学生ローンを肩代わりする企業のベネフィット

 

 

   

 

 

ご存知のことではないかと思いますが、アメリカの大学でかかる学費は尋常ではない高騰が毎年のように続いています。そのために学生一人が抱え込む学生ローンによる借金はいまや平均4万ドルに達したものとみられ、学生ローンを抱える人の数はいまや4,470万人にものぼります(2018年)。負債額の合計は約1兆5,000億ドル、日本円(1$ = 110円換算)に直して何と165兆円にもなります。すでに消費者クレジットカードの負債総額を上回り、住宅ローンに次ぐ2番目の巨大な負債額としてランクインしています。    

 

学生ローンの負債額はとりわけ2007年以降膨張をし続け、2018年は2007年当時と比べて3倍にまで膨れ上がっています。2010年にオバマ政権が民間からの一部融資制度を廃止し、基本的に連邦政府からの融資に転換したのを契機に大学側が学費をいっせいにしかも大幅に引き上げたのが学生ローンの負債額膨張の引き金につながったといわれています。2018年第4四半期におけるローンの滞納額は過去最悪の1,660億ドル(18兆2,600億円)となり、不良債権率は11%にのぼります。多くの若者がローンの返済不能に陥りつつあることが深く危惧される状況となっています。    

 

そんな最中、先月6月に次期大統領選の民主党有力候補の一人である、バーニー・サンダース上院議員が大学の無償化と学生ローンの負債額をすべて免除するという法案を提出し、世間の耳目を集めました。まさに夢物語のような誠に突拍子もない法案ではありますが、サンダース議員は2008年に起こったリーマンショックの際に国民の税金によって救済されたウォール街に対して、株式取引などの金融取引に一定の新税を課す別法案を出すことによって大学の無償化と学生ローン返済免除を実現したいとしています。しかしながら、民主党内からも懐疑的な意見が多く、もちろん共和党からは実現不可能な巨額政府支出につながるということで真っ向から大反対を受けています。    

 

法案提出の良否はさておいて、いまや学生ローンは次期大統領選のアジェンダの一つとして取り上げられるにまで至る重要政策であると申し上げるのにまさに異論はないと思われます。しかしながら、天文学的数字に膨れ上がった学生ローンを大統領選の政争の種として使ったり、連邦政府からの巨額支出で御破算にしようというのは私個人からしてもあまりに非現実的であり、虫が良すぎるのではないかと察しています。そこでより現実的な解を探すべき方向として、大統領候補者や政府を頼るのではなく、それら学生ローンを抱え込んだ若者を雇用する会社側が何らかの救済措置の手を差しのべるというのも大いにありではないかと考えるのは自然の論理ではないかと思われるところです。    

 

ここ1、2年の中での新しいトレンドでありますが、会社が採用した従業員の抱える学生ローンを一部会社が肩代わりをする、あるいは会社でローンの借り換えプランを従業員に提供するという動きが出てまいりました。導入しているのはまだアメリカの企業だけのようですが、これは日系企業であっても十分導入可能な従業員へのベネフィットになりうるものであり、従業員採用とリテンション(つなぎ止め)策だと考えられます。先ほど指摘しましたように2010年以降に大学に入学した人は少なからぬ学生ローンを抱えて社会に輩出されます。大学卒業後、首尾よく就職できた人であっても毎月の学生ローン返済という重荷を強いられます。そのために大学を卒業しても親と同居して暮らす「パラサイトシングル」が急増しており、アメリカではかつてなかった現象として今後の消費性向や不動産市場、さらに婚姻などにも負の影響が出てくることが懸念されているのです。    

 

さて、このような現状を打開しようとして良心的な金融機関やソーシャルビジネスをベースとしたスタートアップ企業が学生ローン返済のためのプランを企業向けとして商品化するようになりました。まず、ローンの借り換えプランとしていくつもの学生ローンを一つに束ねて、もっとも有利な低金利として借り換えすることができるプランを会社が窓口になって従業員に提供するというものです。次に従業員の子弟が今後高等教育に進んでいくに当たりその教育費援助の積み立てをやはり会社が受け皿になって提供します。ここまでは、その仕組みさえプラン提供会社と組めれば、会社の負担はほとんどなくそのベネフィットを対象となる従業員に供与することが可能となります。    

 

そして最後に学生が抱えるローンの一部を会社が肩代わりするプランが挙げられます。これは Student Loan Pay-Down(SLP)プランと呼ばれています。毎月、会社は従業員が会社に勤めている期間は一定金額のローン返済額を従業員とともに支払っていくというプランになります。返済額は従業員のペイロールから従業員の同意にもとに自動的に差し引かれ、ローン返済先に払い込まれます。このプランを提供することによって、会社の大卒従業員の採用ならびに採用後のリテンションに多大な恩恵をもたらしてくれることが期待されます。このようなプランはまだ尾に就いたばかりなので、実際にどのくらいの効果があるのか、まだはっきりとしたデータも出ていませんが、少なくとも会社のイメージの向上、そしてミレニアル(Millenniums)と呼ばれる20代や30代の若い世代の採用に関してポジティブな影響があることは誰もが予測し得ることではないでしょうか。    

 

考えてみれば、中高年の従業員は会社から提供されている医療保険の恩恵に最もあずかっている世代であるといえます。若い世代はあまり疾病や生活習慣病にかかる度合いは少ないので、同額の保険料の支出に関しての恩恵という面では割を食っている感が否めません。また会社がスポンサーする401 (k) などのリタイアメントプランについても50歳以上の世代には「キャッチアップ」といって余分に積み立てができる特典があります。このように会社提供のベネフィットというのはどちらかというと中高年世代により有利にその恩恵が供与される仕組みとなっています。その恩恵を最も享受できていないのがミレニアル世代であって、しかも彼ら彼女らは若いうちからすでに半端ではない借金を抱え込んでしまっているわけです。    

 

すでにアメリカの労働人口の中でこのミレニアルは最大グループに達しています。会社が今後採用する従業員の多くはミレニアル世代の人々です。その世代は首が回らないような借金漬けの状態で就職先を求め、仕事を見つけた後も借金返済に明け暮れなければならないというのでは残念ながら健全な就業環境に恵まれているとは申し上げられません。その一助として政府や選挙戦頼みにするのではなく、会社の施策として、そしてベネフィットとして学生ローン返済プランを導入する会社が今後当たり前に出てくるというトレンドを期待したいと思います。そしてそれは日系企業としても対岸の火事ではなく、他山の石として自社の従業員採用戦略の俎上に載せていただくことが可能なのではないでしょうか。    

 

 

【執筆】

酒井健吉氏(Ken Sakai)

President & CEO

Pacific Dreams, Inc.

Email :kenfsakai@pacificdreams.org

www.pacificdreams.org

 

【酒井健吉氏プロフィール】

 

           

 

信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。  

 


 

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