アメリカで働く人にインタビュー!第23回 NICHIBEI MARKETING, LLC西條有香さん

 

アメリカでは、日本からの駐在員として勤務している人やアメリカ現地で採用された人など、数多くの日本人が活躍しています。このコーナーでは、アメリカで働く方々に“ハタラク”楽しさや難しさなどをお伺いしています。今回はニューヨークで調査と翻訳の会社を立ち上げ、日本企業に対して事業支援サービスを提供されていらっしゃる西條有香さんにお話を伺いました。

 

  

ニューヨークで働く、NICHIBEI MARKETING, LLC CEO 西條有香さん

 

   
西條有香さん(Yuka Saijo)

     

 

 

市場調査と翻訳の分野で、人と社会のお役に立てれば嬉しいです。

 


 

NICHIBEI MARKETING, LLCの事業内容を教えてください。  

 

弊社の設立は2017年11月で、市場調査と翻訳を中心にサービスを提供しています。米国企業へのアポイントメント取得代行も、弊社サービスの主力メニューの一つです。クライアントは主に米国への進出を考えている日本法人、又は既に進出されている日系企業の米国法人です。「ジャパン・サポート・グループ NY」(JSG NY:Japan Support Group New York)という日本企業をサポートするニューヨークの企業が集まる団体に加盟しています。    

 

 

御社の強みを教えてください。  

 

言語だけでなく、米国の文化や価値観を理解した現地在住のリサーチャーと翻訳者がいることです。翻訳では、現地の人が読んでも違和感のない文章を作成することができ、聞き取り調査ではアメリカ人の思考を理解して円滑に進めることができます。ニューヨークでは様々な業界イベントが多く開催されていますが、そうしたイベントに足を運んで得た、業界有識者の声を提供できることも強みです。最近参加したイベントは、5G、スマート農業、スマートホーム、大麻由来成分(CBD)市場関連です。

 

 

具体的にはどのような調査を手がけていらっしゃいますか?  

 

米国における市場調査と新規事業立ち上げの際の事前調査サポートを提供しています。クライアントが抱えている課題や調査の目的をヒアリングさせていただき、弊社が出来ることを提案しています。    

 

 

市場調査の内容について教えてください。  

 

市場調査は主に以下6つの切り口で行います。

1.市場概要(市場規模やトレンド)

2.競合企業調査(会社概要、商品、流通経路など)

3.消費者調査(消費者のライフスタイルなど)

4.マーケティング戦略(競合企業が取り入れている効果的な戦略の分析)

5.小売店視察(売り場構成、商品パッケージ、価格帯調査)

6.製品・業界に関係する認証団体や協会の調査    

 

 

翻訳のサービスについて教えてください。  

 

日本語と英語の双方向翻訳が中心です。医療など一部を除いて幅広い分野の翻訳を手掛けています。これまでメーカー、メディア、サービス業界など様々な業界で実績があります。具体的には、企業ウェブサイト、商品パッケージや取扱説明書、契約書などです。法律、特許、技術書を専門とする翻訳チームも加わり、さらに分野が広がっています    

 

 

御社の翻訳サービスの強みはなんですか?  

 

機械翻訳は使用せず翻訳者が一つひとつ丁寧に翻訳しています。人間だからこそキャッチできる微妙な表現のニュアンスや、文脈への理解が反映された分かりやすい翻訳を心がけています。翻訳は文章の内容に精通している人や、その分野の翻訳経験が長い人が行うので安心してご利用いただけます。    

 

 

米国企業へのアポイント取得代行とはどのようなサービスですか?  

 

クライアントの代わりに、弊社が米国企業に連絡して交渉を行い、面会や会合の約束を取得するサービスです。米国と日本ではビジネス習慣が異なるため、認識に齟齬がないように入念に進めます。アポイントメントを取りたい企業のリストが既にある場合はそちらを元に作業しますが、リストがない場合はこちらで企業を調べて作業を進めます。    

 

 

ニューヨークで起業されたきっかけについて教えてください。  

 

日本にいた時からフリーランスでイベント運営アシスタントや通訳の仕事をしていたので、独立精神はもともと強かったと思います。起業してみたい!と強く感じたのは、義弟のビジネスを見た時です。彼は「出張バーサービス」で起業しました。バーテンダーの講師として働いていた時に「出張バーテンダーのサービスがあれば面白いのでは」と感じたそうです。思ったら即行動で、バーカウンターの機材を集めて自分で作ってしまいました。自分のアイディアを周囲の人と共有して、そこで得た意見を取り入れながら、着々と形にしていく姿がカッコ良いと思いました。渡米後直後から彼のそうした姿に刺激をもらいました。

 

 

       

 

 

出張バーサービスとはどのようなビジネスなのでしょうか?  

