アメリカで働く人にインタビュー! 第24回 【アクセスファイブ/代表 高橋伸さん】

 

アメリカでは、日本からの駐在員として勤務している人やアメリカ現地で採用された人など、数多くの日本人が活躍しています。このコーナーでは、アメリカで働く方々に“ハタラク”楽しさや難しさなどをお伺いしています。今回はロサンゼルスで、アクセスファイブの代表を務める高橋さんにお話を伺いました。  

 

ロサンゼルスで働く、アクセスファイブ代表 高橋伸さん

 

高橋伸さん(Shin Takahashiさん)

Access Five Communications, Inc.

www.accessfive.com

   

 

年々頭が固くなっているのを自覚しながらも(笑)、 新しい情報や商材を探し、常に挑戦し続けています。

 

 

御社の事業内容を教えてください。  

 

アクセスファイブは、18年前に、ITインフラのワンストップ・ソリューションとして設立されました。新しいオフィスや店舗を開設する際に、電話・インターネット回線の手配やネットワーク通信回線・構築、インターコムやセキュリティーカメラの設置などが必要ですよね。そういった情報インフラに特化し、コンサルテーションから販売、施工、保守まで全て行っています。現在、約500社と取り引きがありますが、7割は日系の企業です。ロサンゼルスを拠点に、シリコンバレーや、テキサス州にも出張ベースで、全米各地のお客さまに対応しています。    

 

 

高橋さんの業務について教えてください。  

 

私は、営業、エンジニア、アフターケア、トラブルシューティング、新商品・サービスのリサーチなど、包括的な業務のコントローラー役といったところでしょうか。IT技術は、もはや秒進日歩。新しいシステムやプランなどをお客さまにご提案するのも非常に大切です。  

 

オフィスや店舗を開設し、同じインフラを一生涯使用することはほぼありません。古いシステムでは業務がスムーズに進まないこともありますし、オフィスのリースは3~5年ほどが主流ですので、引っ越しの可能性もありますから、定期的に見直しが必要です。さらに、年々上昇する通信費も頭の痛いところ。ITのインフラを見直すことで、経費削減にもつながります。  

 

以前、全米で展開されている旅行大手からの通信費削減のご依頼をいただいたのですが、数十店舗の通信費となると、ひと月に3~4万ドルも経費がかかります。そこで既存の回線会社の切り替えを提案した結果、ひと月約30%の経費削減をすることができました。  

 

今、私たちが一番力を入れているサービスは「クラウド電話システム」です。「クラウド電話システム」は、インターネットの接続があれば、世界中どこからでもオフィスの電話として使用が可能です。在宅勤務で働いている方や社内の支店間のやり取りが多い会社などには、非常に便利なコミュニケーションツールの1つになっています。また、オフィスの引っ越しの際も、電話システムの移設工事をする必要がなくなります。また、インターネットに接続するIP電話機のほかに、スマートフォンやPCでも使用ができ、導入にもあまり時間がかかりません。  

 

以前は、クオリティーの面で問題もありましたが、ここ数年はハイスピードのインターネットが提供可能になり、かなり改善されています。クラウド上なので、設定すれば、その後のメインテナンスも簡単で、お客さまからのニーズは非常に増えていますね。私たちも、ボナージュ・ビジネス(Vonage Business)やリングセントラル(RingCentral)など、数社のプロバイダーと代理店契約をしているので、「クラウド電話システム」のメリットとデメリット、状況、事例などをきちんと伝えながら、お客さまの問題解決になる最善の方法を提案するように努めています。    

 

 

起業のためにロサンゼルスに移って来たそうですね。  

 

僕はもともと、シリコンバレーの日系企業で働いていたのですが、起業を機に、新天地を求めてロサンゼルスに移ってきたんです。トーランス市を選んだのは、日系企業が多かったから。と言っても、コネもなければ信用もない。とにかく種まきに徹しようと、電話営業からスタート。日系誌にも広告を毎週のように出しました。  

 

目標はひと月5件のお客さまを獲得すること。こだわったのは、他社との差別化です。大手が市場を占める中、圧倒的に不利な状況でも、絶対価格を下げることはしなかったんです。下げたら一時的にお客さまを集めることはできるでしょう。でも、その状態を長く続けることは不可能です。適正価格を提示するけれど、その代わり、うちだけの付加価値を付けようと。本来ならやらなくてもいいようなサービスを率先してやるようにしたんです。  

