【アメリカの人事部】米国雇用情勢レポート(7月)

 

 

 

【アメリカの人事部】米国雇用情勢レポート(7月)

 

<雇用統計は表面上の強さとは裏腹に労働市場の減速継続を示す> 

雇用情勢を見る上で最も注目される、米労働省発表の雇用統計(6月)では、失業率は4.1%(前月から0.13ポイント低下)と、前月から予想外に低下した。ただし、低下の主たる要因は、求人の減少などを背景に労働市場自体から退出する者が増えたことや、外国生まれの労働力人口(移民)の減少などにより、労働供給が減少したことに伴うもので、今月は失業率の低下が労働市場の改善を必ずしも意味しないことに注意が必要だ。

また、非農業部門新規就業者数も14万7,000人と一見強い伸びとなっているが、こちらも労働市場の強さを意味していない。今月の伸びの半分は政府部門、特に州・地方政府による教育関連の採用によるもの(6万4,000人)で、こちらは一時的な要因とみられる。政府部門を除いた場合、民間部門の新規就業者数は7万4000人増と昨年10月以来の低い水準にとどまっており、製造業や卸売業などマイナスになる業種も散見される。こうした労働市場の減速傾向は、平均賃金の伸びの低下(前月比0.2%増、5月は0.4%増)、週当たりの平均労働時間の減少(34.2時間、前月34.3時間)などにも表れており、今月の雇用統計は表面上の強さと内実が全く異なる内容となっている。

 

雇用統計以外の主な指標の動向

労働市場の減速傾向の継続は他の統計からも確認できる。例えば、失業保険給付者数の動向をみると、継続して給付を受けている者は6月第3週時点で196万4,000人と2021年11月以来の高水準で推移している。特にホワイトカラーを中心にした求人の減少、一部の中小企業などで見られ始めた小規模なレイオフなどが影響している可能性がある。サプライマネジメント協会(ISM)のレポートでも製造業・非製造業を問わず、関税引き上げに伴う受注減・コスト増に伴う雇用の悪化が報告されており、前月のレポートで予想したとおり、関税引き上げの影響が本格化しはじめているとみている。

 

<OBBBは労働市場にどのような影響をもたらすか>

今月4日にトランプ大統領が署名した「大きく美しい一つの法案(OBBB)」は今後労働市場にどのような影響を及ぼすだろうか?

労働需要に関しては、企業向け減税が中期的に労働需要を増加させる可能性があるだろう。しかし、企業向け減税の内容を精査すると、設備投資等を行った場合にその動産・不動産に関して償却率を割り増しする内容が主となっていることに留意が必要だ。現状のように政策や景気の先行き不透明感の中で多くの企業が設備投資自体を見合わせる中では、短期的にメリットを受けられる企業はかなり限定的とみられる。すなわち、労働市場にプラスの影響は期待されるものの、法案がその効果を及ぼし始めるにはしばらく時間がかかると予想される。

労働供給に関しては、移民政策の強化に伴う移民労働力の更なる減少が予想される。特に、強制送還のボトルネックとなっていた執行官や収容施設に係る予算制約の緩和により、2026会計年度以降、強制送還のペースの加速が予想されるところだ。一部では、今後、移民の純流入数がゼロないしマイナスとなる可能性を指摘する声もある。2023年、2024年は年間300万人強の純流入があったことを踏まえれば、労働供給に今後深刻な影響が出てくる可能性もあり、既に農場やレストランなどで労働力の不足を懸念する声もあがりはじめている。こうした労働供給の不足に対して、OBBBでは、①メディケイドや低所得者向けフードプログラム(SNAP)受給における就労要件の導入、②企業に対する保育クレジットの導入、③チップ課税免除や残業代課税免除の導入、などにより就労意欲を促進し、労働参加率を向上させることで移民労働力減少への一定の回答としているように見える。しかしながら、これらの取組によって労働参加率の上昇に一定の効果が得られるとしても、移民労働力の減少を埋め合わせるには至らないかもしれない。また、筆者が在米日系企業と話す中では、移民労働力が担っていたポジションを米国人が代替することは、賃金および労働力の質の両面で困難な部分があるとの指摘もあり、労働市場のミスマッチも今後予想される。

これらの点を考慮すると、OBBBは中期的に労働需給を逼迫させる可能性が高い。企業にとっては、関税引き上げのコストを吸収するべく、短期的には雇用の引き締めが必要になるとみられるものの、中期的に見れば今の段階から従業員の確保・定着に向けた取組を強化していく必要があるかもしれない。


 

 【執筆】

 

                     

JETRO NY

ニューヨーク事務所

調査担当ディレクター

加藤 翔一 (shoichi Kato)

 

