【アメリカの人事部】米国移民・ビザ関連 最新情報
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【アメリカの人事部】米国移民・ビザ関連 最新情報
第2期トランプ政権の発足以降、その公約に沿うかたちで、米国の移民政策には目に見える変化が現れ始めています。とりわけ、移民規制の強化を重視する姿勢が色濃く反映されており、出生地主義の見直し提案をはじめとする制度改正や、合法的な移民経路の縮小を目指すさまざまな取り組みが進められています。ただし、大規模な制度変更においては、法的な異議申し立てや差し止め命令などにより、実施に至っていないのも現状です。一方で、既存制度の枠内における運用面では、すでに実務レベルでの変化が顕著となっており、違法越境者に対する取り締まりの強化やビザ審査の厳格化といった動きは、報道を通じてだけでなく、現場感覚としてそれを実感されている方も多いのではないでしょうか。
本稿では企業実務において影響が大きいと考えられる主な動向を整理します。
【1】ICEによる強制送還・監視体制の強化
第2期トランプ政権のもと、移民規制の強化を掲げた政策が次々と再稼働し、特にICE(米国移民・関税執行局)による強制送還や監視活動が全米で加速しています。こうした動きは、単なるレトリックではなく、連邦予算・執行権限・自治体との協力体制といった具体的なリソースの集中投入によって、すでに現場レベルで可視化されてきています。たとえば、国家警備隊(National Guard)や地元警察との連携を強化することで、違法越境者に対する大規模な摘発作戦の実施頻度が増加しています。また、Expedited Removal(米国内に2年未満しか滞在していない不法滞在者が即時送還対象となる簡易送還方針)の適用が拡大され、犯罪歴の有無にかかわらず、滞在記録が不十分な外国人への摘発が急増しています。さらに、公共医療や補助金などの社会サービスから不法滞在者を排除する政策も強化されており、滞在者本人だけでなく、その家族や同居者にも不利益が及ぶ可能性があると懸念されています。
更に注目すべきは、こうした強化の背景に、ICEの拘束・収容機能の大幅拡張があることです。連邦議会に提出された1,500億ドル規模の予算案では、拘留施設の増設、人員の拡充、移送インフラの整備などが想定されており、実際に収容数の急増に対応する施設の準備が複数の州で進められていると報じられています。
雇用主に対する監視・監督の目も、今後さらに厳しくなることが想定されます。特に、I-9フォーム(雇用主による従業員の就労資格確認)や、雇用ビザの条件・制限の厳格な遵守が求められています。このような状況下では、企業としても、社内の就労管理プロセスを定期的に見直し必要に応じて強化を図ることによって、法令順守体制を維持・強化していく姿勢が不可欠です。ランダムな監査や抜き打ち調査が行われることもあり違反が確認された場合には罰金の方か法的責任を問われるリスクもあります。したがって、雇用主としては、就労資格の確認体制だけでなく、ビザ条件の実務上の履行状況(勤務地・職務内容・労働時間・報酬等)にも継続的な注意を払い、万全な管理体制を維持しておくことが、今後ますます重要になるといえるでしょう。
【2】一時的保護資格(TPS)の終了と企業への影響
米国政府は現在、特定国の出身者に対して認めていた一時的保護資格(Temporary Protected Status:TPS)を終了する措置を進めています。TPSは、戦争や自然災害などの影響により当該国への安全な帰国が困難と判断された場合に、米国内での一時的な滞在と就労を認める制度です。この「帰国困難性」の判断は、連邦政府の裁量により決定されるものであり、今回の終了措置は、バイデン政権下で繰り返し延長されてきた国においても、「状況が安定した」との判断に基づいて講じられたものです。これにより、TPSに基づいて合法的に就労していた労働者は、資格失効と共に就労許可を喪失することとなります。この影響は個人にとどまらず、当該人材を雇用していた企業にとっても、突発的な労働力喪失によるオペレーション上のリスクが生じる点に留意が必要です。
【3】出生地主義の制限試みとその先行き
