【アメリカの人事部】組織がコーチングを活用する本質的な目的

 

 

 

     

 

 

組織がコーチングを活用する本質的な目的

 

予防医学研究者の石川善樹さんから興味深いお話を伺いました。「その言葉が、世の中でどのように認識されているかは、画像検索をしてみるといい」と。  

 

果たして「コーチング」という言葉を画像検索してみると、どんな画像が表示されるでしょうか。パーソナライズされているとはいえ、多かれ少なかれ似たような画像が表示されるのではないかと思います。私の画面では、「二人の人物」、「ティーチングとコーチングの対比」、「目標に向かうプロセス」などのイメージ画像が目に入ります。みなさんの場合はいかがでしょう。  

 

           

 

「コーチング」については長らく  

 

・1対1で行われる、一方通行ではない双方向の対話という「形式」

・質問、聞くなどの「スキル」

・新たな気づきが生まれ、考えが整理されるといった「効果」  

 

という「形式」「スキル」「効果」の3つが中心に語られてきました。「コーチングとは何か」という問いに対しても、この3つで説明されることが多いように思います。  

 

 

 

「マネージャーが部下にコーチングができるようになる」が意味することは

 

国際コーチング連盟が2019年に発表した調査によると、組織におけるコーチング活用について、次のように考察されています。  

 

「32%の組織が、社内にてマネジャー/リーダーがコーチングを実践しており、83%の組織は、今後5年でマネジャーの職務要件としてコーチとしての役割が加わるとしている。」(※1)  

 

また、Google社は、良いマネジャーの10の要諦の一つ目に「良いコーチであること」を挙げています。(※2)  

 

「マネジャーがコーチができる、コーチングスキルを備えている」というのは、改めて、時代の潮流だと言えるでしょう。  

 

ある企業の人事のご担当の方は、こんなふうにおっしゃっていました。  

 

「マネジャーが部下にコーチングができるようになることを目的に、10年以上前からコーチングを導入してきました」  

 

では、このとき「マネジャーが部下にコーチングができるようになる」とは、何を意味するのでしょうか。マネジャーに上述の「形式」「スキル」が身につくと、何が組織にもたらされるのでしょうか。よく語られる「気づき」や「考えの整理」という「効果」以外に、組織への影響はないのでしょうか。  

 

コーチングは、決して「部下に目標を達成させるためのマネジメントスキル」にとどまりません。組織にとって、コーチングはもっと大きな可能性を秘めています。    

 
 

 

参加者の立場、観察者の立場

 

世の中に「組織を変えたい」と強く願うリーダーは少なくありません。しかし、リーダーがどんなに強い意思をもったとしても、たった一人で組織の変革をすることはできません。  

 

リーダーが、ともに変革を進める仲間を見つけようと組織の中をのぞいたときに、大きく2つの立場があることに気づきます。 

 

一つは、組織を変えるのはリーダーの役割で、自分には関係ないという、評価者的、観察者的な立場。変革の意思を有していない人です。  

 

もう一つは、自らも組織を変えるプロセスの一部であると責任を引き寄せ、変革への意図と意欲を備えた参加者的な立場。変革の意思を有している人です。  

 

人の集まりである組織は、個人個人の意思があり、個人個人のルールがあり、それが相互作用、相互影響することによって、全体のダイナミズムを生み出している、いわば複雑系を宿した大きな生命体です。  

 

だからこそ、個人個人が、日々の言動の一つ一つを、ある方向に向けて、意思を持って選択することができれば、全体感を持った変化のムーブメントが起き始めることが期待できます。  

 

つまり、組織の変革がうまくいくかどうかは、変革の意思をもった変革の参加者が、組織内にどれだけいるのか? その物理的な「数」にあると言えるでしょう。    

 
 

 

変革の意思をもった人を増やす

 

マネジャーは、現場の起点となる存在です。つまり、マネジャーは、変革に向けた「参加者」を増やすエージェントの役割を担っているといえます。  

 

そして、変革の参加者を増やすプロセスに、コーチングは有効に機能するはずです。なぜなら、コーチングは「あなたには何ができるのか? あなたは何を変えるのか?」を問い続けるプロセスだからです。それは決して、個人の目標のみに向けた問いかけではありません。組織の一員として、変革への参加を誘うプロセスでもあるのです。  

 

* * *  

 

『変化はもはや1回のイベントではなく、「不断のプロセス」となった。』(※3)  

 

『リーダーは、「変化」を「時折、偶発的に起こる撹乱物質」ではなく、「マネジメント」の「本質」と捉えるべきだ。』(※4)  

 

組織に「変化」を起こすこと、「変化」を起こし続けることは、私たちリーダーにとって、もはや共通のミッションになったと言えます。この大変革時代、組織に「変革の意思を持つ人を増やす」ことが、組織がコーチングを活用する本質的な目的なのではないでしょうか。  

 

近い将来、「コーチング」という言葉の画像検索の結果に、「形式」「スキル」「効果」を超えた、私たちの感じるコーチングの価値がイメージとして表現されることを願ってやみません。    

 

 

【参考資料】

※1 "Building Strong Coaching Cultures for the Future", November 12, 2019(International Coaching Federation/Human Capital Institute)

※2 「Google マネージャーの行動規範」(Google re:Work)

※3 " Leading Teams through Change at the Speed of Business" by Elizabeth Doty, strategy+business, May 11, 2015

※4 "All Management Is Change Management" by Robert H. Schaffer, Harvard Business Review, October 26, 2017    

 

 

※この記事に関してのご質問は、(株)コーチ・エィまで、お気軽にお問い合わせください。 

 
 

 

【執筆・出典】

(株)コーチ・エィ 
長田祐典     
株式会社コーチ・エィ 執行役員
国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ
一般財団法人 生涯学習開発財団認定マスターコーチ
 

   


 

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