「プロフィール」

東北大学公共政策大学院卒。2009年、内閣府入府。

内閣府では、マクロ経済分野や地方活性化分野を中心に政策立案に携わる。マクロ経済分野では、欧州政府債務危機時に欧州経済及び世界経済の動向分析を担当したほか、一億総活躍社会の実現に向けた中長期の経済・財政の在り方のプランニング等を担当。地方活性化分野では、岸田政権の「デジタル田園都市国家構想」の立ち上げやフレームワーク設計などを担当。

2023年7月よりJETROニューヨーク事務所に出向。出国のマクロ経済、財政政策を中心に、調査・情報発信を行っている。

 


 

●「アメリカの人事部」ニュースレターのお申込み

クイックUSAは「アメリカの人事部」を発足し、在米日系企業様向けにニュースレターを配信させていただいております。アメリカでビジネスを遂行していくために、必ず知っておかなければならない法律、人事・労務、ビザなどの最新ニュースを定期的にお届けしております。

 

「アメリカの人事部」のニュースレターをご希望の企業様は、下記までお気軽にお申し付けください。   「アメリカの人事部」のニュースレターお申込みご希望の方はお手数ですが、会社名、ご担当者様氏名、役職、電話番号、会社のご住所、E-mailアドレスを明記の上、下記E-mailアドレスまでご連絡くださいますようお願いいたします。 

 

E-mail:info-usjinjibu@919usa.com  

 

     

 

「アメリカの人事部ニュースレター」のバックナンバーをご希望の方は、

E-mail:info-usjinjibu@919usa.com まで、 ご希望のナンバーをお気軽にお知らせください。  

 

 


 

【アメリカでのご採用をご検討中の企業様へ】

 

★採用でお困りなことはありませんか?

クイックUSAでは、アメリカでのご採用のお手伝いをしています。

フルタイム、パートタイム、派遣等、御社のご採用のお手伝いをさせていただきます。

お気軽に下記までご連絡ください。  

 


 

●人事・労務関連のご相談にも応じております。

クイックUSAではハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成、セクハラ防止セミナーの開催など、 人事労務関連のご相談も承っております。内容、お見積りなど何でもお気軽に下記までご相談ください。  

 

QUICK USA, Inc.

 

[ New York Office ](Headquarters)
150 East 52nd Street, Suite 17001, New York, NY 10022
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850  
 
 
[ Los Angeles Office ]
970 W.190th Street, Suite 590 Torrance, CA 90502
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
 
 
[ Dallas Office ] 
5525 Granite Parkway, Suite 740, Plano, Texas 75024
Email:quicktx@919usa.com
Phone: 214-563-4248
 
 
[ Chicago Office ]
10 N. Martingale Road Suite 400, Schaumburg, IL 60173 USA
Email:quickil@919usa.com
Phone: 646-796-6393 
 
 
[ Orange County Office ] 
2211 Michelson Dr, Suite 900, Irvine, CA 92612
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-722-3813
 
 
[ Atlanta Office ] 
1 Glenlake Pkwy NE, Suite 650 Atlanta, GA 30328 USA
Email:quickga@919usa.com
Phone: 847-924-1328

 

[ Detroit Office ]
39555 Orchard Hill Place Crystal Glen, # 600, Novi, MI 48375
Phone: 847-791-2504

 

【アメリカでのご転職・就職をお考えの方へ】

 

アメリカでのお仕事探し、就職・転職はクイックUSAにお任せください。

弊社のサービスにご登録がお済みでない方は、まずは英文履歴書のご登録をお願いいたします。

www.919usa.comより、オンライン登録をしていただくか、

quick@919usa.comまでE-mailにて英文履歴書を添付ファイルにてお送りください。

折り返しご連絡させていただきます。  

 

※クイックUSAではニューヨークとロサンゼルスを拠点に全米で、留学生や社会人の求職者に対してアメリカでの就職・転職のお手伝いをしています。ご紹介しているお仕事は、金融、会計、IT、輸出入、人事、営業など多岐に渡ります。  

 

雇用形態はお仕事をお探しの方のライフスタイルに合わせて、 フルタイムのお仕事とテンポラリーのポジションをご紹介。 クイックUSAでは経験豊富なリクルーターが、求職者の皆様一人ひとりのご希望などを伺いアメリカでのキャリアプランを一緒に考えさせていただいています。 アメリカでお仕事をお探しであれば、アメリカ求人多数のクイックUSAに是非ご登録ください!(無料)  

 


 

★★クイックUSAにレジュメのご登録がまだの方は、今すぐご登録ください!★★

 

 

 

クイックUSAでは、ご登録者の方に対して無料のキャリアカウンセリングを実施しています。
★★Emailにてレジュメを送るだけで登録完了のエクスプレス登録もご利用いただけます!★★

     

アメリカで現在お仕事をされている方、OPTや学生の方など、現在アメリカに住んでいらっしゃる方へ
アメリカでのご転職・就職で何かご質問がございましたら下記よりご連絡ください。

 


 

    

 
クイックUSAでは、LinkedinLINE、InstagramFacebookXでも情報発信をしています。是非、フォローお願いします。