政権側は、“Birthright Citizenship(出生地主義)”の制限に向けた動きを見せています。これは、米国に滞在中の外国人(不法滞在者や学生ビザ保持者など)の子どもに対して、自動的に市民権を付与する制度を見直そうとする試みです。2025年2月、これに関連する大統領令が発表されましたが、すぐに連邦裁判所による差し止め命令が出され、現在も憲法上の争点として係争中となっています。従って、現時点で即座に影響が出るものではありませんが、将来的に制度が変更された場合、駐在員家庭の子どもに対する市民権取得の前提が変わる、また家族帯同時のリスク評価に影響を及ぼす可能性があるといった観点から、企業としてもこの動向をフォローしておく必要があります。
【4】非移民ビザ面接予約困難
ここ数か月、在日米国大使館および各領事館では、非移民ビザの面接予約が非常に取りづらい状況が続いています。ビザの種類によって傾向は異なるものの、いずれも例年に比べて大幅な待機期間が発生しており、計画的な対応が不可欠です。
就労ビザ(E・L等):最近は若干改善の兆しが見られるものの、これまで一時的に3か月先まで予約枠が埋まり、急な出張や赴任には対応しづらい状態が続いていました。スケジュールには余裕をもって対応する必要があります。
留学・研修ビザ(F・M・J):現在も面接枠は極めて限定的で、Social Media Vetting(SNSアカウントの審査)※が導入されたことで、審査遅延も発生しております。
※申請者のFacebook、Instagram、X(旧Twitter)などの投稿内容が新たに審査の対象となり、全てのSNSアカウントを公開設定にすることが求められ、面接後にその審査が実施されます。審査期間は明示されておらず、渡米予定日に間に合わないリスクもあります。
短期商用ビザ(B-1):東京・大阪の領事館では数か月先まで予約枠が埋まっており、ESTAで渡航ができない出張者が大きな影響を受けています。このため、比較的枠の取りやすい那覇領事館での面接を選ぶ企業も増加しています。
東京の大使館においては、すでに2026年1 月分までの面接枠が公開されており、予約も可能な状態です。年末年始に向けてビザ申請や渡航を予定している場合には、今の段階から面接予約の確保を進めることが強く推奨されます。
【5】ビザ審査全般における運用の厳格化と注意点
在日米国大使館・領事館での審査においては、第2期トランプ政権の発足以降、制度運用の厳格化が進んでおり、バックグラウンドチェックの強化や、RFE(追加書類要請)、Administrative Processing(追加審査)に移行するケースが増加しています。提出書類の整合性や、記載された事実の一貫性・裏付けの精度がこれまで以上に厳しく審査対象となる状況が続いています。実務の感覚としては、法的要件を適切に満たしている案件であれば、審査方針が厳しい中でも引き続き許可が得られているという印象があります。実際に、弊所では第2期トランプ政権発足以降、在日米国大使館・領事館での却下事例は確認されておらず、追加書類や説明が求められた案件においても法的根拠に沿って事実関係を整理・説明し許可されているのが実情です。
一方で、面接審査に割り当てられる時間は一人あたりわずか2-3分程度とされており、この短時間の中で審査官に懸念を抱かせず、要点を明確かつ簡潔に伝えられるかどうかが結果に大きく影響するのも事実です。法的枠組みに即して構成された申請内容を、実態に即した事実に基づき、論理的・説得的に提示できるかどうかが、書面・面接ともに重要な要素となっています。
面接予約の取得が困難な状況に加え、審査そのものにも遅延リスクが伴う現在の情勢を踏まえると、ビザ申請手続きは可能な限り前倒しで進めていただくことを推奨いたします。
【執筆】
冨田法律事務所 パートナー弁護士
比嘉 恵理子 (Eriko Higa)
11835 W. Olympic Blvd., Suite 355E, Los Angeles, CA 90064
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【プロフィール】
ミシガン大学ロースクール卒業。在学中は同ロースクールの国際法学雑誌でマネージング・エグゼクティブ・エディターを務め、米国連邦控訴裁判所にて法務経験を積む。日本、南米、米国で移民として育った経験と語学力を活かし、日本企業向けの移民法務に従事。 企業の就労ビザ、研修ビザ、出張ビザ、永住権申請やコンプライアンスのアドバイザリーから、実業家、アスリート、アーティストなど個人のビザ申請や永住権申請まで幅広い分野で法務支援を展開。米国移民政策の動向に関する記事を各種ウェブマガジンに定期的に寄稿し、日系企業向けセミナーでの講演活動も行っている。
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