日本からの出張者受入れは大丈夫?~トランプ政権下でのESTA入国対策を弁護士が解説!~

 

 

 

 

【アメリカの人事部】

 

ESTA入国審査の現状

ICE(United States Immigration and Customs Enforcement:アメリカ合衆国移民・関税執行局)による不法移民取締りが強化される中、ESTAで渡米する日本からの出張者がうまく入国できるか、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

ご懸念のとおり、トランプ政権下でESTAでの入国審査は前政権下よりも厳しくなっているといわれています。実際、過去には日本人女性が一人で入国しようとした際、現地での活動実態(不法就労等)を厳しく追及され、入国拒否に至ったケースも報道されました。また、2025年9月にジョージア州の大手自動車メーカーのEVバッテリー工場の建設地にICEの立入捜査が入り、400人超が移民法違反の疑いで逮捕されました。逮捕された方の中にはB-1ビザやESTAでの出張者も含まれていました。出張者として合法に入国したにもかかわらず、就労資格がないのに就労していたという移民法違反の事例も複数含まれていました。

これまでは、ESTAによる出張者が入国後に米国内で何をしているかを連邦政府が把握する余地はほとんどありませんでした。しかし、現政権下でICEの予算と人員が増大したことにより、出張先にICEの立入捜査が入り、現場に居合わせたESTAでの出張者が就労していると疑われるリスクが高まっています。

ICE の取締り強化と並行して、入国審査の際もESTAで滞在中の就労を疑われることが多くなっています。疑われた際に、「米国で就労しない」、すなわち、「ESTAで許容されている活動しか行わない」という主張を裏付ける客観的な証拠・資料を示し、誤解が生じないよう明確に説明できる準備・対策が重要です。

一概に入国審査官やICE職員といっても、厳格な法執行を重視する審査官から、比較的柔軟な対応をする審査官まで様々です。万全の対策をしたにもかかわらず、入国審査が緩かった場合は、比較的緩めの方にあたったと言えます。ただ、事前準備は、一番厳しい審査官にあたっても大丈夫なレベルにしておくことをお勧めします。

法令上、ESTAで許容されている活動とは?

ESTA(Electronic System for Travel Authorizationの略)とは、米国政府が指定する特定の国の国民が利用できるVisa Waiver Program(ビザ免除プログラム)です。許容されている活動内容は、B-1ビザ(短期商用ビザ)やB-2ビザ(短期観光ビザ)と同じです。

ESTAやB-1ビザには、就労権がついていないので、米国での就労はできません。許容されている活動は主に以下のとおりです。

  • ビジネス関連の契約交渉・ミーティング
  • 学会や展示会などの専門会議・カンファレンスへの参加
  • ビジネス目的での視察・ツアー・調査
  • 短期研修

入国審査の際には、上記の活動を行うための渡米であると明確に証明できる資料の準備が重要となります。

 

ESTAでの滞在期間は?

ESTAでの制度上は、最長90日間の滞在が認められています。ただ、入国審査で、「滞在期間は?」と聞かれたときに、「約3ヶ月です。」と答えると、一気に入国審査が厳しくなります。というのも、ESTAでの滞在で許容されている活動(ビジネス・ミーティングや展示会や学会などへの参加)は、一般的に1~2週間で完了することが多いためです。また、日本にメインの仕事がある場合、通常、3週間以上不在にするのは難しいはずで、1~3ヶ月単位で米国に滞在する場合、米国での活動で生計を立てているのではないか、すなわち、実質的に米国で就労するのではないかと推測されてしまいます。

入国審査でESTA滞在中の就労を疑われないためには、出張期間を1~2週間に抑えるのが一般的に望ましいといえます。どうしても1ヶ月以上の滞在が必要な場合は、参加するミーティングやイベントの詳細を説明できるようにしておきましょう。滞在期間が比較的短い場合でも、渡米の頻度が多いと、入国審査が厳しくなる傾向にありますのでご留意ください。

 

ESTAでの入国審査に備えての持参書類

次に、ESTAで許容されている活動を示すには、具体的にどのような書類を持参するのがよいか、見ていきましょう。米国入国直後は通信が不安定な場合もあるので、スマホやタブレットだけに頼らず、紙に印刷して、入国審査のカウンターでいつでも見せられるようにしておくことをお勧めします。