 

例えば回線設置なら、調査や手続き、設置まで全部引き受ける。時には赤字になることもありましたが、実は、1つの会社が、全ての工程を、しかも日本語で行うところって、ほかになかったんですよね。そうやって、少しずつ信頼関係を構築し、設立2年目からは、人を雇えるまでになりました。

 

 

     

渡米後、シリコンバレーで働き始めた頃の高橋さん(1998年頃)。

 

 

     

「18年前、アクセスファイブを立ち上げた頃です。30代最後の年に長年の夢を叶えることができました」。

   

 

日本ではどんな仕事をされていたのですか?    

 

僕が大学を卒業したのは、80年代後半で、バブル真っ盛りの頃。大学3年生の時に就職活動をしましたが、同級生たちが名だたる会社を目指す中、僕はできあがっている会社よりも、むしろこれから伸びる会社、共に成長できる会社を探していました。早く自立したい、ちゃんと経済を勉強して自分で何かをしたいという気持ちもありました。  

 

折しも、日本の電話会社が民営化になり自由競争が始まるという変換期。僕が入社したのは、電話機や複写機などのOA機器を販売する会社で、ちょうど通信市場にも参入するというタイミングでした。実は、すでにほかの会社に内定が決まっていたのですが、OA機器会社のリクルート担当の方がとても熱心で、話していてもワクワクするんです。これは面白くなるなと思いましたね。  

 

入社後は、渋谷の営業所で働いていましたが、数年でぐんぐんと会社の業績は上がり、上場するまでに。持ち株制度もあって、ある程度お金も入ってくるようになりました。同時に先が見え始め、このまま現状に留まるか、冒険するかを考えるようになったのもその頃。そして、29歳の時、会社の同僚5人と、通信系の会社を立ち上げました。しかし、わずか2年ほどで、会社の方向性の違いなどから、転職を考えるようになりました。  

 

そんな中、求人誌で、ロサンゼルスの米系通信企業が日本人の営業職を募集していると知り応募したんです。アメリカは大学の卒業旅行で行った程度で、通信業界がどうなっているかも全く分からない状態。おまけに語学力の問題もあったけど、ダメなら日本に帰ってくればいい。気晴らしに1年ぐらい働ければいいなという感じでした(笑)。その後、採用となりビザも下りて、渡米したのは1996年1月。日本で就労経験があったものの、やっぱり苦労しましたね。日系企業担当とは言え、エンジニアはアメリカ人なので、うまくコミュニケーションが取れずトラブルになったこともあります。給料も安く、とにかく朝から晩まで働き詰めでした。  

 

2年ほど経った頃、シリコンバレーにオフィスを開くころになり、僕に白羽の矢が立ちました。進出して1年以内にお客さまも増え、売り上げも順調になった頃、ヘッドハンティングされて、副社長として日系のベンチャー会社に転職。Eコマースの開発をメインにしていた会社でしたが、40歳までに独立したいという思いはずっと抱えていました。2001年に永住権抽選に当選したのですが、同時多発テロの影響でインタビューが休止になり、永住権取得のチャンスを逃してしまいました。結局、起業したのは、2003年8月29日。くしくも、39歳の誕生日に長年の夢を叶えることができました。    

 

 

大学時代に、ラグビー部の仲間と撮影した思い出深い1枚(中央)。

 

 

経営の難しさについて教えてください。

 

やはり人材確保でしょうか。例えアメリカでビジネスを展開していても、日本人なら、特に難解なIT系での作業においては、英語よりも日本語が話せる営業やエンジニアと仕事を進めたいというのが本音だと思うんです。けれど、全ての条件を備えた人材を探すのは難しいし、アメリカはキャリアチェンジやステップアップが当たり前ですから、時間をかけて育てても、突然離れてしまうこともある。正直、人間不信に陥ったこともあります。  

 

また、雇われる側から雇う側になった時、無我夢中で周りが見えない時期もありました。「社長なんだから、業務内容は全て把握しておかなくては」「僕がいなければお客さまが困る」と勝手に思い込んでいたんです。その結果、何が起きたかというと、人任せにできないので、休みも取れず、8年間も日本に帰れませんでした。社員がいるのに、たった1人でシャカリキになって“高橋商店”を回していたんです(笑)。社員を信用し安心して仕事ができる。そんなことに気が付かなかったんですね。社長が夜中まで働いていたら、社員は帰れないですよ。それからは、働く環境を整えて、福利厚生にも力を入れ、社員に仕事を委ねることに徹底しました。おかげさまで、今は、毎年日本に帰ることができるようになりました。    

 

 

仕事をする上で大切にしていることは何ですか?  

