【アメリカの人事部】AIは地震やハリケーンと同じか？/ サンフランシスココンセンサス × Eric Schmidt × 人事の新しい危機管理
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いま世界で語られる「サンフランシスコ・コンセンサス」とは
2024～2025年、シリコンバレーの一部のAI専門家・経営者の間で
「サンフランシスココンセンサス（San Francisco Consensus）」
と呼ばれる考え方が台頭してきました。
その中心人物の1人が Google の元CEO、Eric Schmidt* です。
彼らの共通する主張はこうです：
- AIは指数関数的に賢くなる
- AIは自律的に計画し、自律的にタスクを遂行する
- 高度化したAIは“完全にコントロールすることが不可能”
- 社会はAIの加速を前提に制度を再設計しなければならない
つまり「人間が手綱を握り続ける」という前提そのものが崩れつつあるのです。
Eric Schmidt の主張の“本質”
Eric Schmidt は多くの講演で次のような趣旨を述べています：
- AIの進化速度は人間の想定を超えている
- 制御よりも「衝撃に備える」ほうが現実的
- 法律と制度はAIのスピードに追いついていない
- AIは社会インフラ化し、止めることはできない
彼は「AIは暴走する」と言いたいのではありません。
彼の本質的メッセージはこうです。
AIは複雑すぎて、人間が完全に理解したり監視し続けたりすることは不可能。
だから“制御”ではなく“レジリエンス（被害を減らし、うまく付き合う）”が必要である。
この考え方を、私は次のように整理しています。
“AIは地震・ハリケーンのような自然現象に似ている”という考え方
私は、AIの未来像を理解しやすくするために、
自然災害（地震・台風・ハリケーン）になぞらえる比喩が最も正確だと考えています。
理由は3つあります。
地震もハリケーンも「いつ発生するか」「どこに影響が出るか」を完全に予測できません。
高度AIも同じです。
- AIの内部計算はブラックボックス化
- 自己改善サイクルが人間の理解速度を超える
- 急激な性能ジャンプがおきる
“予測困難”という点で自然現象と同じ構造です。
自然災害は止められません。
AIも同じです。
- 社会インフラに深く組み込まれる
- 世界中の企業・政府が利用する
- 一国の規制だけでは止まらない
AIが高度化する流れ自体は、もはや止めようがありません。
自然災害は「どう止めるか」ではなく
「どう被害を最小限にするか」が重要です。
AIも同様で、
“完全なコントロール”を前提に設計してはいけません。
必要なのは
AI災害レジリエンス（AIに強い組織体制）
です。
では、アメリカ人事（HR）はどう備えるべきか？
ここからが最も重要な部分です。
AIは単なるツールではなく、
“従業員・組織・法律・コンプライアンスに影響を与える巨大現象”になります。
人事部は今後、次の対策が不可欠です。
① AI利用ポリシー（AI Handbook）を整備する
2026年から州別AI法が急増します。
以下を明文化する必要があります：
- AI利用時の責任の所在
- 個人情報をAIに入力してはならない
- AIのアウトプットを鵜呑みにしない
- 採用でAIを使う場合の透明性確保
- AIが行った判断の監査プロセス
- 従業員研修（AIリテラシー教育）
これは後回しにすると危険です。
AIポリシーはハラスメントポリシーと同じレベルで必須になります。
② “AIで消える業務”と“AIでも消えない業務”を仕分ける
AI洪水地域（まっさきに浸水＝消える仕事）
- データ入力
- 経費処理
- 採用の一次スクリーニング
- スケジュール調整
- レポート／マニュアル作成
- 基本的な事務仕事
AI高台地域（残る仕事）
- ハラスメント対応
- 労務相談・労使関係
- コミュニケーション・調整
- トラブル案件の解決
- 倫理判断・人間理解
- 店舗オペレーション・現場判断
- 経営近い意思決定
企業はこの“地形図”をもとに
再配置・育成・役割設計を進めるべきです。
③ AI版「災害計画」をつくる
人事はAIリスクへの次の3層の備えが必要です。
AI利用ルール、入力制限、研修、データ管理
AI誤作動・情報漏えい時の緊急対応手順
システム復旧、情報訂正、影響を受けた従業員へのケア
これはまさに AI版のBCP（事業継続計画）です。
結論：AIは“自然現象”、人事は“レジリエンス”をつくる時代へ
サンフランシスココンセンサスや Eric Schmidt の主張を総合すると、
AIはもはや「管理する対象」ではありません。
- 止められない
- 予測できない
- 依存せざるを得ない
- 社会インフラ化している
だからこそ私は、
AI＝自然現象（地震・ハリケーン）
という比喩が、今後のアメリカ人事を語るうえで最適だと考えています。
企業と従業員を守るために必要なのは
“AIの制御”ではなく、“AIへのレジリエンス（耐性）”
を組織として構築していくことです。
*Eric Schmidt Googleの元CEO（元最高経営責任者）
エリック・シュミット氏は、AI（人工知能）が多くの人々が想像するよりもはるかに速いスピードで進化していると明らかにした。
1年以内に、AIは大学院レベルの数学者と同等の能力を持ち、主要な研究機関ではコードの10～20％をAIが書くようになるという。
サンフランシスコ・コンセンサスによると、数学・芸術・政治の分野で人間を上回る汎用人工知能（AGI）が3?5年以内に実現すると予測されている。その後、6年以内には超知能（ASI：Artificial Super Intelligence）が登場する可能性もある。
シュミット氏は、法制度や社会制度がこの急激な変化に対応できていないと警告している。
この指数関数的な変化は、私たちの想像以上の速さで世界を作り変えつつある。
▼出所の動画
https://www.youtube.com/shorts/BGIdfOqpwB4
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【執筆】
President
山口 憲和 (Norikazu Yamaguchi)
【プロフィール】
MBA, SHRM-SCP
CA Insurance License: 0F78137
日本キャッシュフローコーチ協会認定コーチ 会員番号463
群馬県高崎市出身
2000年より米国型人事コンサルティングを行う。
2004年からロサンゼルスに拠点を移し、日系企業を中心に500社以上のコンサルティングを経験。米国人事に欠かせない保険のライセンスも取得し米国人事のサポートを行っている。
また、米国人事プロフェッショナルとしての資格 SHRM-SCP=SHRM(Society for Human Resource Management=米国人材マネジメント協会）Senior Certified Professionalを取得。
（学歴 ）
群馬県立高崎高等学校卒業
東京外国語大学 外国語学部
中国語学科卒業 中国 復旦大学 国際文化交流学院修了
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 修士課程修了（MBA）
（職歴）
全日本空輸株式会社（ANA）、Mercer Human Resource Consulting等を経て現職
（共著書）
A&R優秀人材の囲い込み戦略A&R優秀人材の囲い込み戦略
【会社情報】
Philosophy Insurance Services
所在地：609 Deep Valley Drive Suite 358 Rolling Hills Estates, CA 90274
TEL 310-465-9173
【事業内容】
日系企業向け人事コンサルティング・保険代理店業務
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