【アメリカの人事部】米国雇用情勢レポート(8月)

 

 

 

【アメリカの人事部】米国雇用情勢レポート(8月)

 

<雇用統計はネガティブサプライズ> 

雇用情勢を見る上で最も注目される、米労働省発表の雇用統計(7月)は、ネガティブサプライズとなった。特に、非農業部門新規雇用者数は7月単月でも7万3000人増とブレークイーブン(失業率が上がらないために必要な雇用者数)を下回ったほか、5月及び6月の数値が各月10万人超の下方改定が行われた結果、3カ月移動平均では3万5000人増とコロナ後最低水準を記録した。

また、失業率も4.2%(前月から0.13ポイント上昇)となった。昨年もこの時期に失業率の上昇を伴う労働市場の軟化が見られたが、①昨年は労働市場が労働供給の増加を吸収しきれなかったために発生したのに対し、②今年は移民政策などによって労働供給が減少しているにも関わらず、労働需要がそれ以上減速しているために発生した事象である、という点が大きく異なる。労働需要の減速は、平均失業期間も24.1週と2022年4月以来の高水準となっていることや、不本意非正規雇用労働者の増加などにも表れており、企業がいかに採用抑制を強めているのかが伺える。

こうした労働需要の減速を受け、賃金も伸び悩むセクターが見られ始めている。今月の平均時給の上昇率は全体では前月比0.3%増となったが、賃金上昇の伸びがみられたセクターは、小売業(新学期商戦に伴う一時的な労働需要の増加によるもの)や金融業など一部にとどまり、製造業や建設業、娯楽・接客業など労働需要が減速しているセクターでは賃金上昇の伸びは低下ないしマイナスとなっている。関税引き上げの影響によって、今後数か月間インフレ率の上昇も予想されており、実質賃金の伸びがゼロないしマイナスになるような展開が続けば、消費の減速が更なる労働需要の減少を生むことになるかもしれない。

<雇用統計以外の主な指標の動向

雇用統計以外の主な指標が示すシグナルはまちまちだ。米労働省が発表している失業保険給付申請者数に関しては、7月第4週時点の新規申請数は22万1000人(4週平均)と6月第4週時点(24万1250人)から低下した。ただし、総受給者数については微減にとどまっており、再就職の困難さが続いていることを示している。6月の求人統計(JOLT)が示す方向性も同様だ。求人数は743万7000人と前月(771万2000人)よりも大きく低下する一方、レイオフ数は160万4000人と前月(161万1000人)と殆ど変わっていない。これらの統計からは、求人・レイオフともに少なく、労働市場自体は未だ緩やかな減速に留まっているというシグナルを受け取ることも可能だ。

 他方で、先行きの懸念を示す指標もある。チャレンジャーグレイ&クリスマスが発表したジョブカットレポートでは、7月に発表された人員削減計画数は6万2075人とコロナ後の同月の平均(2万3584人)を大きく上回るものとなっている。関税に伴うコスト増や需要の変動・不確実性などによって小売や自動車といったセクターでの人員削減が進められていることが報告されており、上述のように消費減速が継続すればこうしたセクターでの人員削減が更に進められることになるかもしれない。

 

<FRBの金融政策への影響は?>

パウエル議長は7月のFOMCにおいて、関税引き上げの物価に対する影響に関して、ⅰ)関税による価格上昇は一時的なものとなるのがベースラインケースだが、持続的なインフレ圧力となるリスクもある、ⅱ)企業の価格転嫁の動向は予想していたよりもゆっくりとしたペースの可能性もあり動向を注視していく必要があるとの見解を示す一方、労働市場はなお最大雇用に近い状態にあるとし、労働市場が持ちこたえていることを政策金利維持の一つの根拠としていた。しかしながら、今回の雇用統計では、労働市場の減速が明確となり、インフレと雇用のリスクバランスが後者に傾いた形だ。もっとも、次回会合(9月16日、17日)までには、雇用統計は1回、消費者物価指数は2回発表が予定されている。9月利下げの可能性は高まったものの、関税引き上げの物価への影響は今後数カ月で本格化するとみられ、今後発表される統計の結果次第ではどちらのリスクを重視すべきかに関するFOMC参加者の見解が大きく分断される可能性もある。現に、雇用統計後にコメントを発しているクリーブランド連銀のハマック総裁やアトランタ連銀のボスティック総裁らは引き続きインフレリスクに言及しつつ、経済統計を注視する発言を行っている。


 

 【執筆】

 

                     

JETRO NY

ニューヨーク事務所

調査担当ディレクター

加藤 翔一 (shoichi Kato)

 

「プロフィール」

東北大学公共政策大学院卒。2009年、内閣府入府。

内閣府では、マクロ経済分野や地方活性化分野を中心に政策立案に携わる。マクロ経済分野では、欧州政府債務危機時に欧州経済及び世界経済の動向分析を担当したほか、一億総活躍社会の実現に向けた中長期の経済・財政の在り方のプランニング等を担当。地方活性化分野では、岸田政権の「デジタル田園都市国家構想」の立ち上げやフレームワーク設計などを担当。

2023年7月よりJETROニューヨーク事務所に出向。出国のマクロ経済、財政政策を中心に、調査・情報発信を行っている。

 


 

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