 

何よりも大切にしているのは、お客さまとのヒアリングです。私たちはプロですから、お客さまの状況を見れば、大体何が必要かどうか分かります。でも、思い込みや固定観念を捨てて、どんなことで困っているのかを、徹底的に聞いてから改善策を考える。それから、お客さまには商品やサービスのメリットとデメリットをきちんと伝えるように心がけています。お客さまに良いことばかりを伝えていると、結局信頼関係を壊すことになる。言いにくいことでも、あえて伝えて、その上でアイデアやプランを提案するようにしていますね。    

 

 

日本とアメリカで仕事をした経験から感じること、違いなどはありますか?  

 

日本では大きな組織の中で働いていたこともあって、完全に分業されていました。要するに、僕は営業のことだけ考えていれば良かった。けれど、アメリカで働いていた会社は規模が小さかったため、営業でも、技術の知識も必要だし、現場でもどんどん動かなきゃいけない。でも全てを体験することで、お客さまにもっと良いアドバイスができるようになり、会社の一連の流れも分かるようになりましたね。それと、アメリカでは、小さな会社でも大きなビジネスチャンスがあると思います。実際、弊社は、多くの大手日系企業と取り引きをさせて頂いています。もし日本で独立していたら、こんな機会はなかったかもしれませんね。  

 

それから、アメリカでは個人や家族との時間を大切にするので、仕事とプライベートはきっちり分けています。僕も“高橋商店”を止めてからは、家族との時間が増えました。最近は、11歳の次女がサッカーのクラブチームに所属しているので、ビデオ係になって試合を撮影・編集し、限定アカウントでYouTubeにアップしています。僕が担当するまではプロに依頼して、かなり料金がかかっていたそうです。年間40試合もあるけど、チームや親御さんも喜んでくれる上、自分の得意分野でコミュニティーに貢献できるってうれしいものです。遠征には家族揃って行くので旅行気分も味わえます。家族との時間を取れるようになったのは、本当にありがたいですね。      

 

 

 次女が所属するサッカーチームのパパ友と。

 

 

   

ユース・サッカーチーム集合写真。

 

 

     

シリコンバレーにあるGoogle本社で、家族3人で記念写真。

 

 

日本に一時帰国した際に立ち寄ったオウム喫茶で。

 

 

     

メキシコのカンクーンに家族旅行。「ユカタン半島にあるマヤ文明の遺跡『チチェン・イッツア』を訪れました」。

     

 

長女のUSC卒業式にて。

 

 

今後の抱負や夢などをお聞かせください。  

 

ビジネスは流動的なので、このまま10年同じ状態でいけるわけじゃない。年を取って頭が固くなっているのを多少自覚しながらも(笑)、新しい情報や商材を探して、常にチャレンジしています。前述の「クラウド電話システム」同様に、これからの企業にはどういうサービスが必要なのかを念頭に置きながら、顧客のニーズに見合う引き出しをたくさん持てるように、新しい商材と仕組みを作りたいと考えています。まだまだ時間はかかりそうですが、こういったチャレンジによって、会社としての付加価値をもっと増やし、ITインフラのワンストップ・ソリューションとして業務の幅を広げていければいいなと思っています。  

 

 

     

 

【取材協力・お問合せ】

高橋伸さん(Shin Takahashi)

President/CEO

Access Five Communications, Inc

 

本社トーランス

21171 S. Western Ave., #210 Torrance, CA 90501

Tel: 310-320-2255  

 

支社 シリコンバレー

4464 Technology Dr.,  Fremont,  CA 94538

www.accessfive.com  

 


【取材・文】

ライター 砂岡泉(Izumi Sunaoka)  

 


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