  1. 帰りの航空券の予約確認メール
  2. 滞在期間中のホテルの予約確認メール
  3. 参加イベントのウェブサイトとイベントへの参加登録完了メール
  4. ミーティングの場所・日時を決めたやりとりのメール(先方のSignature Blockがあった方がベター)
  5. ミーティングをする会社のウェブサイト、ミーティング相手のBioページ、LinkedIn プロフィール等

全件で必要とまではいえませんが、出張期間が長い場合や渡米頻度が多い場合等、就労が疑われるおそれが大きいと思われる際には、日本の所属会社からのカンパニーレターや米国の受入側からの招待状を用意すると安心です。

 

カンパニーレターに盛り込むべき内容は?

日本の所属先から発行するカンパニーレターには、会社概要、出張者を派遣する目的、出張者の予定(ESTAで許容されている範囲内の活動を行うこと)、米国出張中も出張者に日本で給与を支払い続け、旅費や滞在費等も負担すること等を盛り込みます。可能であれば、移民法を理解している弁護士等に作成またはチェックをしてもらうと安心です。

 

入国審査の心構えと想定問答

入国審査時の質疑応答には、「聞かれたことに短く的確に答える。余計なことは言わない。」という心構えで臨みましょう。これは、警察での事情聴取や裁判での証人尋問を受ける場合と同様の姿勢が求められます。会話を弾ませるためのおしゃべりや不要な情報開示はマイナスに働く場合が多いので、控えましょう。

渡航目的

審査官:What is the purpose of your visit? 渡航の目的は何ですか。

出張者:For business meetings / attending a conference ビジネス・ミーティングのためです。/カンファレンスに出席するためです。

上記のとおり、就労をしないかどうかを確認するための質疑応答なので、「For Work(仕事で)」という回答はNGです。

 

滞在期間

審査官:How long will you stay? どのくらい滞在しますか。

出張者:For 10 days. 10日間です。

 

滞在先

審査官:Where will you stay? どこに滞在しますか。

出張者:At a Hilton hotel in Midtown. ミッドタウンのヒルトンホテルに滞在します。

審査官が求める場合に備え、すぐにホテルの予約確認メールを出せるようにしておきましょう。

 

帰国予定

審査官:When will you return? いつ帰国しますか。

出張者:March 5. 3月5日です。

 

審査官:Do you have a return ticket? 帰りの航空券はありますか。

出張者:Yes.

審査官が求める場合に備え、すぐに帰りの航空券の予約確認メールを出せるようにしておきましょう。

 

職業

審査官:What do you do for work? お仕事は何をされていますか。

出張者:I am a manager at a trading company. 商社のマネージャーです。

日本を拠点にしながら米国の子会社のポジション(取締役やオフィサーなど)を兼務している場合、米国で就労するつもりであるとの誤解を避けるために、聞かれていない場合は、情報提供を避けた方が賢明です。

 

まとめ

厳しい入国審査官にあたった際のESTA入国対策、いかがでしたでしょうか。本記事がESTAでの入国対策の一助になれば幸いです。


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本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、制度・運用は日々変更がありますので、ご留意ください。
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【執筆】

 
 
 
Inoko Law and Consulting, LLC
Principal Attorney
猪子 晶代   (Akiyo Inoko Hewett)
Email: contact@lawyer-akiyo.com
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/akiyo-hewett/ 
 
 
【プロフィール】
日本および米国の弁護士資格を有し、主に米国で企業法務の経験を積む。米系大手法律事務所の日本チームにて、日系企業の米国子会社を中心に、コーポレートガバナンス、契約、M&A、コンプライアンスなど幅広い法務を担当。その後、日本発ヘルスケア・スタートアップの米国法人において、契約・コンプライアンスに加え、登記、人事、ビザ対応など米国子会社の運営全般に携わる。

2024年にInoko Law and Consulting, LLCを設立。現在は、日本発のヘルスケア・スタートアップをはじめとする日系企業に対し、Fractional General Counselとして米国事業に関する継続的な法務支援を提供している。


 

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