【アメリカの人事部】2026年、米国の最低賃金はただ上がるだけではない - 知られざる4つの真実
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見出しの裏側にある真実
2026年も1月1日から、アメリカの多くの州や市・郡で最低賃金の引き上げが実施されました。
具体的には、1月1日時点で19の州と49の市・郡で最低賃金が引き上げられ、その後も段階的な改定が続き、年間を通じて合計88の管轄区域(22州、66市・郡)で賃上げが行われる予定です。
一見すると、これは労働者にとって明るいニュースに映ります。
しかし、この動きの本質は、単なる「時給アップ」ではありません。
地域間で拡大する賃金格差、高賃金と高コストのねじれ、雇用側が直面する見えにくい調整圧力、そして賃金制度そのものの再設計。
2026年の最低賃金改定は、アメリカの労働市場がどの方向へ進みつつあるのかを映し出す構造的な変化でもあります。
以下では、表面的な数字の裏側にある、特に重要な4つのポイントを整理します。



ポイント①:拡大し続けるアメリカの賃金格差
2026年も、最低賃金の引き上げは全米各地に広がっています。
年初の改定だけでも多数の州・市・郡が対象となり、年内を通じてさらに引き上げが予定されています。
一方で、連邦政府が定める最低賃金は、2009年以降、時給7.25ドルのまま据え置かれています。
その結果、最低賃金を積極的に引き上げる州・都市と、連邦水準にとどまる地域との間で、労働者が得られる「最低限の収入水準」に大きな差が生じています。
この格差は、単に州同士の違いにとどまりません。
同じ州の中でも、市・郡ごとに最低賃金が異なるケースが増えており、働く場所が数マイル違うだけで時給が大きく変わるという状況が常態化しています。
最低賃金は、もはや「全国共通の安全網」ではなく、地域ごとに分断された制度へと変化しつつあります。
ポイント②:高賃金・高コストというパラドックス
最低賃金が高い地域ほど、生活が楽になるとは限りません。
実際には、最低賃金を積極的に引き上げている州や都市ほど、生活コスト全体も高水準で推移する傾向があります。
その結果、名目上の時給は上昇していても、生活の余裕が実感しにくいという矛盾が生まれます。
最低賃金の「数字」だけを見ていると、実際の生活水準とのズレが見えなくなります。
このパラドックスを背景に、賃金水準は低くても生活コストを抑えられる地域へ移住する労働者も増えています。
最低賃金は、単独で機能する指標ではなく、生活コストとの関係性の中で初めて意味を持つことが、より明確になっています
ポイント③:見えにくい経済的トレードオフ
最低賃金の引き上げは、労働者にとって常にプラスだけをもたらすわけではありません。
現実の企業活動では、賃上げに対応するため、さまざまな調整が同時に行われます。
代表的なのが、労働時間の調整です。
時給が上昇しても、シフトや稼働時間が抑えられれば、週や月単位の総収入は大きく変わらない、あるいは減少する可能性があります。
また、賃金以外の部分、たとえば福利厚生や手当、昇給ペースの見直しといった形で、コスト調整が行われることもあります。
さらに、企業側のコスト増は、価格転嫁という形で消費者に波及する場合も少なくありません。
最低賃金引き上げは、単純な「賃金アップ政策」ではなく、雇用構造全体に影響を及ぼす選択であることを理解する必要があります。
ポイント④:「One Fair Wage」という静かな制度革命
最低賃金をめぐる最も重要な構造変化の一つが、チップ賃金制度の見直しです。
アメリカには、レストランなどで働く従業員を対象とした「チップを考慮した最低賃金(subminimum tipped wage)」 という制度が存在します。
連邦法では、雇用主は最低でも 時給2.13ドル の現金を支払えばよく、残りは従業員が受け取るチップで補うことが認められています。
この差額、最大 5.12ドル は「チップ・クレジット」と呼ばれ、雇用主が 最低賃金7.25ドル の支払い義務を果たしたと見なすための仕組みです。
しかし、この制度を廃止し、チップとは別に、すべての労働者に同一の最低賃金を支払うという考え方が、近年急速に広がっています。
これが「One Fair Wage」と呼ばれる流れです。
すでに複数の州では、チップ労働者にも通常の最低賃金を支払う制度が定着しています。
さらに市レベルでは、チップクレジットを完全に廃止し、地域最低賃金を全額支払うことを義務付ける動きが拡大しています。
アリゾナ州フラッグスタッフ市では、2026年1月1日からこの制度を全面的に適用し、チップに関係なく地域最低賃金を全額支払う仕組みへ移行しました。
同様の考え方は、西海岸、北東部、観光・サービス産業が集中する都市を中心に、着実に広がっています。
これは、チップに依存した不安定な収入構造から、予測可能で安定した賃金体系へ移行する流れを象徴する変化です。
結論:問われているのは「賃金の額」ではなく「価値」
最低賃金改定は、単なる賃上げではありません。
地域間格差の拡大、高賃金と高コストのねじれ、雇用側と労働者の間での調整、そして賃金制度そのものの再定義が、同時に進行しています。
いま問われているのは、「最低賃金はいくらか」ではなく、「その賃金体系は、持続可能で、公平で、生活実態に即しているのか」 という点です。
この記事はHR Linqs, Inc.のウェブサイトでもご閲覧可能です。こちらの記事に関してのご質問は、HR Linqs, Inc.まで、お気軽にお問い合わせください。
【執筆】
HR Linqs, Inc.
President & CEO
榊原 将 (Sho Sakakibara)
155 N. Lake Avenue, 8th Fl. Pasadena, CA 91101
Email:ssakakibara@hrlinqs.com
Phone : 626.808.8642
www.hrlinqs.com
「プロフィール」
多様な規模や業種の企業に対し、複雑な人事管理のサポートを提供。
1995年にオレゴン州ポートランドへ移住し、サンフランシスコ大学を卒業後、2006年に米系人事関連企業に参画。13年間にわたり、様々なプロジェクトに携わる経験を積む。2019年、HR Linqs社を設立し、就業規則の策定、人事関連文書の整備、セクハラ防止研修、人事考課の策定・導入、解雇やレイオフへのサポート、人事・労務に関する専門的なアドバイス、雇用から退職までの人事業務のアウトソーシングなど、総合的な人事労務コンサルティングを日本語と英語で提供している。さらに、「アメリカ人事界隈」と題したブログを通じて、米国の人事関連の最新ニュースを毎日視覚的に発信。
最近では、企業研修サポートに力を入れ、「HR Linqs Learning」というE-Learningポータルを立ち上げ、企業向けの人事研修やコース設計にも注力。これにより、人材育成のための総合的なサポート体制を整え、より広範な人事支援を提供。企業の成長を強力にバックアップする体制を強化している。
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