アメリカで企業が採用面接を行う際の注意点について

クイックUSAでは、アメリカの人事労務関連の最新情報も発信しています。最近では「ニューヨークでのセクハラ防止トレーニングについて一問一答」「2019年度アメリカ雇用法の動向について」などをご紹介していますが、今回は「アメリカで企業が採用面接を行う際の注意点について」Pacific Dreams, Inc.の酒井氏にお話を伺いました。アメリカではアメリカの法律に則って、採用活動を行わなければいけません。ご参考となれば幸いです。

 


   

アメリカでの採用は、雇用上の差別を禁止しています。採用にあたって企業は、連邦、州、郡(カウンティ)、市の法律に則ってプロセスを進めていかなければいけません。アメリカでの採用の大前提として連邦法では、人種、肌の色、宗教、出生国、性(性別、妊娠、出産含む)、心身障害、市民権、軍役経験、年齢(40歳以上)、遺伝子情報に基づいた雇用上の意思決定を行うことを禁止しています。訴訟のリスクを避けるためにも、面接時および面接時の雑談に対しても十分な注意を払う必要があるでしょう。  

 

私が日々企業の方とお話をさせていただいている中で、採用では年齢を聞いてはいけない、結婚や子供の有無を尋ねてはいけないということは、みなさん、もうすでに十分わきまえているものだと察せられます。ところが、面接で尋ねる質問内容はそう単純なことでもなく、年齢を聞かなければそれですむ、あるいは結婚や家族のことも触れていなければ大丈夫だということだけでは必ずしもないところがあり、どこまでが尋ねてよいことなのかどうかという線引きをするのは実はそう簡単ではないところがあります。そこで今回の記事では、もう少し深堀りをしたところでの採用面接に関する注意点を3つほど挙げ、採用上でのガイドラインとしてみたいと思います。    

 

 

1.年齢に関する質問

先にも書いたとおり、年齢を直接面接で尋ねる面接官の方はまずいないものと想定します。ただ、次のような面接官からの言葉が面接中に発せられたらどうでしょうか。「弊社は現在組織の若返りを目指して、新たに人材の募集に踏み切ったところです。」  

 

もしこのような言葉を聞いたのなら、「この会社はある年齢に達すると雇用が打ち切られ、中高年層は解雇され、より若い層の採用に走る会社なのではないのか」といった憶測や偏見を生むリスクが出てまいります。中には、そのような発言を年齢差別だとみなして、州や市の労働局にクレームを出す応募者の人が出てくるかもしれません。クレームがあれば、州または市の労働局は何らかの調査に乗り出してきます。会社にとっては誠に面倒で厄介な事態にもつながりかねません。  

 

ということで、年齢に関して間接的にであってもそれを示唆するような質問および発言は面接では、厳に慎まなければなりません。「組織の若返り」などという言い方は日本では「あり」なのかも知れませんが、ここアメリカでは禁句であるということを肝に銘じてください。  

 

 

2.健康に関する質問

恐らく日本では採用面接で「あなたは健康ですか?」という質問は、一般的に許容されている質問ではないかと思われます。しかし、アメリカでは一部の例外を除けば、やはり聞くべき質問ではありません。健康でなければ職務を全うできないのであるから、尋ねるのは当然であると考えている方がいたら、それはそのような考え方はアメリカでは一度リセットしていただく必要があります。  

 

なぜなら、個人の健康状態というのは、まぎれもなく個人情報であり、そこには法的にも堅固なプロテクションがかけられています。ですので、現在健康であるかどうかという質問も含めて、過去に大病を患ったことがあるかとか、持病を持っていないかとか、入院や手術をしたことがなかったかというのもすべて面接ではご法度の質問になります。日本の感覚でいくと、ついこのような健康に関する質問をしてしまいがちですが、いずれもアメリカでは個人情報に深く関係する法律で守られた領域に立ち入る質問になりますので、細心の注意が必要です。  

 

 

3.Employment At-Will

最後に取り上げたいのは、アメリカの雇用における大原則となっている Employment At-Will についてです。この原則は日本やヨーロッパにはない、アメリカ独特のものでCommon Law (判例法)と呼ばれる英米法で法的にも認められている原則となっています。あえて日本語で意訳を行うと、「離職自由・解雇自由の原則」となります。従業員は会社をいつでも退職することができるし、同様に会社も従業員をいつでも解雇することができる雇用形態」であるということを意味しています。このEmployment At-Will の原則に従ってアメリカでは採用するに際していちいち雇用契約書を本人との間で結ぶということは一般的には行っていません。つまり、雇用契約書の存在しない、雇用期間を定めない雇用関係に入るというのががまさにEmployment At-Will の真意だといえます。  

 

そのために採用面接の中で、「弊社は長期にわたって働いてくれる人材を求めています。あなたは長期間、弊社で働くことができますか?」というような質問はアメリカのこのEmployment At-Will の原則から鑑みるとやはり適切な質問ではありません。もしこのような質問をして、「はい、御社で長期間働くつもりです」と答えた応募者を採用して、その後、しばらくしてアメリカでの会社経営が非常に芳しくなくなり、ポジション・クローズするということにでもなった場合、会社は面接で長期雇用を約束してくれていたではないかといって、当人からクレームや訴訟につながる恐れが出てくることが十分考えられるのです。  

 

もちろん、どの会社であっても、それはアメリカも日本もよい人材にはいつまでも長く働いてもらいたいし、その意味で採用時に長期雇用を言及したいのはやまやまなのですが、アメリカのEmployment At-Will の原則には残念ながらそぐわないというのが現実です。日本ではまったく問題にもならないまっとうな質問なのですが、アメリカでは尋ねるべき質問ではないということになります。    

 

 

以上、日系企業の採用時の現場で実際に起こった今までの事例などからもヒントを得て今回の記事にしてみました。アメリカで尋ねてはならない質問の多くは、日本とアメリカとの間で存在する、応募者を含む従業員への法的保護の違いがそこには大きく横たわっているということを採用上でのガイドラインとして、社内で採用面接をする方々へ十分な注意を喚起していただければと幸甚です。    

 

 

【執筆】 酒井健吉氏(Ken Sakai)

President & CEO Pacific Dreams, Inc.

Email : kenfsakai@pacificdreams.org

www.pacificdreams.org    

 

 

【酒井健吉氏プロフィール】

         

 

信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。

 


 

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