSAではニューヨークとロサンゼルスを拠点に全米で、留学生や社会人の求職者に対してアメリカでの就職・転職のお手伝いをしています。ご紹介しているお仕事は、金融、会計、IT、輸出入、人事、営業など多岐に渡ります。
雇用形態はお仕事をお探しの方のライフスタイルに合わせて、 フルタイムのお仕事とテンポラリーのポジションをご紹介。
クイックUSAでは経験豊富なリクルーターが、求職者の皆様一人ひとりのご希望などを伺いアメリカでのキャリアプランを一緒に考えさせていただいています。 アメリカでお仕事をお探しであれば、アメリカ求人多数のクイックUSAに是非ご登録ください!(無料)
★★クイックUSAにレジュメのご登録がまだの方は、今すぐご登録ください!★★

クイックUSAでは、ご登録者の方に対して無料のキャリアカウンセリングを実施しています。
★★Emailにてレジュメを送るだけで登録完了のエクスプレス登録もご利用いただけます!★★

アメリカで現在お仕事をされている方、OPTや学生の方など、現在アメリカに住んでいらっしゃる方へ
アメリカでのご転職・就職で何かご質問がございましたら下記よりご連絡ください。

QUICK USA, Inc.
[Los Angeles Office ](Headquarters)
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[New York Office ]
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850