 

バーカウンターなどの機材を会場まで運び組み立てて、腕の高いバーテンダーと共にイベントを盛り上げています。主催者のリクエストに応じてバーカウンターをデザインして、カクテルのレシピもその都度考えています。以前、結婚式披露宴でバーサービスを提供した際にマーメイドが好きな新婦のために、バーテンダーが人魚姫の姿にドレスアップして場を盛り上げました。今では米国の大手酒造メーカーからも声がかかり、スポンサーも獲得しています。    

 

 

(出所:西條さんの義弟、Justin Pasha氏のインスタグラム(@the_cup_bearer))

 

 

これまでの西條さんのご経歴を教えていただけますか?  

 

商社マンだった父の駐在のため、9歳の時に家族で日本からマレーシアに移住しました。マレーシアの首都クアラルンプールにある日本人学校に中学2年生まで通った後、インターナショナルスクールに転校し高校卒業まで現地で暮らしました。    

 

 

(マレーシアのインターナショナルスクール時代)

 

 

日本の大学に進学されたのですか?  

 

カナダのアルバータ州にある大学に進学して、文化人類学を専攻しました。文化人類学は、その土地に住む人々の視点で文化や社会を理解しようとする学問です。文化相対主義などの文化人類学的な思考法を学んでリサーチに興味を持つようになりました。在学中には昔から北欧に対して憧れがあったので、スウェーデン語を2年間学んだ後1ヶ月間スウェーデンに短期留学をしました。    

 

 

スウェーデンで留学されてみてどうでしたか?  

 

自分のスウェーデン語のレベルより遥か上級のクラスに入れられてしまい、さらにルームメイトは英語を話さないロシア人だったので正直大変でした。語学は使わないと絶対に身につかないという教訓があったので、話せないけれど話さなければいけない状況に身を置いたのは正解でした。スウェーデン語が少し話せるようになると、「スウェーデン人」として見ていた人を「一個人」として見ることができるようになるのは、言語を学ぶ醍醐味のように感じます。

 

 

   

(短期語学留学先のスウェーデン)

 

 

カナダの大学を卒業されてからはどうされたのでしょうか?  

 

日本の総合商社に営業で入社しました。鉄鋼を取り扱う部署に配属され、そこで社会人としてビジネスを基礎から学ばせていただきました。営業において市場調査は必要なプロセスで重要性が高いということを実感し、深く関わっていきたいと思うようになりました。    

 

 

渡米するまで勤務されていらしたのでしょうか?  

 

会社勤めを始めて少し経った時に、父が重い病にかかっていることが分かり急遽入院することになりました。最初は休職して父の看病をしていましたが、余命が長くないことも分かり、できるだけ父の側に居たいと思ったことから退職することにしました。    

 

 

それは、とても辛い経験をされたのですね。  

 

父とはとても仲が良くて、仕事のことなど何でも相談していました。もっと聞きたいことは沢山ありましたが、亡くなるまでの約一年半の間、父とは密度の濃い時間を過ごすことができました。  

 

 

     

 

 

西條さんにとってお父様の存在は大きかったのですね。  

 

家族の死に向き合ったことで、これからの生き方について考えるようになりました。こうしてニューヨークで頑張っていられるのも父のことが大きいと思います。「継続は力なり」が父の座右の銘でした。入院中も英語を勉強して、病棟にある室内バイクを漕いで社会復帰に向けて頑張っていました。最期までどんな状況に陥っても諦めない姿を見せてもらいました。「これからの人生、お父さんよりもっと広い世界を見て欲しい」と言われたのが心に残っています。一生をかけて、父の言わんとしていた意味を探っていきたいです。    

 

 

米国にいらしたのは6年前ですね?  

