【アメリカの人事部】大統領令と法律の違い

 

     

 

   

 

【アメリカの人事部】大統領令と法律の違い

 

今年1月20日に行われましたバイデン大統領の就任式(Inauguration Ceremony)から早いものでもう1ヵ月以上が経過しました。新しく大統領が就任してから最初の100日の行動が後々まで語り継げられることの多い重要なステップであることに衆目が一致しています。特に私が気にしていたのは、バイデン大統領がこの間にどれぐらいの数の大統領令(EO: Executive Orders)を発布するのかということでした。まだ100日に達するには2ヵ月ほどの時間を要しますが、すでにバイデン大統領は最初の2週間で28もの大統領令を発布しており、これは歴代大統領の中では大恐慌後の1930年代に就任したフランクリン・ルーズベルト大統領の30のEOに次ぐ数となっています。  

 

EOでまず思い起こされるのは、トランプ前大統領による就任後まもなくのEOの連発ではないでしょうか。それでも、最初の2週間のEOの数はバイデン大統領の半分以下の12にすぎませんでした。それらバイデン大統領が発布した28に及ぶEOの中には環境やエネルギー、移民、コロナ、そして雇用関係などが含まれています。コロナと雇用はEOの中でも特に密接な関係があり、連邦政府としてコロナ感染予防対策を強化するために連邦行政機関である職業安全衛生局(OSHA: Occupational Safety and Health Administration)から出されているガイドラインを修正して緊急暫定基準(ETS: Emergency Temporary Standards)を発布するEOが含められています。バイデン政権はトランプ前政権時代に予算や人員カットで冷遇されてきたOSHAに対して、増員増強をはかることをすでに大統領挙中の公約の中で発言していました。  

 

 

さて、この大統領令、EOの正式名称は、Presidential Proclamations and Executive Orders になります。単にEOだけですと、州知事あるいは市長などの首長から発せられる場合も該当します。では大統領令と法律(Act)とはいったいどのような違いがあるのでしょうか。まず手続きとしてですが、大統領自身が持つ意図でのみ立案および制定ができますので、いちいち議会で審議を行って立案を通過させるようなことは必要ありません。通常の法律であれば、大統領が勝手に立案して制定することは許されておりませんので、下院と上院の両方の議会での承認が必要となります。その意味で大統領令は非常に迅速に発布することができ、大統領自身が考えている政策を手っ取り早く実行に移すことのできる即効性のある手段であるといえます。ですが、大統領令は議会の承認を通していない分、違憲訴訟などの遠因となることがあり、ときに法廷闘争にまで発展することがあります。  

 

特に新しく就任した対抗する政党の大統領によって前大統領が制定した数々の大統領令がいとも簡単に覆されることがあります。つまり、バイデン大統領の発布した28の大統領令の多くは実はトランプ前大統領が出してきた大統領令をそのままひっくり返すためのものであったのです。ことほどかように、大統領令というものは作るのもいとも容易でありながら、またそれらを壊すこともやはり容易であるといえるのです。それに対して一度できて施行されている法律を覆したり廃止するのはいちいち議会を通さなければならないわけで、即効的にできるわけではありませんし、簡単な手続きでもありません。  

 

それでも大統領令は国からのトップダウンの命令として、非常に広範な効力があることも事実です。新たに出された大統領令をベースにして、実際に行政の運営にあたっている連邦行政機関が新しく行政規則(Regulations or Rules)を作ったり、修正したりします。こちらは一定の手続きが必要とされますので、特定の行政機関による審査やレビューがあったり、一般の公的意見(Public Opinions)を公募したりと、所定の手続きを踏むことが義務付けられています。ご存知だと思いますが、移民関係に関する排他的な大統領令が前大統領から数多く出されていました。それら出されていた移民政策に厳格な方針をとる大統領令に基づいて、今度は移民局(USCIS: United States Customs and Immigration Services )から出されているビザ手続きや審査などに関する行政規則の変更や追加に多大な影響が及ぼされることになります。  

 

すでにバイデン大統領は、自身の大統領令によって、トランプ前大統領が出した移民政策の引き締めと厳格化をはかる ”Buy Americans Hire Americans(BAHA)” の大統領令を撤廃させています。イスラム圏からの渡航禁止やメキシコ国境での壁建設、国境地帯での移民家族の取り扱い、難民の認定、DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals;若年移民に対する国外強制退去の延期措置)の維持なども大統領令で前大統領令とは180度異なる方針を発布しています。いまのところ、バイデン大統領は最初から高速ギアを入れて、アクセルをフルに踏み込んだ状態で次々に各種政策を打ち出しているといえるでしょう。それが議会での承認を通す法案手続きをとっていたのであれば決してこうはいかなかったわけで、正しい選択をとっていると思います。ですが、大統領令だけでは政策を永続させることはできませんので、コロナ禍による新たな経済救済措置法の制定などは議会での法案の通過が不可欠であり、今後の議会との折衝を通じて大統領として一段格上のステージに登っていく展開になってくることでありましょう。    

 

 

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【執筆】

         

 

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酒井健吉 (Ken Sakai)

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【プロフィール】

 信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。    

 


 

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