 

主人の親戚がフロリダに住んでいるのですが、仕事を手伝って欲しいという話があり渡米したのがきっかけです。その後コネチカット州に引っ越し、ニューヨークのテレビ局で番組リサーチャーのインターンを経て、旅行代理店に勤務しました。旅行代理店では、無事にツアーが催行されるように入念に確認作業を行ったり、取引先と交渉したりしました。その後、日本企業の海外進出支援を行うコンサルティング会社やNPO団体でマーケット・リサーチャーとして経験を積みました。    

 

 

リサーチャーとしての経験が豊富ですね。  

 

ニューヨークのコンサルティング会社で市場調査の“いろは”を学ばせていただきましたが、自分でも通信講座を受けたりして知識を吸収してきました。    

 

 

西條さんにとって仕事の楽しさ、やりがいは何でしょうか?  

 

クライアントからの依頼の難易度が高い時、「自分の会社では規模的に不可能ではないか」「失敗したらどうしよう」という不安は正直あります。しかし同時に、相手の期待に応えたいという想いが沸き上がってきて、調査をデザインして弊社のキャパシティを先方に伝え、行動に移します。真摯な気持ちで取り組んだことが評価された時は、弊社への信頼にもなり達成感を感じます。一つの案件の中で得た知識や人脈が、別のところで連鎖していくのも面白いです。    

 

 

仕事を進めていく上で大切にしていることは何ですか?  

 

仕事を始める際に必ずしていることの一つは、クライアントとの期待値を合わせることです。期待値がズレていると顧客満足度も低くなってきますので、まずはこの点に注意しています。    

 

 

期待値を合わせるとはどのようなことでしょうか?  

 

人は期待している事と現実のギャップが大きければ大きいほど、落胆の度合いが大きくなります。憶測で物事を進めずにきちんとお互いにコミュニケーションをとりながら、一つひとつ確認して、クライアントの期待を裏切らないように気をつけています。様々な価値観を持った人が集まる米国では特に注意が必要だと感じます。期待に沿えない場合は、その代わりに何を提供できるか考えるようにしています。    

 

 

具体的な例を挙げていただけますか?  

 

米国企業を訪問したい日本企業があり、アポイントメント代行取得を行った時のことです。米国企業への「質問リスト」を事前に頂いていたのですが、それを英訳していざ先方に伝えたところ「殆どの質問に答えられない」と言われました。せっかく視察をしに米国まで行ったのに、回答が得られなければ意味がありません。そこで、どうすれば視察自体の価値を維持できるのか考えました。まず、日本企業に理由を説明し理解を得た上で、米国企業側に対して、上層部の人物の出席をお願いし、質疑応答の時間を作ってもらえないか交渉を行いました。最終的に了承を得て、視察訪問は無事に終了しました。日本企業からは「現地で直接上層部の人物に会えて、有意義な時間だった」と喜んで頂けました。    

 

 

仕事を進めていく上で他に大切にしていることはありますか?  

 

2つあります。1つは、どうしたらもっと効率よく仕事ができるか考える時間です。技術は進んでいますし、人や組織とのネットワークを構築することでより良い方法は沢山あるはずです。2つ目は、結果をあるがままに受け入れることです。言い訳したりせず冷静に受け止めることができないと、その結果に対して何故自分が不満を感じているのか分からず、改善もできないからです。    

 

 

西條さんは海外暮らしが長いですが、お仕事に役立っていることはありますか?  

 

マレーシアは多民族国家なので、一つの考え方に捉われない姿勢は小さい頃から身についています。その後もカナダ、北欧、日本、米国での生活を通して主流な考え方を考慮しつつも、様々な人の意見に耳を傾け、広い視野で物事を考えるようにしています。異なる文化や価値観を持つ人と一緒に仕事をする上で役立っていると思います。    

 

 

西條さんのこれからの夢を教えてください。  

 

人との縁を大切にして、新しい知見を得ながら自分の活動範囲を広げていきたいです。将来的に海外の企業と日本企業のマッチングのようなこともできればいいなと考えています。夢を実現するための小さな目標を作ってそれをクリアしていきながら、父が話していた「広い世界」に辿り着けるように頑張ります。  

   


 

【取材協力・問合せ】

西條有香(Yuka Saijo)

NICHIBEI MARKETING, LLC/CEO

www.nichibeimarketing.com

E-mail : marketresearch@nichibeimarkeing.com

Tel:646-477-3670  

 

「ジャパン・サポート・グループ NY」(Japan Support Group New York)

https://www.jsgny.org/    

 


 

【取材・文】

菰田久美子(Kumiko Komoda)

Manager

QUICK USA, Inc.

New York Office

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